政府系金融機関の改革に伴う諮問会議の議論で、福井日銀総裁が触れていた事柄です。まず、その部分を引用してみます(以下特に断りがなければ、議員同士の会話は経済財政諮問会議の議事要旨より引用)。
第25回議事要旨
「政府の金融として残す部分の機能論については、エコノミー・オブ・スケールという視点はあまりなく、エコノミー・オブ・スコープを考えていくのではないか。いろいろな機能をまとめていく場合、機能が有機的に結びついて付加価値が高まるようにすることが大事。単に寄せ集めることだけを考えると、エコノミー・オブ・スコープに欠けるリスクもある。機能論の延長線上としてまとめていくことにより(筆者注:「まとめていくことより」かな?と思いましたが、公開原文通りとしてます)、組織が活性化するまとめ方がいいのではないか。」
ご指摘の論点はやはり大切だと思われ、大変勉強になります。流石は日銀総裁でございます。本当です。揶揄とかではなく。私のような無知無能の人間には知らないことを、いくつかの言葉で教授してくれるのです。そういう材料を与えてもらえることも有意義です。
話を戻しますが、「エコノミー・オブ・スケール」と「~・スコープ」という言葉ですけれども、これは何かと申しますと、簡単に言えば「規模の経済」と「範囲の経済」ということだそうです。概略を申しますと、「規模の経済」とは、弱小企業などがバラバラに生産するよりも大きな企業が一つでドーンと生産した方がトータルのコストが軽減される、というものです。昔からある、大量生産によってコスト低減を達成できる、というものですね。近年の企業活動においては、これは重要視されなくなり、単一品の大量生産・大量消費よりも、少量生産・多品種というものに要求度が高くなってきたようです。正確には判りませんが、マーケティング用語が氾濫するようになってきたことと何だか関連している気もします。多様なニーズを探り出し、それぞれに対応することを企業にもたらした、とも言えるかもしれません。
もう一つの「範囲の経済」ですが、別々の業種として個々に生産するよりも、同じ企業にまとめて生産した方が有利である、ということです。よく使われる例としては、鉄道事業で客車と貨車を別々の企業が独立した事業として行うよりも、同じ投資をするのだから、両方の事業を一緒に行った方が有利である、というのは確かに分かり易いですね。預金という投資を扱う銀行が、投資信託を販売出来るようになったことも同じく「範囲の経済」の理屈が働いていると言えます。現代はそういった「範囲の経済」と言う観点から、「ワンストップ・チャネル」のような言葉で代表されるような企業戦略が主流となってきているのかもしれません。大袈裟な例えで言えば、昔はある酒屋に行くと「ワンカップ」だけ大量販売していて、ビールやワインを買おうとすると、別な「ビール専門酒屋」や「ワイン専門酒屋」に行かないと揃えられなかったが、現代は多様な要望に応える為に一軒の酒屋に「ワンカップ」「ビール」「ワイン」がそれぞれ少量ずつ用意されている、ということでしょうか。
企業の多様性というのは、所謂多角化であり、金融部門は確かにそういう流れの中で規制緩和なども行われてきました。なので、銀行・証券・保険などが、ボーダレスになりつつあるともいえます。政策金融の組織論として、国際協力という業務をどう考えていくか、果たして「一つの組織論」の中で有機的とか組織活性化とかそういった視点でも意味があるか、ということでもあります。
素案の中では、国際協力銀行を外務省から切り離して専門の庁を官邸に置くとか、存続機関の内部に一部門として置くとか、あとは従来に近い形で単独で存続させるか、ということが議論に上がっていた訳です。
で、先日行われた諮問会議(第26回議事要旨)には麻生親分も呼ばれていて、平ちゃんにもズバッと言ったわけです。さすが親分。諮問会議の中では麻生親分はパンチ力があり(いわゆるハードパンチャー?ですか、笑)、前からそうだが「言うべきことは言う」というのが変わっていません。
