goo blog サービス終了のお知らせ 

平安夢柔話

いらっしゃいませ(^^)
管理人えりかの趣味のページ。歴史・平安文学・旅行記・音楽、日常などについて書いています。

「御堂関白記」の現代語訳が出版されます

2009-05-01 10:49:16 | 読書日記
 月桜の葉つき みかんさんから情報を頂きました。今月12日に、講談社学術文庫から「御堂関白記」の現代語訳が発売されるそうです。

 あの道長さんの日記が現代語訳になってよみがえる、こんな嬉しいことはありません。
私が平安時代に興味を持つきっかけは、22年前に永井路子さんの小説「この世をば」を読んで道長さんが好きになったことからなのですから…。

 「御堂関白記」の原文はもちろん漢文です。私は学生時代、古典はわりと好きだったのですが漢文だけは大嫌いでした。「私は日本人なのに、どうして漢文なんてやらなければいけないのよ!」という考えでしたので、当然、まじめにやりませんでした。今では、どうして古典の時間に漢文を学ぶのかがわかります。「源氏物語」にしても「枕草子」にしても、中国の古典の影響を受けていますし、貴族の男性は漢文で日記を書いていたのですよね。

 とはいうものの、今さら漢文の勉強をする気も根性もないし、それに何より、私は視力に障害があるため、漢字を一字一字読んだり、レ点や返り点を解読したりするのがとても困難なのです。
 それでも、「平安時代史事典」で人物を調べているとき、貴族の日記から短い漢文が引用されているのにぶつかるときもありますが、そんな時は使われている漢字から意味を取ったり、だんなさんに手伝ってもらったりして何とか意味を理解しています。それも短い文章だからできるのであって、「御堂関白記」全文なんてとっても無理です。
 それが現代語訳で、それも手ごろな価格の文庫で出るなんて夢のようです。

 あ、すっかり書き忘れていましたが、訳者は「人物叢書 一条天皇」「奈良朝の政変劇」などの著者、倉本一宏先生です。倉本先生、ありがとうございます…と、お礼を申し上げたい気分です。

藤原道長 御堂関白記 上 全現代語訳 倉本一宏 講談社学術文庫 amazonでのページはこちら

 上巻ということは、これから続きも出るのでしょうね。楽しみです。

 ところで、「御堂関白記 全現代語訳」で検索をかけてネットサーフィンしていたら、こんな本も見つけてしまいました。

紫式部日記 山本淳子編 角川ソフィア文庫 amazonでのページはこちら

 あの源氏物語の時代の著者、山本淳子先生の編集なさった「紫式部日記」だなんて、ものすごく興味を引かれました。そこで、さらに検索をかけて内容と目次を見てみたのですが、わかりやすい訳のようですし、彰子中宮の宮廷生活の様子も詳しく解説されているとのこと、ぜひ読んでみたいと思いました。

 幸い昨日、静岡に出る用事があったので、ついでに、1月末に閉店したデパートから近くに移転した大きな書店によって購入してきました。少し拾い読みしてみたのですが、とても面白そうです。こちらも読むのが楽しみ♪

 そう言えば「御堂関白記」は1500円以下なのでamazonで注文すると送料がかかってしまうのですよね。でも、今月の12日~15日くらいにまた、静岡に行く用事もあると思います。そこで、「紫式部日記」が置いてあるなら当然、「御堂関白記」も入ってくるはず…。そのようなわけで、「御堂関白記」もこちらの書店で購入しようと思っています。

☆コメントを下さる方は掲示板へお願いいたします。
トップページに戻る

最近ネットで購入した本

2009-03-06 18:26:11 | 読書日記
 最近、本屋さんが少なくなっていますよね。
 私がよく行っていた静岡駅前にあった大きな本屋さん、ビルの建て替えのために2年前に縮小移転してしまったのですが、今でも移転したままです。それから、先日閉店してしまった静岡市内のデパートの中にも本屋さんがあったのですが、デパート閉店とともになくなってしまいました。
 また、私の家の近所にも、20年前には4軒の本屋さんがあったのですが、今では1軒だけになってしまいました。それも、かなり小規模の書店です。

 そのため、最近はほとんどネット書店を利用して本を買っています。1週間ほど前、amazonを通して3冊、京都新聞社のホームページを通して1冊の本を注文したのですが、今週になってから、注文した本が次々と手元に届き、わくわくしています。

 というわけで、最近ネットで購入した4冊の本のリストです。

☆泥(こひ)ぞつもりて(宮木あや子著・文藝春秋)

 清和天皇から宇多天皇までの時代の後宮を舞台にした連作小説集。この時代にはすごく興味があるので、この本のことを初めて知ったときに「ぜひ読みたい」と思い、即、注文しました。今、読んでいますが面白いです。読み終わりましたら「図書室3」で紹介しますね。

