人脈が成功を呼ぶ秘訣!
ある男がいた。仮に「権兵衛」と呼ぼう。
権兵衛はどうにかして成り上がりたい、という願望が強く、人の羨むような成功を手中に収めたかった。そこで権兵衛は、自分のスキルを磨く為に、必死で剣術や組み手などを鍛錬した。
ある時、蕎麦屋で事件が起こったのだった。酔っ払った男が他の客と喧嘩を始めたのだった。そこに偶然居合わせた権兵衛が、その酔客を組み伏せたのだった。それを見ていた男が、「おい、おまえさん、なかなか腕が立つじゃねえか、仕事を探してるんだったら、○○橋の一番組を訪ねてきな。世話くれえしてやれるかもしんねえ」と言い残して去っていったのだった。
数日後、権兵衛は一番組の門をくぐっていた。
権兵衛 「仕事の口があると言われてきたんだが…」
手下1 「ああ、あの時のヤツだな、親分に紹介するから上がってくんな」
権兵衛は一番組の豊岡親分に引き合わされた。一番組は、要するにヤクザもんで、船荷の運搬や人足なんかを仕切っていた。この界隈では「豊岡一家」として知られていた。権兵衛はこの一家の仕事にありつくことになった。
ある時…
越後屋 「おい、豊岡、今度の札入れには紀州屋に負けるわけにはいかん」
豊岡親分 「へい、手筈は整えてごぜえます、越後屋のダンナの方は…」
越後屋 「判っておる、万端抜かりなし、じゃ。今度一席設けるからのう」
豊岡親分 「わかりやした、うまくいくといいですな…」
後日…
越後屋 「ささ、お代官様、お一つどうぞ」
お代官 「すまぬのう、わしも色々とものいりでのう」
越後屋 「へい、ごもっともで。お代官様ともなれば大変で…」
お代官 「そうよ、わしくらいになれば、つきあいが多くてのう」
越後屋 「はい、早速ですが、こちらをご用意させていただきやした」
お代官 「ああ、判っておる」
越後屋 「今度の札入れの際には、ひとつ、よろしゅう…」
お代官 「心得た。で、あちらの方もやっておくがよい」
越後屋 「はい、既に手は打ってございます…あちらに控える豊岡一家が」
豊岡親分 「へい、抜かりはございませんです」
お代官 「越後屋、そちも悪よのう~(笑)」
越後屋 「うぇへっへっへ、お代官様ほどでも…」
一同、うぇーへっへっへっへっはっはっは
数日後…
豊岡親分は一番組の荒くれどもと権兵衛に紀州屋の襲撃を命じた。
紀州屋の蔵や船を襲撃し、暫くは商売ができないように破壊したのだった。権兵衛は一方ならぬ働きを見せ、紀州屋の手の者を次々と倒していった。大活躍だった権兵衛は親分に大いに気に入られた。
その褒美として、権兵衛は一番組の若頭に大抜擢されたのだった。
豊岡親分 「いいか権兵衛、今後もしっかり働けば、上に上れるんだぜ」
権兵衛 「へい、親分。精進いたしやす」
豊岡親分 「そうだ、今度越後屋の旦那に挨拶させてやるぜ」
権兵衛 「あ、あの越後屋さんですか…ありがてえ話で…」
後日…
代官所に越後屋と紀州屋が呼ばれていた。
お代官 「双方とも、今日の札入れで受注を決めるからのう」
越後屋 「はい、心得てございます、ねえ紀州屋さん?」
紀州屋 「は、はい、それが…手前どもの船を失いまして」
お代官 「紀州屋、それはどういうことか」
紀州屋 「納める期日には間に合わぬことになるかと…」
お代官 「これはこれは、ならば札入れ出来ぬと申すか」
紀州屋 「はい、本日は無理かと…」
お代官 「それは困ったのう、まずいのう紀州屋、御用問屋たるもの…」
紀州屋 「申し訳ございません、どうか寛大なるお沙汰を…」
お代官 「しかしのう、すまぬではすまぬこともあるでのう」
紀州屋 「……」
お代官 「これまでの働きに免じてお咎めなし、としてやろう」
紀州屋 「本当にございますか、有難うございます、復旧に全力を尽くします」
お代官 「しかし一つ条件があってのう」
紀州屋 「それはどういった?」
お代官 「今後札入れは辞退してもらおう。御用問屋の不祥事に目をつぶるゆえ」
紀州屋 「そうなりますと、今後は越後屋さんが一手に引き受けると…」
お代官 「止むを得んのう、そちをお咎めなしで救う為には」
紀州屋 「判りました…お沙汰に従うのみにございます」
お代官 「しかと心得よ、よいな」
こうして越後屋の独占受注が決まったのだった。紀州屋には二度とチャンスは巡ってはこないのだった。
後日、お代官、越後屋、豊岡一家の祝宴が開かれた。勝利の宴だ。
権兵衛は豊岡親分と共に越後屋とお代官にお目通りが許されたのだった。
その後、お代官や越後屋の覚えめでたく、権兵衛には色々な仕事が舞い込むのだった。お代官や越後屋が成功を収めて、力をつければつけるほど、豊岡親分の格も上がり、ひいては権兵衛の権勢も強まってゆくのだった。まさに、互いが互いを引き上げるという、加速度的な成功のスパイラル。
◇◇◇