なるほど、外務省から切り離しても「屋上屋」ともなりかねないということ、そして、国際協力という分野は純粋な「金融」という意味合いではない面もあり、当然の如く国策としての意味(外交政策)が優先される為に、そのような分野に「民間金融」という枠組みだけで果たして対応できるのか、というようなことを言いたいのでしょう(大雑把に言えばそういう主旨)。
これについては、民間議員からも幾つか意見があって、奥田さんは「新エネルギーや国際競争力といった機能をどのように考えるかということは、(中略)、もう少し深堀りする必要があると思っている」と述べた。これは、(例のロシアの件みたいな)「民間主体」の海外協力=民間外交の一分野も担っており、単純な金融という理屈からだけでは片付けられない側面もある、ということを言いたいのだろうと思います。吉川先生も国際協力という分野は、「「範囲の経済」が働くとは余り考えられない、(基本的には1機関に賛成だが)ただ機能ということを重視してもう少し詰めた方がいい」との考えを示しました。ウシオさんは、「妙な組織を作って屋上屋を重ねるのは非常に使い勝手が悪い、ということ。(中略)国際協力銀行に関しては特殊な使命を持っており、十分慎重にやりたいと思っている。」と揃って麻生親分に近い認識を示しました。
これらに対して、先般より民間議員や谷垣くんをちょっと厳しい感じで非難していた平ちゃんは、やや不満というか、同じことを蒸し返すような感じで発言していたように思えました(実は知らなかったのですが、平ちゃんは政策投資銀行の所属だったことがあったんですね。ご自身でも触れてましたが。これが過去の遺恨とかっていうことでもないと思いますが、最近やけに「財務省及び財政審」関連一派に絡んでますな。何がどうしちゃったのかは判りませんけれども)。部分的になってしまいますが、かいつまんで言うと「民間議員からA案だが留保条件という議論はよくわからない。私自身金融機関で働いた者として、金融の機能として中小融資と国際融資にはやはりエコノミー・オブ・スコープが働くと思う。だからこそ東京三菱も三井住友も百万円の個人融資と国際融資を分けていないこれが金融世界の常識であると思う。」と述べました。
平ちゃんの実感としてはそうなのかもしれませんが、慎重論が多い中(吉川先生ばかりでなく、奥田さんやウシオさんまでがそう言っている)、何故そこまでして突っかかる必要があったのか理解出来なかった。麻生親分(前回までの議論経過で平ちゃんに手厳しく追撃された谷垣くんを擁護する感じだった)や谷垣くん(=谷垣・与謝野連合、つまりは財政一派)に含むところがあったにせよ、この議論の中身は民間議員達から出た意見というのはまっとうだと思うけど。勿論組織論としてどうか、ということについては奥田さんの言うとおり、「深掘り」するべきなんだろうと思いますけれども、吉川先生が「範囲の経済はあんまり働かないんじゃないか」と言ったことに対してまでも、(自らの経験則として)働くと思う、と主張したところで大して意味はないと思うんだけどな。
で、学術的にはどういった評価なのかというと、金融機関の合併・統合という点で、欧米の実証研究などではBerger、Demsetzらの幾つか報告があるようですけれども、それらによればどうやら「範囲の経済」は働かない、とするのが結論のようです(私の誤った解釈かもしれませんけれども)。国内研究においても、コスト削減ということは明確に観察されず、シナジー効果による収益力向上ということがあるようで、「範囲の経済」は必ずしも働かないと考えられているかもしれません(これらについては別な記事に書いてみます。ちょっと前にWBSでも取り上げられた流行の「ダイバーシティ」と絡んでるし)。
そういう流れでしたので、前回に続いて今回も「民間議員の方々がどうしてそんな議論を・・・」みたいなスタンスで平ちゃんに言われたので、本間先生もちょっとブスっとして(額の右側辺りにドイツ空軍マークが浮き出ていたかもしれません、笑、勿論冗談です)、「我々と竹中大臣はどこが違うと考えてるのか。私はそれ程違うところはないと思うが」と返しました。すると、平ちゃんは「例えばガバナンスをどうするか、というのは、組織の切り分けの前にあるべき議論で、それを書いて欲しい」と。郵貯銀行と同じで、商工中金や政策投資銀も銀行法適用の民営化にしろよ、と。俺なら「委員会設置会社」にするぞ、それが民営化だろ(政府関与は無くせ)、と。だからそう書いておけよ、と。言いたいことは判りますが、それでも意見の多数派なのは国際協力分野は難しい面も確かにある、という認識の相互確認ですので、そんなに拘らなくとも・・・と思います。