☆ヨーロッパの「王室」がよくわかる本(河原崎剛雄監修 PHP文庫)

 私は日本史だけでなく世界史も好きです。高校のあとは専門学校に進んだのですが、入学試験は英数国社理の5科目。そのうち社会と理科はそれぞれ1科目を選択することになっていました。それで私は、社会は世界史で受験しました。そのため、今でも世界史、特にヨーロッパ史の本(もちろん一般向けの簡単な本です)を時々読んで気分転換しています。今回も気分転換のつもりで購入しました。

☆青い城(モンゴメリ著 角川文庫)

 「赤毛のアン」の作者、L・M・モンゴメリの書いた小説です。以前から気になっていたのですが、1ヶ月ほど前にネットでこの本のレビューを見て無性に読みたくなりました。
 でも、どうやら絶版になっているようでがっかり。そう言えば視覚障害者用に音声化されていたのでは…ということを思い出したのですが、記憶違いかもしれない、それでは図書館に問い合わせようかなとも思いながら検索したページを見ていたところ、「2009年2月25日に角川文庫から復刊されます。」という文字が…。こんな事もあるんだとすごく嬉しかったです。

☆平安京散策(角田文衞著 京都新聞社)

 この本のことも以前から気になっていたのですが、こちらも絶版のようで手に入りませんでした。
 でも、嬉しいことに復刊されたということを、くたくたさんなぎさんの日記で知りました。お二方とも、情報ありがとうございました。
 amazonでは取り扱っていないようなので、京都新聞社のサイトで注文。ちなみにこちらから注文できますのでご興味のある方はどうぞ。
 届いたあと、少し拾い読みしてみましたが、わかりやすくて面白そうです。私が今まで知らなかった平安京の史跡のことも書いてあるようでわくわく…。今はもう、故人になられてしまった角田先生にお礼を言いたい気分です。こちらも、読み終わりましたら「図書室1」で紹介できるといいなと思っています。

☆コメントを下さる方は掲示板へお願いいたします。
トップページに戻る
 

田辺聖子さんの「新源氏物語」

2009-02-08 09:29:20 | 読書日記
 以前、こちらの記事で紹介したことがありますが、現在、再読中の本です。

 再読しようとしたきっかけはもちろん、「源氏物語」の現代語訳を通読したいという気持ちがあったからです。それで、どなたの訳で読むか迷ったのですが、ちょうど、まだ未読の田辺さんの源氏物語の宇治十帖の部分「霧ふかき宇治の恋」を読んでみたいと思っていたところでしたので、「それならついでに田辺さんの正編の部分「新源氏物語」も読んでしまおう」と思い、2週間くらい前から読み始めました。現在、「新源氏物語」の中巻を読み終わり、今日から下巻を読み始めます。

 では、今まで読んだ部分までの感想を少し書きますね。

 以前の紹介記事にも書きましたが、やっぱり読みやすいです。私が今まで読んだ「源氏物語」の中では一番わかりやすいかも。
 ただ、賛否両論あるかもしれませんが、読んでいると作者による書き加えが目立ちます。まあ、そこがわかりやすいところかもしれませんが。

 昨日、「真木柱」の巻を読みました。前に読んだのが8年前なので記憶がなかったのですが、「新源氏物語」では、弁のおもとと鬚黒の大将の会話から始まっているのですね。つまり、鬚黒の大将が玉鬘への手引きを弁のおもとに頼んでいるところも描かれているのです。弁のおもとも、「鬚黒の大将は東宮のおじなので、玉鬘と結ばれれば政略的にも源氏の大臣は損をしないわ」と判断し、引き受けてしまう…といった感じです。そのあと、紹介記事でも触れた鬚黒の大将と玉鬘の逢瀬が描かれます。確かに、原典のようにいきなり、「弁のおもとという女房の手引きにより、鬚黒の大将は玉鬘の寝所に忍んでしまった。」という事実を知らされるよりもわかり
やすいと思いました。

 あと、こちらも記憶がなかったのですが、「空蝉」(新源氏物語では桐壷の巻はカットされています。そして、空蝉の巻にて帚木と空蝉の内容が語られます)を読んでいて、「あれ?雨夜の品定めがない!」と思ったのです。そうしたら次の「夕顔」の巻の冒頭に出てきました。雨夜の品定めでは、頭中将が行方不明になった恋人、夕顔のことを語る部分がありますから、夕顔の印象をより強くするため、このような手法を取ったのでしょうね。このあたりはずいぶん思い切った構成の改変です。これも賛否両論あるかもしれませんね。でも、「これも田辺さん独自の源氏の世界」と思って割り切って読みました。

