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普天間基地を停止に追い込むチャンス到来

2015年11月19日 17時31分01秒 | 法関係
国自身が主張したことを用いて、彼らの主張を縛る方法を考えてみた。
しっぺ返しを食らえばいい。


まず、執行停止に関する部分から見てゆく。条文の関係部分を抜き出した。

○行政不服審査法 34条4項

処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない


成立の要件は、「重大な損害を避けるため」と「緊急の必要がある」なので、拙ブログではこれらを簡略的に条件ア)「重大な損害」と条件イ)「緊急性」と呼んだものである。
執行停止の決定がされる為には、必ず

ア)重大な損害
イ)緊急性

を両方同時に満たしていなければならない、ということである。
執行停止申立て者である、防衛省は勿論、農水省と国交省はいずれもこれを認め執行停止決定をしたので、これが最有力の証拠となる。

なので、沖縄県庁に既に存在する、

①沖縄防衛局の審査請求及び執行停止申立ての文書
②農水省の出した執行停止決定通知書
③国交省の出した執行停止決定通知書

が重要証拠となります。


また、本件における国交省の出した

④地方自治法245条の八に基づく勧告及び指示の通知文書
⑤代執行の訴状

も同じく有力な証拠となります。

再掲しますが、地方自治法上の代執行手続の要件は、

ウ)法律違反がある(授益的処分の取消が違法というのが国の主張)
エ)代執行以外に是正困難(=他に手段がないこと)
オ)放置が著しく公益を害すること(=著しい公益侵害)

です。
国の主張では、エ)について立証が欠けており、成立要件を満たしません。
役に立つのが、オ)著しく公益を害するという要件です。


これの立証として、国の訴状では、次のように述べられています。
(一部抜粋)


(a)普天間飛行場の周辺住民等の生命・身体に対する危険除去ができなくなること。
(中略)
 宜野湾市内には2015年度、幼稚園8施設、小学校9校、中学校5校、高等学校3校、大学1校の学校施設や、約4万1600世帯の住宅、約70施設超の医療施設や公共施設等が密集している。沖縄県が本土復帰を果たしてから15年3月18日までの間に105回(年平均2・4回)の航空機による事故が発生しており世界一危険な飛行場といわれることもある。普天間飛行場における航空機による訓練では飛行経路が市街地上空で、普天間飛行場の周辺住民や上記各施設の利用者等は航空機事故の危険性や騒音等の被害にさらされる事態が常態化している。万一、航空機による事故が発生すれば周辺住民等の生命・身体に甚大な被害を及ぼす危険性が高くその危険は具体的なものとして現に存在しているといえる。

 沖縄防衛局は騒音問題に周辺地域の住宅防音工事の助成事業を実施し、これまで約427億円の補助金を支出し、1万世帯以上の防音工事が実施されている。依然として航空機騒音の被害や事故に対する危険感不安感などの精神的被害に対する苦情が14年度に300件以上、15年度は9月までに160件以上が宜野湾市に寄せられ騒音被害が解消されているとはいえない。

 以上の通り航空機事故や騒音被害といった周辺住民の生命身体に対する重大な危険は現実化し現在も継続し一刻も早く除去されなければならない。
 長年積み重ねられた交渉で普天間飛行場の危険性除去は社会からも大きな信頼が寄せられており、取り消しは社会の信頼を一方的に無視するものであり、行政処分一般に対する信頼を失わせることになりかねない。

(b)普天間飛行場返還後の跡地利用による宜野湾市の経済的利益が得られなくなること。

(以下略)


本件代執行の請求訴訟までに、国が主張してきた、ア)、イ)、オ)をもう一度見ますと、

ア)重大な損害
イ)緊急性
オ)著しい公益侵害

これは、国自身が述べ、立証しているものである、というのが重要点なのです。



ここで、行政事件訴訟法を振り返りましょう。

○第37条の二  

第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。

成立する為の要件としては、

A)重大な損害を生ずるおそれがあること
B)損害を避けるため他に方法がないこと

なのです。
上で見た通り、執行停止や代執行の成立要件と殆ど似ている、ということです。


そこで、A)の「重大な損害」条件は、上記ア)とオ)で国自身がその立証を述べているのだから、そのまんま返せばいいのです。普天間周辺住民の「生命身体への危険」や宜野湾市の「経済的利益享受機会の喪失」です。
イ)の緊急性というのは、執行停止しないと回復不能な損害を受けるので回避する為には執行停止するしかない、というのが国の言い分なのです。これが、B)の要件の理由の一部そのものなのです。国はこれに反対できません。自分がそう主張したので。

しかも代執行の訴状で普天間飛行場の危険除去は基地を廃止するしか方法がない、と言っているのである。

国の訴状での言葉を借りれば、

航空機事故や騒音被害といった周辺住民の生命身体に対する重大な危険は現実化し現在も継続し一刻も早く除去されなければならない
『普天間飛行場の危険性除去は社会からも大きな信頼が寄せられており』