社会は、こんな水戸黄門的な単純な世界にはなっていない、という意見は多いと思う。確かに、こんな漫画チックな世界観というのが事実だということは言わないけれど、案外と似ていることは多々あるのではないかと思っている。ある時期に政治的に力を持つ人間たちはどうやって台頭してくるか、というサークルをよく観察してみると、お代官・越後屋・豊岡一家、というような関係を形成しているのだ。人脈もそれに沿ったものとなるのである。サークルの中心がどこにあるのか、ということで、権力の分布が変わってくるというだけであると思う。
「悪に近づくもの」ほど共依存関係が強まると思うので、こうした構造になり易いのではないかと思う。
善に近づくとか正義に近いものになっていくと、より孤独になるし、インディペンデントな存在となっていくのではないかと感じている。外部からの力とか影響力を受け付けないようにしようとするなら、必然的にそうなってしまうだろう。権力に跪きやすいというのは、政治的影響力を行使される余地が高い、ということだと思う。
だから人脈に強い、というのは、例えば学閥のようなものと意味合いとしては同じなのであり、互いが互いの利益の為に利用しやすく、結果的には談合体質・インナー重視、みたいになってしまい易いだろうと思う。
あのポンジー詐欺っぽい史上最大規模の詐欺事件にしても、そういう人脈力をフルに発揮した結果、可能となった詐欺なのだから(笑)。
特殊な人脈力を得たいが為に、慶応の幼稚舎に入れたい、みたいな、「お受験バカ」とかが蔓延るんじゃないかな、と思ったりしている。東京界隈のお受験情報とか全然知らないから、どこが「小学校の東大」とか言われている学校なのか、ということも知らない。けど、そういうのを最も大事にしたいと考える大人たちの発想は、ぼくには理解できない。昨日だったかの読売記事にも出ていたけど、お受験の願書の為に郵便局に行列とか、学校周辺に行列とか、まるでバカみたい。
でもね、世の中というのは越後屋さんや豊岡一家が一時的にでも栄えることだってよくある話なので、そういうのを価値が高いと信じている人たちは生まれてくるのだろうと思いますね(笑)。
ま、本当は「良い出会い」みたいなものが世の中の大半なのだろう、とは、ぼくも思っているんだけどさ。「○○と出会って良かったな」と心底思える、ということ。そういう出会いというのは、きっと「価値なんか判らない」というものしかないのではないかな。
ある男がいた。仮に「権兵衛」と呼ぼう。
権兵衛はどうにかして成り上がりたい、という願望が強く、人の羨むような成功を手中に収めたかった。そこで権兵衛は、自分のスキルを磨く為に、必死で剣術や組み手などを鍛錬した。
ある時、蕎麦屋で事件が起こったのだった。酔っ払った男が他の客と喧嘩を始めたのだった。そこに偶然居合わせた権兵衛が、その酔客を組み伏せたのだった。それを見ていた男が、「おい、おまえさん、なかなか腕が立つじゃねえか、仕事を探してるんだったら、○○橋の一番組を訪ねてきな。世話くれえしてやれるかもしんねえ」と言い残して去っていったのだった。
数日後、権兵衛は一番組の門をくぐっていた。
権兵衛 「仕事の口があると言われてきたんだが…」
手下1 「ああ、あの時のヤツだな、親分に紹介するから上がってくんな」
権兵衛は一番組の豊岡親分に引き合わされた。一番組は、要するにヤクザもんで、船荷の運搬や人足なんかを仕切っていた。この界隈では「豊岡一家」として知られていた。権兵衛はこの一家の仕事にありつくことになった。
ある時…
越後屋 「おい、豊岡、今度の札入れには紀州屋に負けるわけにはいかん」
豊岡親分 「へい、手筈は整えてごぜえます、越後屋のダンナの方は…」
越後屋 「判っておる、万端抜かりなし、じゃ。今度一席設けるからのう」
豊岡親分 「わかりやした、うまくいくといいですな…」
後日…
越後屋 「ささ、お代官様、お一つどうぞ」
お代官 「すまぬのう、わしも色々とものいりでのう」
越後屋 「へい、ごもっともで。お代官様ともなれば大変で…」
お代官 「そうよ、わしくらいになれば、つきあいが多くてのう」
越後屋 「はい、早速ですが、こちらをご用意させていただきやした」
お代官 「ああ、判っておる」
越後屋 「今度の札入れの際には、ひとつ、よろしゅう…」
お代官 「心得た。で、あちらの方もやっておくがよい」
越後屋 「はい、既に手は打ってございます…あちらに控える豊岡一家が」
豊岡親分 「へい、抜かりはございませんです」
お代官 「越後屋、そちも悪よのう~(笑)」
越後屋 「うぇへっへっへ、お代官様ほどでも…」
一同、うぇーへっへっへっへっはっはっは
数日後…
豊岡親分は一番組の荒くれどもと権兵衛に紀州屋の襲撃を命じた。