 …というように、源氏物語の現代語訳というよりも、源氏物語を下敷きにした一つの小説という色も濃い本ですが、平安時代の日常生活や行事、宴の描写も細かいですし、何よりも登場人物の会話が生き生きしています。原文を直訳すると回りくどい言い回しになってしまうような部分もすっきりと訳されていますし、やっぱり田辺さんの訳は好きだなあ…と、改めて思いました。引き続き、田辺さんの「源氏物語」の世界を楽しもうと思っています。

☆コメントを下さる方は掲示板へお願いいたします。
トップページに戻る

松本侑子さんの講演会に行って来ました

2008-12-13 20:17:36 | 読書日記
 集英社文庫の全文訳、・訳注つき「赤毛のアン」の翻訳者であり、NHK教育テレビの「3ヶ月トピック英会話 赤毛のアンへの旅」の講師でもある松本侑子さんの講演会「赤毛のアンへの旅 ~秘められた愛と謎」に本日、行って参りました。

 こちらの記事にも書きましたが、長いこと愛読してきた村岡花子さんの翻訳が完訳でないことを知り、松本さんの訳本を手に取ったのですが、とても読みやすい現代的な訳で、村岡さんの訳とはまた違った良さがあると思いました。それに何より、英米文学や聖書からの引用、当時の時代背景を解説した詳しい注釈がついており、「赤毛のアン」の奥の深さを再認識させられたものでした。その後、松本さんの「赤毛のアン」についての解説書も何冊か読みましたが、とても面白かったです。
 なので松本さんの講演が静岡であるという情報を知り、早速申し込みました。

 会場では、松本さんご本人と直接お話しでき、すごく嬉しかったです。テレビで拝見した通り、、いや、それ以上に素敵な方で感激です。
 まだ未購入だった松本侑子さん訳「アンの青春」「アンの愛情」も会場で売られていたので、購入しました。どちらも「赤毛のアン」同様、詳しい注釈がついているので、新しい発見ができそうで読むのが楽しみ。しかもサイン入りです~。そして、家から持参した「赤毛のアン」の時代背景や作者モンゴメリについてなどを解説してある「誰も知らない赤毛のアン(松本侑子著・集英社)」にもサインしていただきました。この本は宝物にします。

 講演の内容も、わかりやすく面白かったです。「
 アン・マシュウ・マリラはスコットランド系」とか、アンに登場する人名や地名の話とか、シェイクスピアの劇や聖書からの引用部分の話とか、わくわくしながら拝聴しました。

 そして、終了間近にお話して下さったのが「赤毛のアン」の幸福の哲学について。

1,アンのように前向きに生きること。
2,マリラのように堅実に生きること
3,マシューのように人を愛すること。
4,ロマンスや美しいものを愛すること。
5,今、生きているということを感謝すること。

だそうです。これは、毎日を明るく、楽しく生きるための五ヶ条とも言えそうですね。将来のことに不安になったり、色々悩むこと、迷うこともたくさんあるけれど、私も明るく前向きに生きなくちゃ…と思いました。

 そして最後に、今回も私のマニアックな趣味につき合わせてしまっただんなさんに感謝。ありがとう。

☆コメントを下さる方は掲示板へお願いいたします。
トップページに戻る

赤毛のアンシリーズ 読了

2008-09-27 12:58:52 | 読書日記
*よろしければこちらの記事もお読み下さいませ。

 8月3日から読み始めた「こんにちはアン」上下と「赤毛のアンシリーズ新装版」全10巻を昨日の夜に読了しました。

 途中、「アンの夢の家」を読み終えてから、後一条天皇の記事を仕上げるためと「藤原氏千年」を読むために1週間ほど中断したので、7週間で12冊を読了したことになります。アンの両親の新婚時代から始まり、アんが誕生、やがて両親が亡くなってよその家や孤児院に引き取られて苦労をしながら成長、しかし11歳の時、思いがけなくマシュウ・マリラ兄妹に引き取られてやっと恵まれた子供時代を過ごせるようになり、一人前の女性に成長していきます。やがて愛する人と結婚をして大勢の子供に恵まれ、幸せな生活を送っていたのですが、アンの子供たちは第一次世界大戦に巻き込まれてしまいます。小さかったアンは最終巻では50代、子供たちを立派に育て上げ、自らも赤十字の仕事に携わる貫禄のある女性として登場します。19世紀後半から20世紀初頭を生き抜いたカナダの女性の50年あまりにわたる物語を読み終えて、何か長い時間旅行をしてきたような気がします。

 「アンシリーズ」は今までも何度も読み返してきたのですが、今回も感動しました。アンや周りの人たちのドラマに笑って泣きました。「こんにちはアン」ではとにかくアんがかわいそうだったので、「赤毛のアン」を読み始めたときにはほっとしたというのが正直な感想です。アンが真実の愛情に目覚める「アンの愛情」や、アンの隣人レスリーをめぐるミステリアスでロマンチックな物語「アンの夢の家」なども良かったのですが、今回の収穫は今まであまり面白いと思えなかった巻が面白いと感じたことです。

