癒合歯というのは隣り合った歯が2本くっついた形態をしているもので、ほとんどが乳歯の前歯に発生します。発生率は文献によっても違いますが、多くても5%ほどのようです。
言い換えると、乳幼児健診で数十名診ると、必ず数名は癒合歯があることになりますし、実際自分の経験でもそうですね。
下の乳歯の2番目と3番目(乳側切歯と乳犬歯)の発生が最も多く、これより若干少ないけれどほぼ同率なのが、下の1番目と2番目(乳中切歯と乳側切歯)の癒合歯です。頻度が少ないのが上の1番目と2番目の癒合です。
癒合歯がある場合、その後の永久歯がどうなっているか気になるところですが、永久歯の癒合歯というのは珍しく、あるか無いかどちらかです。
最近の東京歯科大学小児歯科のデータはデータ数も多く信頼度が高いと思いますが、やはり下の2番目3番目の癒合の場合、2番目の永久歯すなわち側切歯の欠如の可能性が7~8割というデータです。一方で下の1番目2番目の癒合の場合は永久歯の欠如の可能性は2割弱です。また、上の癒合歯では側切歯の形成が悪かったり、欠如する確率がかなり高くなります。
この患者さんは向かって左側の1、2番目の歯の癒合歯で5歳半ばです。そろそろ下の永久歯が出てくる時期です。
下の永久歯は全部ありますが、癒合歯があることで歯数が少ないわけですから、乳歯のこの部分の歯並びが小さくなっています。
ここに2本出てくるわけで、さらに1対1で生え変わらないので、後から出てくる予定の2番目の歯のスペース不足は予測されます。
それから半年後、中切歯は出てきましたが癒合歯が抜けず、癒合歯の内側に中切歯が並んだ状態。
ここで通常は癒合歯を抜く歯科医が多いと思いますが、抜くと中切歯が倒れて側切歯が出るスペースが余計なくなります。あえて抜かずに経過を観ているところですが、最近側切歯が出るパワーで中切歯が起き上がって来ました。
このままで側切歯が出るときに癒合歯が自然に抜ければベスト。この時期に内側にある中切歯は、心配しなくとも簡単に自然に外側に移動しますので、このようなマニアックな作戦になったわけです。
これは単なる一例ですが、癒合歯の患者さんは少なくないので、当院では状況に応じた見通しや処置計画を立てて、経過観察や歯並びかみ合わせの処置を行っています。
ふたつき子ども歯科 http://www3.coara.or.jp/~futam
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます