「飼い喰い 三匹の豚とわたし」内澤旬子 岩波書店 2012年
「世界屠畜紀行」の著者。食べる前の豚を知るために、飼うための場所を借り、自分で豚を飼育し、屠畜し、そして食べるというちょっと聞いたことのないドキュメント。
うーむ。スゴイ。この本と出会わなければ、豚を飼育することと屠ることをリアルに考えると事は決してなかった。
我々が生きているのは、豚や鳥、牛、魚、野菜などの大量の犠牲に成り立っている。そしてそれを意識しなくてはいけないと人は言う。確かにそう。理屈の上ではそう。しかしいつもそんなことをリアルに感じながら暮らすことは難しい。
それをこの内澤さんが身を以てリアルにレポートしてくれるのだ。
去勢するときに玉を抜くさまを読んでいたら、電車の中で軽い貧血になりそうになってしまうくらいだった。
また、飼っていれば愛情が湧いてしまうわけで、かわいそうだから食べられないという感情についても考えさせられる。
(女性に対して失礼な言い方かもしれないが)女っぽい湿っぽい表現や感情に任せたりするような表現をせずに乾いた文体を使ってくれている。この文体がとてもいい。三浦しをんや水村美苗に共通するような気がする。彼女のような文を書く女性。彼女のように物事にアプローチする生き方をする女性が私はとても好きだ。
私のタイプなどどうでもいいか。イラストにも実に味があって、読んでも決して時間の無駄にならないベリーグッドな本だった。
色んなことを、リアルに感じてしまうこの頃さ♪by佐野元春@サムデイ
では、また。
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