そのやり取りの後で、はっきりと麻生親分vs平ちゃんの構図が出ました。久々の対決でしたので、何だか盛り上がりました(って、私だけ?)。やや堪え気味だった(諮問会議の臨時議員なので)麻生親分が遂にカウンターパンチを繰り出したって感じでした。吉川先生もいいこと言うんですよ、たまには。これがですね、次のようなやり取りでした。
麻生「A案が良いという話の中で、大銀行もそうだったという説があったが、だから大銀行はダメだったのではないか」
竹中「大銀行にも良い所と悪い所がある」
麻生「忘れないで欲しい。政府としては、大銀行を救う為にいくら金を突っ込んだか」
吉川「(先に述べたインターナショナルのところに関して)範囲の経済があるかどうか、これも一つの問題だが、それと同時に、国際競争力等で多くの人が指摘するのは、純粋な金融機能と同時に、いわゆる国旗、ナショナル・フラッグが付くことが重要だということ。そうした機能がこういう形で大丈夫なのかどうかが、もう一つの判断材料だと思う。その点について、はっきりとした考えを私個人は特に持ってない。ただ最後に詰めて行く時に、金融とは独立に「国旗の機能」というものについて考える必要がある。」
このように、麻生親分の痛烈パンチが入った訳ですが、更に続けて吉川先生が述べた「国旗の機能」というのは重要な視点だと思いましたね(関係ないんですけれども、頭の良い人達はどうしてカタカナ・英語で言いたがるのかな?私は語学は苦手ですから使いませんが、福井総裁は「範囲の経済」と言わずに「エコノミー・オブ・スコープ」、吉川先生は「いわゆる国旗、(つまり)ナショナル・フラッグ」と敢えて言い換えました。これはイラク派遣問題の時の「show the flag」の件以降、意図的に「フラッグ」という風に使われてるかもしれません。オリンピックの時のfor the flag のように)。国際関係の中では重要視されて然るべきだろうと思いました。これを吉川先生が指摘した、というところが意外性があって良かった。確かに「範囲の経済」如きで平ちゃんと論争してもしょうがない訳で、福井総裁の元々の意図というのも、単に寄せ集めという組織論=一つにする、というだけでは意味がなく、付加価値アップや組織活性化も重要だよ、ということを示していると思われ、エコノミー・オブ・スコープが効くと思われる分野(個人・零細・中小企業、農林漁業のような分野)こそ意味があるのではないか、ということを指摘していたんだろうと思います。確かにおっしゃる通りですね。
なので、平ちゃんは今回の諮問会議では、ちょっとションボリ、って感じだったと思いますね(だから、堪えてね、って言ったのに。熱闘!官業金融~第4R(追加版))。年長の奥田さんから見ても、「ちょっと大人気ないな」って思ったことだろう。前にも「擬似民営化ってのは、国民からは判り難いよ」とやや諭すように(要は、ひとさまの書いたペーパーの細かい文言ばかりに注文付けるな、自分のも同じように突っ込まれるんだよ、もっと広い視野で本質を見てごらん、というような感覚でしょうかねえ?奥田さん。こんなことは全く言ってないのですけれども、そういう意図が込められてるのかな?と推測)話しておいたんですけれども、今回も同じように(しつこく)「蒸し返し」だったので、「子供だな~」って。瑣末なことに目が曇るというのは、いただけないと思うな。今回のオマケとしては、「財務省がまず範を垂れて、積んでる金をちゃんと出せ」と「内閣府は(増税等のインパクトを勘案した)マクロ経済分析しとけ」ということでした。これは(臨時議員の麻生親分が退席した後でもあるし)、「財務省」「内閣府」を責めたんですけれども、つまりは・・・「谷垣・与謝野連合」に詰め寄ったということなんだろうと思います。
