彦左衛門外記 新潮社 |
歴史とは勝者、あるいは生き残った者の自伝である、とはよく聞く言い回しですし、それが史実とは限らない、との認識を持ちつつも、その歴史に染まっているのが現実です。
この作品では豪放磊落、天下の御意見番として名高い大久保彦左衛門の虚実、を描いています。
しかしそれは歴史的な資料を基に紐解いているわけではなく長屋もののようなコミカルなタッチで描かれており、いわゆる彦左衛門を否定しているわけではありません。
歴史小説、ではなく時代小説、と捉えれば、これはこれで面白いのではないかと思います。
ただ自分の中の山本周五郎は歴史小説の大家、のイメージが強かっただけに、裏切られた気持ちがしないでもありません。
おそらく主人公として取り上げられている作品は多くないであろう彦左衛門ですから、かなりな期待をしていました。
しかもその主人公ですらなく、遠縁にあたる貧乏旗本の三男坊の講談ばりの大活躍、といったストーリーになっています。
一心太助の亜流、と考えればよいのかもしれず、しかし自分には合わなかったかなと、今後は内容紹介をきっちりとチェックしてから買うことにします。
2014年12月19日 読破 ★★☆☆☆(2点)