 まず、2冊の番外編、「アンの友達」と「アンをめぐる人々」は、アンの住むアヴォンリーとその周辺の村に住む人々のドラマを綴った短編集で、アンは脇役かうわさ話で登場するに過ぎません。なので今まではあまり親しみを持てなかったのですが、思いがけない展開の短編が多く、とても面白く読めました。貧しい老女が昔の恋人の娘に贈り物をする「ロイド老淑女」、男嫌いで犬嫌いの女と、女嫌いで猫嫌いの男がふとした事から1軒の家に隔離されてしまう「隔離された家」、恋人を持ったことがない女が自分の空想で造り上げた恋人の思い出、ところがその空想とそっくりの人物が実在し…というちょっとできすぎた物語「偶然の一致」などが好きです。

 それから最終巻の「アンの娘リラ」、アンの子供たちが第一次世界大戦に巻き込まれる話なので、暗くてあまり好きになれなかったのですよね、今までは…。でも、今回読んで感動しました。
 主人公はアンの末娘のリラなのですが、物語の最初の方ではわがままで何の目的もない女の子として登場します。でも、戦争で兄たちや恋人が出征し、自らもふとしたことで戦争孤児を引き取ることになったり、赤十字少女団を結成したりなど、多くのことを経験しながら成長していくのです。このように、様々な苦しみや悲しみを乗り越えていくリラの姿に感動しました。
 また、アンの長男ジェムと愛犬マンデーのドラマにも感動。戦争に行ってしまったジェムを5年間も駅で待ち続けるマンデー、ジェムが帰ってきたときのマンデーの喜びいっぱいの姿、涙なしでは読めませんでした。
 アンシリーズというと夢見る女の子の夢物語だと思っていらっしゃる方、ぜひ、「アンの娘リラ」だけでも読んでみて下さい。戦争を背景にした現実的な物語です。第一次世界大戦に関する事項も豊富に出てきますので、歴史物語としても楽しめるのでは?

 ところで、別の意味で感動したのが第9巻の「虹の谷のアン」です。この「虹の谷のアン」、旧版ではすごく省略が多かったのですよね。今回読んだ新装版は省略部分が補われていたので、まるで初めて読むような感覚で読むことができました。多くのエピソードが追加されていたので、人物一人一人の描き方にも深みが増しているように思えました。それとこの巻はアンの子供たちや近所の牧師館の子供たちが中心になっている物語なのでアンの影が非情に薄いのですが、新装版ではアンの登場場面が増えていて嬉しかったです。

 このように、12冊のアンの物語を読み終えた今、私は充足感でいっぱいです。やっぱりアンシリーズはいいですね~。

 このようにはまってしまった本を読み終わったあとに読む本は本当に難しいです。来月に松本侑子さん訳の注釈つき「アンの愛情」が出るし、その松本さんの「赤毛のアンに隠されたシェークスピア」という本も読んでみたい。でも、ブログの更新感覚がこれ以上開いてしまっても…と思い、平安時代ものを読むことにします。書きかけの「系譜から見た平安時代の天皇」の新しい記事、「後冷泉天皇」の下書きも仕上げなくては。相変わらずやりたいことが山積みです。

☆コメントを下さる方は掲示板へお願いいたします。
トップページに戻る

「赤毛のアンシリーズ」新装版と「こんにちはアン」

2008-08-10 11:09:19 | 読書日記
 今年の「新年の挨拶」でも書きましたが、本年2008年は源氏物語1000年紀と同時に、カナダの作家L・M・モンゴメリの書いた「赤毛のアン」出版100周年に当たります。なので関連出版が多く、嬉しい悲鳴を上げています。今日はその「赤毛のアン」についてちょっと書いてみたいと思います。

 私と「赤毛のアン」との初めての出会いは小学5年の夏休み、村岡花子さんの子供向けの抄訳版でした。とても面白くて、夢中になって読んだのを覚えています。その後、同じ村岡さん訳の「赤毛のアンシリーズ」全10巻を買いそろえ、全巻読破したのが中学1年の時、その後、何度となく読み返しましたが、結婚後はずっと離れていました。

 それが7年前にネットにつないでから、平安関連のサイトと共に「赤毛のアン」関連サイトも訪問するようになり、色々見るようになってからアン熱が再現し、久しぶりに読み返したのです。しかし同時に、今まで愛読していた村岡さん訳の本は完訳ではないことを知ってショックを受けました。
 そこでそれからは、作家の松本侑子さんが訳した詳しい注釈つきの完訳版を愛読していたのですが、松本さんの訳本はまだ第2巻の「アンの青春」までしか出ていません。もちろん、松本さんの訳は読みやすく、会話も現代的で、村岡さんの訳とはまた違った良さがあるのですが、私がずっと親しんできたのは村岡さんの訳本ですので、やはり村岡さんの訳で完訳を読めたら一番いいのになあ、でも、村岡さんはすでに故人なのでかなわない願いです。でも、村岡さんのお孫さんが省略部分を補うという形でいつかアンシリーズ10巻が出版されたらいいなと、密かに思っていたのでした。やっぱり村岡さん訳の美しい自然描写や古めかしい会話は、アンの時代に合っているような気がしますもの。