因みに、積んでる金を出せ、って突っ込まれた途端に、財務省は12兆円の国債買入償却を決定しました。多分この影響が大だったでしょうね(と勝手に推測)。随分と早いじゃねーか、財務省(笑)。
でもまあ、麻生親分はやっぱり強い。平ちゃんの天敵とも言える存在かもしれない、やっぱり。当たり前だが、外務省に口出しさせず。麻生親分は総務省をよく知ってるけど、余計な口出さず。偉い。麻生親分。でも、平ちゃんは(古巣の)内閣府に「マクロ分析しとけ」と言ってしまった。これは器の違いなのかもしれない。むしろ基地問題の為に、地方に出向いて話をするあたりは、「中々やるな」と思いますよ。麻生親分は地方の立場を守る方向でやってきたから、地方団体も頼りにしていたフシがある。つまりは、恩義を感じる方達が結構地方側にいる、ってことだ。その麻生親分に「(地域の説得を)ひとつ、宜しく頼む。外務省として、米側に地方の要求に配慮してもらえるように最大限努力するし、外務省から(2+2のペアである)防衛庁にも一筆入れておくから。(基地周辺に関する)地方の要望も必ず防衛庁に通させるように言っとくから」とか頼まれれば、総務省時代の経緯もあるから断りにくい、ってこともある。この問題を大きくまとめれば、それは政治力を示す絶好の機会となるだろう。そうか、この手があったんですね。防衛庁と総務省が出し抜かれては、立場なし。かな?
沖縄の地域の声としては、やっぱり「持ってきて欲しくないもの(基地)は持ってきて、残して欲しいってもの(沖縄公庫)は無くそうとする」という辛辣な意見が出された、って小池大臣が言ってたね。これも当たり前って言えば、そうだよね。だから、取引材料(国と地方の大断層6)として恐らく使えるんですから、地方側への提案として提示する価値はあると思うけど。
議事要旨の公開が昨日だったらしく、今日見たんだけれども、本日既に諮問会議が行われてしまって、ネタが古くなってるじゃないか。もうちょっと議事要旨の早期公開が望まれます。読むのが間に合いません(笑)。
本日の諮問会議の話は後で確認してみたいと思います。
第25回議事要旨
「政府の金融として残す部分の機能論については、エコノミー・オブ・スケールという視点はあまりなく、エコノミー・オブ・スコープを考えていくのではないか。いろいろな機能をまとめていく場合、機能が有機的に結びついて付加価値が高まるようにすることが大事。単に寄せ集めることだけを考えると、エコノミー・オブ・スコープに欠けるリスクもある。機能論の延長線上としてまとめていくことにより(筆者注:「まとめていくことより」かな?と思いましたが、公開原文通りとしてます)、組織が活性化するまとめ方がいいのではないか。」
ご指摘の論点はやはり大切だと思われ、大変勉強になります。流石は日銀総裁でございます。本当です。揶揄とかではなく。私のような無知無能の人間には知らないことを、いくつかの言葉で教授してくれるのです。そういう材料を与えてもらえることも有意義です。
話を戻しますが、「エコノミー・オブ・スケール」と「~・スコープ」という言葉ですけれども、これは何かと申しますと、簡単に言えば「規模の経済」と「範囲の経済」ということだそうです。概略を申しますと、「規模の経済」とは、弱小企業などがバラバラに生産するよりも大きな企業が一つでドーンと生産した方がトータルのコストが軽減される、というものです。昔からある、大量生産によってコスト低減を達成できる、というものですね。近年の企業活動においては、これは重要視されなくなり、単一品の大量生産・大量消費よりも、少量生産・多品種というものに要求度が高くなってきたようです。正確には判りませんが、マーケティング用語が氾濫するようになってきたことと何だか関連している気もします。多様なニーズを探り出し、それぞれに対応することを企業にもたらした、とも言えるかもしれません。
