「夢見通りの人々」宮本輝 新潮社 1986年
昭和の終わり、大阪の片隅、商店街夢見通りで暮らし、営む人たちはなかなか曲者ばかり。詩を趣味としてサラリーマンをする青年、春太。金の亡者の時計屋夫妻、盗癖のある息子。元暴力団員の兄弟の肉屋。競馬に絡む詐欺師、美容師、中華料理屋、煙草屋、スナック…オムニバス長編
おっと。これは意外な収穫。基本的には短編集はあまり読まないのだけれど、これはよかった。
裏があって、悪そうな人のその裏はいい人だったり、善良そうな人がそうでもなかったり、という人物描写もいい。短編がいくつも連なり、前に出てきた人物がまた出てきたりして、物語を作る。その物語そのものがまたいい。
大阪の人のせいなのか、言葉のせいなのか、ストレートな物言いが物語を分かりやすくしてくれると同時に、キツイはずの印象が柔らかくなる。同じ言葉でも、放つ人と方法で随分と変わるものなのね。
顔の痣がコンプレックスになっている女の話と、売春婦を買う肉屋の兄の話が特に印象的だった。
では、また。
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