紀州屋の蔵や船を襲撃し、暫くは商売ができないように破壊したのだった。権兵衛は一方ならぬ働きを見せ、紀州屋の手の者を次々と倒していった。大活躍だった権兵衛は親分に大いに気に入られた。
その褒美として、権兵衛は一番組の若頭に大抜擢されたのだった。
豊岡親分 「いいか権兵衛、今後もしっかり働けば、上に上れるんだぜ」
権兵衛 「へい、親分。精進いたしやす」
豊岡親分 「そうだ、今度越後屋の旦那に挨拶させてやるぜ」
権兵衛 「あ、あの越後屋さんですか…ありがてえ話で…」
後日…
代官所に越後屋と紀州屋が呼ばれていた。
お代官 「双方とも、今日の札入れで受注を決めるからのう」
越後屋 「はい、心得てございます、ねえ紀州屋さん?」
紀州屋 「は、はい、それが…手前どもの船を失いまして」
お代官 「紀州屋、それはどういうことか」
紀州屋 「納める期日には間に合わぬことになるかと…」
お代官 「これはこれは、ならば札入れ出来ぬと申すか」
紀州屋 「はい、本日は無理かと…」
お代官 「それは困ったのう、まずいのう紀州屋、御用問屋たるもの…」
紀州屋 「申し訳ございません、どうか寛大なるお沙汰を…」
お代官 「しかしのう、すまぬではすまぬこともあるでのう」
紀州屋 「……」
お代官 「これまでの働きに免じてお咎めなし、としてやろう」
紀州屋 「本当にございますか、有難うございます、復旧に全力を尽くします」
お代官 「しかし一つ条件があってのう」
紀州屋 「それはどういった?」
お代官 「今後札入れは辞退してもらおう。御用問屋の不祥事に目をつぶるゆえ」
紀州屋 「そうなりますと、今後は越後屋さんが一手に引き受けると…」
お代官 「止むを得んのう、そちをお咎めなしで救う為には」
紀州屋 「判りました…お沙汰に従うのみにございます」
お代官 「しかと心得よ、よいな」
こうして越後屋の独占受注が決まったのだった。紀州屋には二度とチャンスは巡ってはこないのだった。
後日、お代官、越後屋、豊岡一家の祝宴が開かれた。勝利の宴だ。
権兵衛は豊岡親分と共に越後屋とお代官にお目通りが許されたのだった。
その後、お代官や越後屋の覚えめでたく、権兵衛には色々な仕事が舞い込むのだった。お代官や越後屋が成功を収めて、力をつければつけるほど、豊岡親分の格も上がり、ひいては権兵衛の権勢も強まってゆくのだった。まさに、互いが互いを引き上げるという、加速度的な成功のスパイラル。
◇◇◇
社会は、こんな水戸黄門的な単純な世界にはなっていない、という意見は多いと思う。確かに、こんな漫画チックな世界観というのが事実だということは言わないけれど、案外と似ていることは多々あるのではないかと思っている。ある時期に政治的に力を持つ人間たちはどうやって台頭してくるか、というサークルをよく観察してみると、お代官・越後屋・豊岡一家、というような関係を形成しているのだ。人脈もそれに沿ったものとなるのである。サークルの中心がどこにあるのか、ということで、権力の分布が変わってくるというだけであると思う。
「悪に近づくもの」ほど共依存関係が強まると思うので、こうした構造になり易いのではないかと思う。
善に近づくとか正義に近いものになっていくと、より孤独になるし、インディペンデントな存在となっていくのではないかと感じている。外部からの力とか影響力を受け付けないようにしようとするなら、必然的にそうなってしまうだろう。権力に跪きやすいというのは、政治的影響力を行使される余地が高い、ということだと思う。
だから人脈に強い、というのは、例えば学閥のようなものと意味合いとしては同じなのであり、互いが互いの利益の為に利用しやすく、結果的には談合体質・インナー重視、みたいになってしまい易いだろうと思う。
あのポンジー詐欺っぽい史上最大規模の詐欺事件にしても、そういう人脈力をフルに発揮した結果、可能となった詐欺なのだから(笑)。
特殊な人脈力を得たいが為に、慶応の幼稚舎に入れたい、みたいな、「お受験バカ」とかが蔓延るんじゃないかな、と思ったりしている。東京界隈のお受験情報とか全然知らないから、どこが「小学校の東大」とか言われている学校なのか、ということも知らない。けど、そういうのを最も大事にしたいと考える大人たちの発想は、ぼくには理解できない。昨日だったかの読売記事にも出ていたけど、お受験の願書の為に郵便局に行列とか、学校周辺に行列とか、まるでバカみたい。
でもね、世の中というのは越後屋さんや豊岡一家が一時的にでも栄えることだってよくある話なので、そういうのを価値が高いと信じている人たちは生まれてくるのだろうと思いますね(笑)。
ま、本当は「良い出会い」みたいなものが世の中の大半なのだろう、とは、ぼくも思っているんだけどさ。「○○と出会って良かったな」と心底思える、ということ。そういう出会いというのは、きっと「価値なんか判らない」というものしかないのではないかな。