 ところが今年、まさにその私の願いを叶えてくれる本が出版されたのです。
 今年の2月~4月にかけて、新潮文庫より、村岡花子訳「赤毛のアンシリーズ」新装版が刊行されたのでした。表紙が変わっただけかと思ったのですが、どうやらお孫さんの村岡美枝さんが省略部分を補訳したとのこと(こちらのページ参照)。しかし、どの程度補訳されているのかわからなかったので、しばらく購入を見合わせていました。

 しかし、先月の末にネットで調べてみたところ、どの巻も旧版より新装版の方がそれぞれページ数が増えているのがわかりました。新装版は旧版に比べると字が少し大きくなっているのでそのせいもあるのでしょうけれど、旧版ではかなり省略が多かった第9巻の「虹の谷のアン」は、倍以上のページ数になっていて驚きました。これなら省略部分がしっかり補訳されているはず…と思い、Amazonで購入してしまいました。10冊なのでちょっと高い買い物でしたが、やはり大好きなあんシリーズには変えられません。

 それで早速、久しぶりにアンシリーズの世界に入り込もうと思ったのですが、その前にまず、先月の初めに購入した「こんにちはアン(バッジ・ウィルソン/宇佐川晶子・訳・新潮文庫)」から読んでみることにしました。

 「こんにちはアン」は、モンゴメリの遺族の依頼を受けてカナダの作家バッジ・ウィルソンが執筆した小説で、赤毛のアン出版百周年を記念して出版されたものなのだそうです。
 本の内容は、「赤毛のアン」以前のアン、つまりアんが生まれてから、グリンゲイブルスに引き取られるためにブライトリバーの駅のホームに降り立つまでを描いた物語です。アンの生い立ちに関しては、「赤毛のアン」の第5章でも簡単に語られるのですが、こうして小説の形になるのは嬉しいことでした。

 それで、アンの生い立ちはとても不幸なので、かなり悲惨な話になるのでは…とちょっと覚悟をして読み始めたのですが、確かに内容が重かったです。

 まず、アンの両親が亡くなる場面は涙なしでは読めませんでした。二人ともとっても素敵な人物に描かれていたので、すっかり感情移入してしまっていたからです。特に、アンのお母さんの最後の言葉、「アン、あなたに会えて良かったわ。幸せになってね」は読みながら号泣してしまいました。それと、二人は流行病で亡くなるのですが、アンに病気を写すまいと必死になるところなど、自分の命に変えても子供は守という親の心を感じて、胸が熱くなり、同時に切なくもありました。もし両親が亡くならず、このままアンと幸せな家庭を築くことができたらどんなに幸せだったか、アンと両親がどのような日常を送ったのか、しばらく想像を巡らしていました。

 さてこのように、生後3ヶ月で両親を亡くしてからアンは、手伝いに来ていたトマス夫人という女性の家に引き取られるのですが、どうしてその人達がアンを引き取ることになったかを読んだときは「それはないのではないの?」という感じでした。彼らはアンにくっついてくる家具や服が欲しかったのですよね…。おまけにトマスのおじさんは重傷のアルコール依存症…。やがて少し大きくなったアンは、トマス家の子供たちの世話をさせられたり、家の人たちからいじめられたりします。このあたりは読んでいて辛かったです。

 もし、アンの豊かな想像力と、アンに字を教えたり、詩を読んでくれたりする周りの人たちがいなかったら、この小説はもっと悲惨だったと思います。ただ、そういった暖かい人たちとアンの縁は薄く、次々とアンの前から去っていってしまうのですが…。やはり私は、「赤毛のアン」の明るい夢のような世界の方が好きだわ~」と思いながら読んでいました。そのようなわけで、アんがクスバート家に引き取られることになって孤児院を出発する場面を読んだ時は、ほっと一息ついたという感じでした。

 …とこのように書いていますが、この小説、読んで良かったと思っています。というのは、解説にも書かれていたのですが、アンは不幸な身の上である上、学校にも行けないくらい働かされていたのに、その影が全くなく、話す言葉には豊富な知識や蘊蓄が感じられることに少し違和感を感じていたのです。その違和感が、この小説を読んですっきりしました。また、男の子でないのでグリンゲイブルスにはいられないとわかった時に大声で泣いた理由、赤毛をからかわれて激怒する理由もわかったような気がしました。

