仙台は壱弐参(いろは)横丁に井戸があった。
昔懐かしい手押しポンプ式の井戸である。
壱弐参横丁のホームページによると
“壱弐参(いろは)横丁の歴史は終戦後に始まりました。
以来70年—仙台の街並が変わりゆく一方で、今でも
昭和の香りを色濃く残しています。”とある。
仙台中心部は昭和20年7月10日の「仙台空襲」で
焦土と化し、焼け野原となった街中で、いち早く
仙台駅前や一番町などで露店が立ち上がり
やがてそれが市場創設に繋がったのだという。
そして現在の壱弐参横丁の前身となる「中央公設市場」
が誕生とあった。まさに戦後昭和の歴史そのものなのだ。
神戸にも高架下という戦後の面影を残した商店街がある。
モトコ―といって親しまれたきたが、モトコーは今は
立ち退きでシャッターの降りている所がほとんどだ。
大阪の丸ビル周辺や広島駅南の一画も再開発で今や
昔の面影は見る影もなくなってしまった。
残って欲しいとは思うのだが、そんなノスタルジーでは
経済も発展してゆかない。ブルートレインにしても
なくなると聞けばどっと人が押し寄せて惜しむけれど
いつしかそれも忘れてしまうのが日本人の特性。
いつの世も取り残されてゆくのは高齢者や
変化に対応できない頑固者だけかもしれない。
私も十分その範疇に入っているのだが…。
路地はどんどん記憶の中だけになってゆく。
光陰を纏(まと)ふ古井戸秋日濃し