電脳筆写『 心超臨界 』

自然は前進と発展において留まるところを知らず
怠惰なものたちすべてにののしりを発する
( ゲーテ )

不都合な真実 《 蒋介石がチャーチルに対して送った電報——保坂正康 》

2024-06-21 | 04-歴史・文化・社会
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蒋介石は「中国を侵略中の日本軍の撤退問題について根本的解決がなされる前に、アメリカの対日経済封鎖がいささかなりとも緩和されたり変更されるのであれば、中国の抗日戦争は必ず崩壊するであろう」と言ったあとで、その事態になって中国に支援したとしても「人道上の道徳」といったような表現は意味をなさなくなると断じたのだ。


◆蒋介石がチャーチルに対して送った電報

『蒋介石』
( 保坂正康、文藝春秋 (1999/04)、p209 )

1941年11月21日、日米交渉は最終段階を迎え、ハルは日本に突きつける回答文案(のちのハルノート)を胡適に示した。これを日本に示すと近い将来に日本軍は軍事行動を起こすことになろうとにおわせた、この案についての本国の意向を打診せよと迫った。この案には、正直なところ中国についてはまったくといっていいほどふれられてなく、胡適も宋子文も失望のあまりうなだれるほどの内容であった。胡敵と宋子文がワシントンから蒋介石にあてて打った電報は、黄仁宇の『蒋介石』によるなら、「アメリカは日本に対しヴェトナムにおける駐兵を認め、さらにはサイゴン付近の日本軍を雲南との境界に移動させる提議を行っていた。そして日本との通商関係を再開し、その範囲は戦略物資にまで及ぼうとしていた」というのである。蒋介石は言葉を失い、憤怒と苦悩のどん底にいちどに追いやられた。

しかし、蒋介石はすぐに反撃にでた。胡適と宋子文はそれぞれ手分けしてアメリカ政府の要人と会い、中国の意向を盛り込むよう説得した。宋美齢はアメリカ政府の要人に個別に電話をいれ、日本を増長させないでほしいと訴えた。だがこうした動きのなかでもっとも大きな役割を果たしたのは、蒋介石がチャーチルに対して送った長文の電報であった。蒋介石は懇願と開き直りをくり返したのだ。

蒋介石は「中国を侵略中の日本軍の撤退問題について根本的解決がなされる前に、アメリカの対日経済封鎖がいささかなりとも緩和されたり変更されるのであれば、中国の抗日戦争は必ず崩壊するであろう」と言ったあとで、その事態になって中国に支援したとしても「人道上の道徳」といったような表現は意味をなさなくなると断じたのだ。この電報にチャーチルはとびつき、日本に対して強硬姿勢をとるべきという自らの論を伝えるのに蒋介石の言を利用して、われわれにとって重要なのは蒋介石であり、彼の崩壊を防ぐのが共通の利益だとルーズベルトに緊急に連絡したのである。

こうしてハルノートには「日本の中国からの撤兵」や「汪兆銘政府の否認」といった条項がそれぞれ第3項、第4項に盛り込まれた。日本にとっては三国同盟離脱要求とともに受けいれられないとして、戦争への道を歩むことになった条項である。ハルは日本の駐米大使野村吉三郎にこの覚書を渡すとき、「われわれとしては中国を見殺しにするなという世論を受けいれてこれをまとめた」と伝えたが、その言の裏には蒋介石の外交戦略が勝利を得たという歴史的事実が隠されていた。

このハルノートの内容を改めて胡適からの電報によって知った蒋介石は、その日の日記(11月28日)に、「アメリカの強硬な対日姿勢への変化は、自分の断固とした態度と決心によりもたらされたものである」と書いた。自らの勝利を自覚したのである。
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