 こうして、「こんにちはアン」を読み終えたあと、「赤毛のアン」を読み始めてみました。紆余曲折はあったものの、クスバート家に引き取られ、マシュー・マリラ兄妹と本当の家族になり、次々に願いがかなっていくアンの姿に、「良かったね」と心から思うと同時に、アンの辛かった生い立ちを思い出し、胸が熱くなってきます。そして、やっぱり「赤毛のアン」は面白い~。これからしばらく、アンの世界をゆっくりと堪能していきたいと思っています。補訳された部分も楽しみです。


☆コメントを下さる方は掲示板へお願いいたします。
トップページに戻る

氷室冴子著「マイ・ディア」読了

2008-06-23 11:30:22 | 読書日記
 私は、平安時代の歴史や文学が大好きですが、それとは別に外国の家庭小説も大好きです。小学校の高学年から中学生時代は、そうした外国の家庭小説を好んで読んでいました。そして、「赤毛のアン」や「若草物語」や「あしながおじさん」を原書で読むのが夢でした。その夢は結局挫折しましたが、今でも特に、赤毛のアンシリーズ全10巻は大切な愛読書です。

 ところで…、私の好きなこの二つのもの、平安時代と外国の家庭小説を結びつけて下さっていらしたのが、先日逝去された氷室冴子さんだったのです。

 氷室さんは、「なんて素敵にジャパネスク」「ざ・ちぇんじ」といった平安時代を舞台にした少女小説の作者ですが、外国の家庭小説を紹介したエッセー、「マイ・ディア 親愛なる物語(角川文庫)」という本も出しておられます。この本のことは以前から知っていたのですが、絶版ということだったので購入をあきらめていました。ところが先日、氷室さんの逝去を知ったあとに、ネット上で著書を色々検索していて、この本のレビューにも行き当たったのです。レビューを読んで無性に読みたくなりました。だって、外国の家庭小説は私の少女時代の思い出がたくさん詰まっているのですもの。しかも著者はあの氷室さん…。そこで、ネット上の古書店を探し回り、やっと購入できました。そして、あっという間に読んでしまいました。

 この本では、「赤毛のアン」や「秘密の花園」のような有名どころだけでなく、「少女レベッカ」や「若草のいのり」のようなマイナーなものも紹介されていました。でも、だいたいの作品は読んだことがあるので、「そうそう、そんなお話だったのよね」となつかしく、うなずきながら読みました。
 ただ、正編は読んでいるものの続編は未読のもの、抄訳版で読んだために満足し切れていなかったものもいくつか紹介されていましたが…。氷室さんが絶讃していた「リンパロストの乙女」がそうでした。今回初めて知ったのですが、私が読んだ抄訳版、ラストの方のヒロインの恋愛のエピソードを丸ごとカットしてたんですね…。よって私は、ヒロインが最後にどうなるのかを知りません。これはぜひ完訳版を読まなくてはと思いました。

 こうしてみると氷室さん、私と同じようなことに興味がおありだったんだ~」と、何かとても親しみを感じました。逝去されてしまったことが改めて残念に思えます。

 なおこの本は、家庭小説の紹介だけでなく、氷室さんとご両親、・お姉様との暖かいエピソードなども盛り込まれています。文体も氷室さんらしくユーモラスで親しみやすいです。ご興味のある方、手に入りにくいかもしれませんがぜひ手に取ってみて下さいませ。

 ところで最近、私はこの「マイ・ディア」の他にも、行きつけの書店やネット古書店から色々な本を購入してしまいました。では、今月えりかが購入した本&近々購入する予定の本を…。

☆母の慟哭 中島道子著 夏目書房
 信長・秀吉・家康の母の生涯を描いた小説。個人的には、この3人の中では一番波乱に富んだ人生を送ったと思われる家康の母、お大の方に興味があります。

☆末世炎上 諸田玲子著 講談社文庫
 講談社のメールマガジンでタイトルを見て興味を引かれ、ネットで検索していくつかのレビューを見て面白そうだと思い、購入しました。伴善男が失脚した事件、「応天門の変」を、200年後の永承年間(後冷泉朝)の世から描いた平安サスペンス。現在読んでいますが面白いです。

☆アンのゆりかご 村岡恵理著 マガジンハウス
 今年は「赤毛のアン」出版百周年なので、アン関連の出版も目白押しです。源氏物語千年紀の「源氏物語」関連本の出版と共に嬉しい悲鳴を上げています。
 この本は、「赤毛のアン」を初めて日本語に訳なされた村岡花子さんの生涯を、お孫さんに当たる村岡恵理さんがまとめたものです。私が初めて読んだ「赤毛のアン」が村岡花子さん訳だったので、興味を引かれて購入しました。

