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一日一句(1383)







風邪の神われに執心召さるるな






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一日一句(1382)







太刀山や近くて遠き冬の波






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Valéry et Braque







きょうは、風邪で調子が悪く一日ごろごろしていた。それで、ジョルジュ・ブラック著『昼と夜』の訳者解説をぱらぱら見ていた。それによると、オリジナルの『ジョルジュ・ブラックの手帖・1917-1947』の表紙折り返しには、ポール・ヴァレリーの詩が印刷されていることがわかった。「ブラックに対する友情と尊敬が込められた美しい詩である」と紹介されている。それは次のような詩である。

Illumination, largesse.
Voici parler une Sagesse
Et sonner cette auguste Voix
Qui se connaît quand elle sonne
Tant que des ondes et des bois
(Paul Valéry)

この詩を、『昼と夜』の訳者、藤田博史さん(精神科医らしい)は、次のように訳出している。

煌(ほの)めく閃き、惜しみなき心。
ここに賢者の言葉と
気高き声の響きあり
誰か知る、この響きこそ
水波と木々たちのものなることを
(ポール・ヴァレリー)

非常に美しい詩である。日本語訳にすこし不満があったので、自分で訳出して紹介しようと思った。ところが訳せないのである。いくら考えても、4行目と5行目のつながりがわからない。

ウェブで調べてみると、この詩は、全6行の詩であることがわかった。

Illumination, largesse!
Voici parler une Sagesse
Et sonner cette auguste Voix
Qui se connaît quand elle sonne
N'être plus la voix de personne
Tant que des ondes et des bois

これで、訳すことができた。

閃き、恵み!
ここで一人の賢者が語り、
その厳かな聲が響く。
だれが知るだろうか、その聲が響くとき
それはもう ひとの聲ではなく
水と木々のものなのだということを。

この詩は、詩集『魅惑』(1922)の中のla Pythie(ピュティア:デルフォイでアポロンの神託をつたえた巫女)という詩だった。

ポール・ヴァレリーとジョルジュ・ブラックは、一回り違うので、二人が友人だった可能性はあるが、調べた限り、ブラックのために、この詩を書いた形跡はなかった。だが、この詩は、なんと、ブラックそのひとと作品のことを言い当てているだろうか。

この詩を翻訳した藤田さんは、サン・ポール・ドゥ・ヴァンス村にあるマーグ財団が設立した現代美術館で、この本を手にして、表紙を裏返している。たぶん、そこには、5行の詩が印刷されてたのだろう。なぜなら、日本語訳も5行であるからだ。はじめから、N'être plus la voix de personneは抜けていたとみられる。また、一行目のIllumination, largesse!の!もなかったのだろう。こういう重大な記号を見落とすことは、言葉に従事するひとなら、まずありえない。とすると、全5行の詩を上記のように訳出したことになる。翻訳した藤田さんには、感嘆するほかないのである。


(初出「Facebook」2016.1.20)




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一日一句(1381)







風邪聲は別人になる心地して






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一日一句(1380)







大寒に魂魄ゆあんと育つらん






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一日一句(1379)







永遠のこどもでゐたり風邪の神






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一日一句(1378)







葱提げてこの雪道の遠さかな






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一日一句(1377)








さきたまや夢のつづきは雪の國






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一日一句(1376)







冬銀河僻耳に聞く愛の歌






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一日一句(1375)








雑踏をこちら向くなり雪女






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