だそうで、これを証拠提出すればいい。


よって、A)の「重大な損害」は難なく立証できる。B)の他に回避の方法がない、についても執行停止の理由に国が使った文言を返せばいい。これに加えて、国は十分に「普天間飛行場の危険性について認識している」ことが自ら述べて立証しているのであるから、危険の存在を知っていたのに何らの手立ても講じないことが違法と判断されるであろうことは、当然に可能性が高くなるのだ。


次に、裁判で具体的に何を請求するべきか、ということになる。

住民が訴訟を提起するなら環境基準から攻める。

○環境基本法16条 1項及び4項

政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

4  政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。



ここから、飛行場周辺の騒音被害について(これを国が自身で数々主張している)1項の基準を満たすよう、4項に従い「政府は総合的かつ有効適切に講ずべし」と求める、という請求が考えられる。

他には、防衛大臣に対する請求も可能。

○自衛隊法 107条5項

 防衛大臣は、第一項及び前項の規定にかかわらず、自衛隊が使用する航空機の安全性及び運航に関する基準、その航空機に乗り組んで運航に従事する者の技能に関する基準並びに自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設の設置及び管理に関する基準を定め、その他航空機に因る災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない。


ここで言う「その他航空機に因る災害を防止し、公共の安全を確保するための必要な措置を講じなければならない」ということで、措置を義務づける請求。


また、防衛省組織令9条による使用条件の変更ないし返還に関することを求めるべく防衛大臣が地方協力局に対し指揮監督権を行使せよ、という請求。

○防衛省組織令9条1項3号

3 駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること

国の訴状での主張を再掲しよう。

『普天間飛行場における航空機による訓練では飛行経路が市街地上空で、普天間飛行場の周辺住民や上記各施設の利用者等は航空機事故の危険性や騒音等の被害にさらされる事態が常態化している。万一、航空機による事故が発生すれば周辺住民等の生命・身体に甚大な被害を及ぼす危険性が高くその危険は具体的なものとして現に存在しているといえる』

この生命・身体に甚大な被害を及ぼす具体的な、現に存在する危険を放置することは、到底許されず、防衛大臣は直ちに適切な措置を講じるべく、環境省もまた政府に環境基本法に則り是正するよう求めるべきである。



都道府県知事が原告として訴訟を起こす場合には、学校の設置者としての立場から行うことは可能ではないか。例えば小学校の設置者は都道府県知事であり、他にも知事が設置者となっている学校はあるだろう(*追加:ちょっと考えてみたが、やっぱり知事が原告で国を訴える、というルートは、最初から訴訟というのも無理っぽいような気が。他の申立て制度を経ないと、簡単にはできないかも。直接訴えられるという制度設計にはなっていなさそうなので。やはり住民の訴訟が効果的かと)

○小学校設置基準 1条3項

3  小学校の設置者は、小学校の編制、施設、設備等がこの省令で定める設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、これらの水準の向上を図ることに努めなければならない。

○同7条  小学校の施設及び設備は、指導上、保健衛生上、安全上及び管理上適切なものでなければならない。

ここで言う「施設の設置基準」について水準向上を図らねばならないこと、7条より「安全上適切なものでなければならない」ことから、この義務を果たすには普天間飛行場の国が言う「現に存在する危険」は明らかに設置基準に違背する。

訴状においても、国は、『宜野湾市内には2015年度、幼稚園8施設、小学校9校、中学校5校、高等学校3校、大学1校の学校施設や、約4万1600世帯の住宅、約70施設超の医療施設や公共施設等が密集している。沖縄県が本土復帰を果たしてから15年3月18日までの間に105回(年平均2・4回)の航空機による事故が発生しており世界一危険な飛行場といわれることもある』と自分で立論しているのだから、学校の設置基準を満たさない状態であることを認識しているといえる。


とすれば、学校設置基準の言う「安全上適切なもの」であることを達成するよう、普天間飛行場の運用を停止させる義務を負うものと言うべきである。
防衛大臣は、「公共の安全を確保するために必要な措置をすべき義務」(自衛隊法107条)があるのであるから、すみやかに、その措置を実施すべきである。


類似条文;
中学校設置基準 同1条3項、7条
高等学校設置基準 同1条3項、12条


参考までに、大学は文部科学省であるので、大学設置基準 同1条3項が小学・中学・高校と同等で、34条1項『校地は、教育にふさわしい環境をもち、校舎の敷地には、学生が休息その他に利用するのに適当な空地を有するものとする。』の基準を達成するよう、防衛大臣に協力を要請するべき、ということになろうか。


いずれにせよ、国は、代執行請求訴訟の訴状と、その他①~⑤の重要な証拠を提供してくれたことに間違いはなく、補強材料を少し見つければ、国が抗弁できる要素はかなり少ない、ということだ。
米軍の配置がどうとか、防衛上の価値がどうのとか、そういう論点に触れることなく、国の主張を潰せるのだ。


国は、自ら述べた通りに、
重大な損害が存在し、具体的な危険について十分に認識
しており、それは防衛省だけならず、農水省や国交省などにまたがって共有されており、しかも閣議了承を得られるだけの根拠を持っている、ということである。これを漫然と放置し、何ら適切な措置をとらないことは違法以外のなにものでもない。