☆こんにちは、アン (上・下) バッジ・ウィルソン/宇佐川晶子訳 新潮文庫
 「赤毛のアン」以前のアンを描いた小説だそうです。カナダではかなり評判が良かったとか…。アンがグリーンゲイブルスに引き取られる前の日常はかなり不幸だったと思うのですが、やっぱり読んでみたいです。7月1日発売なので、来月になったら本屋さんに走ります。楽しみ♪

☆トップページに戻る

まだ半分信じられないのですが…

2008-06-07 10:46:19 | 読書日記
 先月の角田文衞先生の訃報はとてもショックでした。掲示板にも書きましたが、拙ブログでも先生の著書をいくつか紹介していますし、歴史記事を書くときにも大変参考になっています。先生の著書は初心者にもわかりやすく、興味深く書かれているので大好きでした。まだまだ未読の著書もたくさんありますが、これから少しずつ読んでいきたいと思っています。

 そんな平安時代を愛する角田先生の逝去からまだ間もないのに、昨日、信じられないショックなニュースが飛び込んできました。

 「なんて素敵にジャパネスク」の著者、氷室冴子さんが肺ガンのため逝去されたというのです。まだ51歳の若さだそうです。信じられませんでした。
 しかも肺ガンだったというのが何かショックで…。一昨日まで、地元の放送局が「白い巨塔」の平成版を再放送していて、私はかなり夢中になってみていました。平成版では、主人公の財前医師は肺ガンで亡くなるので、進行してしまった肺ガンの恐ろしさを痛感したのですよね…。平安時代を愛する氷室さんも、その肺ガンで亡くなってしまったなんて…。そんなわけで、昨日はショックで文章をまとめることができませんでした。

 実は2~3日前、拙ブログの「こちら」「こちら」の記事を読み返していました。その記事の中で私は、「なんて素敵にジャパネスクはあそこで完結しているのでは。あとは、自由に想像すればいいのかな」という趣旨のことを書きました。でも読みながら、「もしかすると氷室さん、いつか続編を書いてくれるのかも?突然、第9巻か番外編が出るかもしれない。情報を見逃さないようにしなくては」と思ったのです、その時に…。でも、私がそんな思いを抱いているとき、氷室さんはすでに危篤だったのかもしれません。そんなこと、夢にも思いませんでした。もう続編が出ることは絶対にないのだ…と思うと寂しくてなりません。

 私は氷室さんの作品は「なんて素敵にジャパネスク」と「ざ・ちぇんじ」、それに自伝的小説の「いもうと物語」しか読んでいませんが、どれもストーリー展開が面白く、登場人物の描き方もすばらしいです。特に「なんて素敵にジャパネスク」は、ここ5年間に読んだ小説では一番はまった作品です。まだ信じられない気持ちはありますが、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

☆トップページに戻る
 

「女人源氏物語」、読了

2008-04-12 20:42:01 | 読書日記
 昨年秋から読んでいた瀬戸内寂聴さんの「女人源氏物語」、ようやく読了しました。色々な本を読みながら読んでいたので、結構時間がかかってしまいましたが…。

 この「女人源氏物語」は、こちらと、こちらで紹介しているのですが、「源氏物語」を物語に登場する女君たちや女房たちの語りによってストーリーが展開するといった、ユニークな形の「源氏物語」です。

 再読でしたが、読み終わった感想は、やっぱり、面白かったです。「源氏物語」を女たちの立場で語るとこんな風になるのだ…と改めて感心させられたり、驚いたり…。特に、脇役にすぎない女房たちの語りが面白かったです。

 また、この物語には、瀬戸内さん独自の創作もかなり織り込まれています。第2巻に収められた、「藤壺の侍女王命婦のかたる薄氷」などは、藤壺が亡くなったあとの女房たちの後日談という色が濃いです。

 それから圧巻だったのは、ラストの浮舟の語りです。

 私は今まで、浮舟という女性が受領階級だと意識したことがなかったのですよね。彼女は八の宮の忘れ形見で大君に生き写しだという設定なので、ついつい王族の女性だと思ってしまったのですが、八の宮からは実の子と認められず、母が再婚した受領の家で育てられたので、身分は受領階級だということを見落としがちでした。確かに、薫も匂宮も、浮舟に対するあつかいは大君や中の君より軽々しいです。なので浮舟が哀れになってきますが、薫や匂宮が、浮舟を受領階級の女性としてあつかっていると考えると少し納得できるように思えます。ただ、薫が浮舟とさっさと契ったあげく、宇治に隠してしまうなんてちょっと…と思ったりしますが。

 そんなこんなで薫と匂宮、二人の男性に愛された浮舟は悩み苦しんだあげく宇治川に取水したものの横川の僧津に助けられ、出家をしてしまいます。浮舟は出家をすることによってでしか、救われる道がなかったのかもしれませんね。