もう一つの「範囲の経済」ですが、別々の業種として個々に生産するよりも、同じ企業にまとめて生産した方が有利である、ということです。よく使われる例としては、鉄道事業で客車と貨車を別々の企業が独立した事業として行うよりも、同じ投資をするのだから、両方の事業を一緒に行った方が有利である、というのは確かに分かり易いですね。預金という投資を扱う銀行が、投資信託を販売出来るようになったことも同じく「範囲の経済」の理屈が働いていると言えます。現代はそういった「範囲の経済」と言う観点から、「ワンストップ・チャネル」のような言葉で代表されるような企業戦略が主流となってきているのかもしれません。大袈裟な例えで言えば、昔はある酒屋に行くと「ワンカップ」だけ大量販売していて、ビールやワインを買おうとすると、別な「ビール専門酒屋」や「ワイン専門酒屋」に行かないと揃えられなかったが、現代は多様な要望に応える為に一軒の酒屋に「ワンカップ」「ビール」「ワイン」がそれぞれ少量ずつ用意されている、ということでしょうか。
企業の多様性というのは、所謂多角化であり、金融部門は確かにそういう流れの中で規制緩和なども行われてきました。なので、銀行・証券・保険などが、ボーダレスになりつつあるともいえます。政策金融の組織論として、国際協力という業務をどう考えていくか、果たして「一つの組織論」の中で有機的とか組織活性化とかそういった視点でも意味があるか、ということでもあります。
素案の中では、国際協力銀行を外務省から切り離して専門の庁を官邸に置くとか、存続機関の内部に一部門として置くとか、あとは従来に近い形で単独で存続させるか、ということが議論に上がっていた訳です。
で、先日行われた諮問会議(第26回議事要旨)には麻生親分も呼ばれていて、平ちゃんにもズバッと言ったわけです。さすが親分。諮問会議の中では麻生親分はパンチ力があり(いわゆるハードパンチャー?ですか、笑)、前からそうだが「言うべきことは言う」というのが変わっていません。
なるほど、外務省から切り離しても「屋上屋」ともなりかねないということ、そして、国際協力という分野は純粋な「金融」という意味合いではない面もあり、当然の如く国策としての意味(外交政策)が優先される為に、そのような分野に「民間金融」という枠組みだけで果たして対応できるのか、というようなことを言いたいのでしょう(大雑把に言えばそういう主旨)。
これについては、民間議員からも幾つか意見があって、奥田さんは「新エネルギーや国際競争力といった機能をどのように考えるかということは、(中略)、もう少し深堀りする必要があると思っている」と述べた。これは、(例のロシアの件みたいな)「民間主体」の海外協力=民間外交の一分野も担っており、単純な金融という理屈からだけでは片付けられない側面もある、ということを言いたいのだろうと思います。吉川先生も国際協力という分野は、「「範囲の経済」が働くとは余り考えられない、(基本的には1機関に賛成だが)ただ機能ということを重視してもう少し詰めた方がいい」との考えを示しました。ウシオさんは、「妙な組織を作って屋上屋を重ねるのは非常に使い勝手が悪い、ということ。(中略)国際協力銀行に関しては特殊な使命を持っており、十分慎重にやりたいと思っている。」と揃って麻生親分に近い認識を示しました。
これらに対して、先般より民間議員や谷垣くんをちょっと厳しい感じで非難していた平ちゃんは、やや不満というか、同じことを蒸し返すような感じで発言していたように思えました(実は知らなかったのですが、平ちゃんは政策投資銀行の所属だったことがあったんですね。ご自身でも触れてましたが。これが過去の遺恨とかっていうことでもないと思いますが、最近やけに「財務省及び財政審」関連一派に絡んでますな。何がどうしちゃったのかは判りませんけれども)。部分的になってしまいますが、かいつまんで言うと「民間議員からA案だが留保条件という議論はよくわからない。私自身金融機関で働いた者として、金融の機能として中小融資と国際融資にはやはりエコノミー・オブ・スコープが働くと思う。だからこそ東京三菱も三井住友も百万円の個人融資と国際融資を分けていないこれが金融世界の常識であると思う。」と述べました。