 ラストの「薫はもちろん、弟にも会わない」という浮舟の決断について、二十代の頃の私は「どうして?」と思って納得できなかったのですが、今では何となく、浮舟の気持ちがわかるような気がします。はっきりではなく何となくですけれどね。このように、年齢によっても感じ方が違ってくるところも、「源氏物語」のすばらしさなのかもしれません。

 瀬戸内さんは、「女人源氏物語」で独自の「源氏」の世界を展開なさいましたが、原文に忠実な口語訳もしておられます。こちらもまた読み返してみたいです。

 とはいうもののかなり気が多い私、今度は急に徽子女王にお会いしたくなり、「斎宮女御徽子女王(山中智恵子・著 大和書房)」という本を読み始めました。朱雀天皇御代の斎宮、後に村上天皇の女御となった女性で、歌人としても知られる徽子女王の人物評伝です。実はこちらも再読ですが、「源氏物語」が生まれる前の朱雀・村上・円融天皇の御代を堪能しています。

☆トップページに戻る
 

現在読んでいる本

2008-02-27 21:38:21 | 読書日記
 最近、やりたいこと、やるべきことが多すぎて1日があっという間です。誕生日からもう1ヶ月経ってしまったなんて、時の流れが速すぎる~。

 その中でも、特に夢中になってしまっているのが読書です。最近は図書館で借りることも多いのですが、面白いものが多く、しかも貸出期限中に読まなくてはならないので、自由な時間を読書に費やすことが多いです。そのため、ブログの更新がすっかり滞ってしまって申し訳ありません。

 さて、今読んでいる本…、実は3冊の本をいっぺんに読んでいるのです。読みたい本が多くてこうなってしまったのですよね…。

☆夢熊野 紀和 鏡

 図書館で借りた、600ページ以上もある長い小説です。更新が滞っている最大の理由はこの本を読んでいるからです。

 この小説は、鳥羽院の院生時代から源平合戦、鎌倉幕府成立までの時代を熊野の視点で描いた小説です。熊野は源平合戦に大きな影響を与えましたし、源行家や平忠度などの人物との関係も深いので、以前から関心がありました。なのでとても興味深く読んでいます。もう少しで読み終わるので、「図書室3」で紹介できたらいいなと思っています。

☆女人源氏物語 瀬戸内寂聴

 以前、こちらの記事で紹介したことがある本です。タイトル通り、「源氏物語」に登場する女性たちの語りによって「源氏物語」のストーリーが展開するという、ちょっとユニークな形の「源氏物語」です。

 私は24歳の時にこの本を初めて読み、それまで読んだどの現代語訳よりもわかりやすかったので、すっかり「源氏」の虜になってしまいました。今年が源氏物語千年紀ということもあり、昨年の秋頃から再読し始め、他の本を読みながら少しずつ読み進めています。一編一編が一応独立しているので、一気に読まなくても話が通じるので助かっています。現在ようやく、第3巻の3分の2くらいまでを読み終わりました。「源氏物語」の巻名で言うと、「藤裏葉」までを読み終えたことになります。

 この「女人源氏物語」は、女性たちの語りということで、瀬戸内さんによる創作も所々に織り込まれていて楽しいです。
 例えば、玉鬘と髭黒の大将の恋の手引きをした弁のおもとの姉が紫の上に使えており、そのさえだという女房も髭黒の大将の手引きの手伝いをしていました。もしこのことが光源氏にばれたらさえだにどんなおとがめがあるか恐ろしいので黙っていよう…と紫の上が言っていますが、こうした女房同士のつながりはこの時代よくあったことなので、なるほどと思いました(紫上のかたる「梅枝」)。

 近江の君は、高貴な殿の落としだねということで、少女時代にはしっかりと教育を受けていたという記述も面白かったです。でも、彼女は都では「教養がない」「姫様らしくない」ということでみんなに馬鹿にされてしまうのですよね。(近江の君のかたる「常夏」)。この「常夏」という章は、近江の君の視点で書かれているのでとっても面白いです。

 さて、このあとはいよいよ女三の宮の登場です。二十代の頃は女三の宮がどうしても好きになれませんでしたが、今は結構愛着があるので、これから先も読むのが楽しみです。

☆アメリカ50州を読む地図 浅井信雄

 日本史とも古典とも全く関係のない本です。昨年は、歴史・古典以外の本って1冊も読まなかったのではないかしら。でも今年は、「ちりとてちん」に続いて2冊目です。

 最近、アメリカ大統領選挙の予備選が話題になっているので、「そう言えばこんな本も持っていたのでは…」と思い、本棚の奥から取り出して手に取ってみました。アメリカ合衆国の50の州の一つ一つを取り上げ、その州の地理、歴史などを簡単に解説しています。私は少額高学年から中学時代、アメリカの少女小説を愛読していたので興味深く楽しく読んでいます。たまには違ったジャンルの本を読むのも気分転換になりますね。

☆トップページに戻る