平ちゃんの実感としてはそうなのかもしれませんが、慎重論が多い中(吉川先生ばかりでなく、奥田さんやウシオさんまでがそう言っている)、何故そこまでして突っかかる必要があったのか理解出来なかった。麻生親分(前回までの議論経過で平ちゃんに手厳しく追撃された谷垣くんを擁護する感じだった)や谷垣くん(=谷垣・与謝野連合、つまりは財政一派)に含むところがあったにせよ、この議論の中身は民間議員達から出た意見というのはまっとうだと思うけど。勿論組織論としてどうか、ということについては奥田さんの言うとおり、「深掘り」するべきなんだろうと思いますけれども、吉川先生が「範囲の経済はあんまり働かないんじゃないか」と言ったことに対してまでも、(自らの経験則として)働くと思う、と主張したところで大して意味はないと思うんだけどな。
で、学術的にはどういった評価なのかというと、金融機関の合併・統合という点で、欧米の実証研究などではBerger、Demsetzらの幾つか報告があるようですけれども、それらによればどうやら「範囲の経済」は働かない、とするのが結論のようです(私の誤った解釈かもしれませんけれども)。国内研究においても、コスト削減ということは明確に観察されず、シナジー効果による収益力向上ということがあるようで、「範囲の経済」は必ずしも働かないと考えられているかもしれません(これらについては別な記事に書いてみます。ちょっと前にWBSでも取り上げられた流行の「ダイバーシティ」と絡んでるし)。
そういう流れでしたので、前回に続いて今回も「民間議員の方々がどうしてそんな議論を・・・」みたいなスタンスで平ちゃんに言われたので、本間先生もちょっとブスっとして(額の右側辺りにドイツ空軍マークが浮き出ていたかもしれません、笑、勿論冗談です)、「我々と竹中大臣はどこが違うと考えてるのか。私はそれ程違うところはないと思うが」と返しました。すると、平ちゃんは「例えばガバナンスをどうするか、というのは、組織の切り分けの前にあるべき議論で、それを書いて欲しい」と。郵貯銀行と同じで、商工中金や政策投資銀も銀行法適用の民営化にしろよ、と。俺なら「委員会設置会社」にするぞ、それが民営化だろ(政府関与は無くせ)、と。だからそう書いておけよ、と。言いたいことは判りますが、それでも意見の多数派なのは国際協力分野は難しい面も確かにある、という認識の相互確認ですので、そんなに拘らなくとも・・・と思います。
そのやり取りの後で、はっきりと麻生親分vs平ちゃんの構図が出ました。久々の対決でしたので、何だか盛り上がりました(って、私だけ?)。やや堪え気味だった(諮問会議の臨時議員なので)麻生親分が遂にカウンターパンチを繰り出したって感じでした。吉川先生もいいこと言うんですよ、たまには。これがですね、次のようなやり取りでした。
麻生「A案が良いという話の中で、大銀行もそうだったという説があったが、だから大銀行はダメだったのではないか」
竹中「大銀行にも良い所と悪い所がある」
麻生「忘れないで欲しい。政府としては、大銀行を救う為にいくら金を突っ込んだか」
吉川「(先に述べたインターナショナルのところに関して)範囲の経済があるかどうか、これも一つの問題だが、それと同時に、国際競争力等で多くの人が指摘するのは、純粋な金融機能と同時に、いわゆる国旗、ナショナル・フラッグが付くことが重要だということ。そうした機能がこういう形で大丈夫なのかどうかが、もう一つの判断材料だと思う。その点について、はっきりとした考えを私個人は特に持ってない。ただ最後に詰めて行く時に、金融とは独立に「国旗の機能」というものについて考える必要がある。」
このように、麻生親分の痛烈パンチが入った訳ですが、更に続けて吉川先生が述べた「国旗の機能」というのは重要な視点だと思いましたね(関係ないんですけれども、頭の良い人達はどうしてカタカナ・英語で言いたがるのかな?私は語学は苦手ですから使いませんが、福井総裁は「範囲の経済」と言わずに「エコノミー・オブ・スコープ」、吉川先生は「いわゆる国旗、(つまり)ナショナル・フラッグ」と敢えて言い換えました。これはイラク派遣問題の時の「show the flag」の件以降、意図的に「フラッグ」という風に使われてるかもしれません。オリンピックの時のfor the flag のように)。国際関係の中では重要視されて然るべきだろうと思いました。これを吉川先生が指摘した、というところが意外性があって良かった。確かに「範囲の経済」如きで平ちゃんと論争してもしょうがない訳で、福井総裁の元々の意図というのも、単に寄せ集めという組織論=一つにする、というだけでは意味がなく、付加価値アップや組織活性化も重要だよ、ということを示していると思われ、エコノミー・オブ・スコープが効くと思われる分野(個人・零細・中小企業、農林漁業のような分野)こそ意味があるのではないか、ということを指摘していたんだろうと思います。確かにおっしゃる通りですね。
なので、平ちゃんは今回の諮問会議では、ちょっとションボリ、って感じだったと思いますね(だから、堪えてね、って言ったのに。熱闘!官業金融~第4R(追加版))。年長の奥田さんから見ても、「ちょっと大人気ないな」って思ったことだろう。前にも「擬似民営化ってのは、国民からは判り難いよ」とやや諭すように(要は、ひとさまの書いたペーパーの細かい文言ばかりに注文付けるな、自分のも同じように突っ込まれるんだよ、もっと広い視野で本質を見てごらん、というような感覚でしょうかねえ?奥田さん。こんなことは全く言ってないのですけれども、そういう意図が込められてるのかな?と推測)話しておいたんですけれども、今回も同じように(しつこく)「蒸し返し」だったので、「子供だな~」って。瑣末なことに目が曇るというのは、いただけないと思うな。今回のオマケとしては、「財務省がまず範を垂れて、積んでる金をちゃんと出せ」と「内閣府は(増税等のインパクトを勘案した)マクロ経済分析しとけ」ということでした。これは(臨時議員の麻生親分が退席した後でもあるし)、「財務省」「内閣府」を責めたんですけれども、つまりは・・・「谷垣・与謝野連合」に詰め寄ったということなんだろうと思います。
因みに、積んでる金を出せ、って突っ込まれた途端に、財務省は12兆円の国債買入償却を決定しました。多分この影響が大だったでしょうね(と勝手に推測)。随分と早いじゃねーか、財務省(笑)。
でもまあ、麻生親分はやっぱり強い。平ちゃんの天敵とも言える存在かもしれない、やっぱり。当たり前だが、外務省に口出しさせず。麻生親分は総務省をよく知ってるけど、余計な口出さず。偉い。麻生親分。でも、平ちゃんは(古巣の)内閣府に「マクロ分析しとけ」と言ってしまった。これは器の違いなのかもしれない。むしろ基地問題の為に、地方に出向いて話をするあたりは、「中々やるな」と思いますよ。麻生親分は地方の立場を守る方向でやってきたから、地方団体も頼りにしていたフシがある。つまりは、恩義を感じる方達が結構地方側にいる、ってことだ。その麻生親分に「(地域の説得を)ひとつ、宜しく頼む。外務省として、米側に地方の要求に配慮してもらえるように最大限努力するし、外務省から(2+2のペアである)防衛庁にも一筆入れておくから。(基地周辺に関する)地方の要望も必ず防衛庁に通させるように言っとくから」とか頼まれれば、総務省時代の経緯もあるから断りにくい、ってこともある。この問題を大きくまとめれば、それは政治力を示す絶好の機会となるだろう。そうか、この手があったんですね。防衛庁と総務省が出し抜かれては、立場なし。かな?
沖縄の地域の声としては、やっぱり「持ってきて欲しくないもの(基地)は持ってきて、残して欲しいってもの(沖縄公庫)は無くそうとする」という辛辣な意見が出された、って小池大臣が言ってたね。これも当たり前って言えば、そうだよね。だから、取引材料(国と地方の大断層6)として恐らく使えるんですから、地方側への提案として提示する価値はあると思うけど。
議事要旨の公開が昨日だったらしく、今日見たんだけれども、本日既に諮問会議が行われてしまって、ネタが古くなってるじゃないか。もうちょっと議事要旨の早期公開が望まれます。読むのが間に合いません(笑)。
本日の諮問会議の話は後で確認してみたいと思います。