孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エリトリア  毎月50000人前後が、命懸けで地中海を渡るなどして国外逃亡を図る国

2015-06-15 22:12:48 | アフリカ

(エリトリア第2の都市Kerenの市場 “flickr”より By Gordon Edgar https://www.flickr.com/photos/12a_kingmoor_klickr/15878974020/in/photolist-qcaTL9-qrdvYX-qttCZK-sVjEDo-sVvS4q-pY1qox-r1hxcu-pwp2pM-qc67Ws-qHMUUC-r1df9t-qkUhw4-qxLmBF-r1mEoZ-qHMUqU-qHLKr1-sLz47c-sLt8bW-t43TFi-qCnf74-q4xcM8-qjEKYL-qJc6K7-t41AnD-pqMGTj-sCQWS5-t453V2-qkf4rx-qk7ag7-qub2hC-qrVR6n-qbVbuY-q4kUxm-qCkuTp-qY3gFy-pvayZp-pPGJ4r-pTrtnP-qHU8Gv-qsxUgc-qKzxDR-sCNWaW-t3XrHF-t3ZYia-qzhBbV-pNzk75-qMy7ow-quXvB1-qkZz6L-qiRToD)

内戦国シリアに次ぐ欧州への“難民供給国”】
エリトリア・・・・正直なところ、日本にはあまり馴染みがない国です。国名を聞いて、地図上の場所がわかる人はそんなに多くないのでは。バルト3国のエストニアと誤解する人も。

“アフリカの角とよばれるアフリカの北東部にある国である。
西にスーダン、南にエチオピア、南東部にジブチと国境を接し、北は紅海に面する。1991年5月29日にエチオピアからの独立を宣言し、1993年5月24日に独立が承認された。首都はアスマラ。”【ウィキペディア】

エチオピアの紅海側をふさぐような形で、独立に至る経緯からエチオピアとは国境紛争を抱えている国です。

馴染みのないエリトリアですが、最近問題となっているアフリカからイタリアなど欧州を目指す難民船問題では非常によく目にする国です。

また、ソマリア難民が問題となっていた頃(今も問題であることには変わりないのでしょうが)にも、よく目にしました。

昨日のリビア関連を取り上げたブログでも登場しています。

****イスラム国」、エリトリア難民88人をリビアで拘束 キリスト教徒も****
キリスト教徒を含むエリトリア難民88人が、女性や子どもも含め、北アフリカのリビアで過激派組織「イスラム国」(IS)によって拘束されている。

ISは、4月にリビアでエチオピア人キリスト教徒28人を殺害する映像を公開していおり、それからまだ2カ月もたっていない中で、再びISによる誘拐が発生した。

スウェーデンの首都ストックホルムに拠点を置く「エリトリア難民に関する国際委員会」(ICER)が7日に明らかにしたところによると、この事件は6月上旬に発生。ISの戦闘員が、リビアの首都トリポリへ向かう難民を乗せた車両を待ち伏せしていたという。(後略)【6月13日 CHRISTIAN TODAY】
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なお、難民にとってリビアはあまりに危険になったため、最近はトルコやエジプトからギリシャ・イタリアを目指すルートに変わりつつあるとか。

急増しているEU域内への不法越境者を国別にみると、2014年(28万人)では、1番目がシリア(7万9169人)、2番目がエリトリア(3万4586人)、その次はサブサハラ諸国(2万6341人)アフガニスタン(2万2132人)コソボ(2万2069人)ということで、エリトリアが異様な“難民供給国”であることがわかります。

****EU、加盟国に難民4万人の受け入れを要請****
欧州連合(EU)は27日、加盟各国に対し、シリアとエリトリアからイタリアとギリシャに上陸する4万人の難民を分担して受け入れるよう要請した。

この緊急提案は、危険を冒して地中海を渡り押し寄せる難民が急増している問題に対応するためのもの。EUはこれとは別に、約2万人のシリア難民を加盟各国に再定住させる提案も行っている。

イタリアとギリシャの両政府は、押し寄せる難民への対応に苦慮しており、他のEU加盟26か国に負担の分担を訴えてきた。

ディミトリス・アブラモプロスEU移民担当委員の記者会見によると、今回の提案内容は、4月15日以降にイタリアとギリシャに到着したシリア人とエリトリア人の難民4万人を、2年以内に他のEU諸国に移住させるというもの。

移住先は国民総生産(GNP)、人口、失業者数、国内で登録済みの難民申請数の4基準に応じて配分される。受入れ国には、難民申請者1人当たり6000ユーロ(約80万円)が支給されるという。

ただし、EU当局者によると、現行のEU条約により、英国、アイルランド、デンマークは移住・再定住の受け入れ国の対象にはならない。【5月28日 AFP】
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シリアとエリトリアが2大難民供給国ですから、こういう話も出るのでしょうが、シリアとエリトリア以外の難民がどういう扱いになるのかは知りません。

【「法ではなく恐怖が支配する国」】
いずれにしても、なぜこんなに難民が多いのかが問題となります。
シリアは内戦ですからわかりますが、エリトリアは?

****恐怖が支配」、エリトリアで重大な人権侵害 国連調査****
「法ではなく恐怖が支配する国」――。

アフリカ北東部エリトリアの人権状況を調べていた国連の調査委員会がこのほど、同国政府による重大な人権侵害を指摘する報告をまとめた。

国連は匿名の証言者500人余りを対象に聞き取り調査を実施。事実上の性奴隷制度や、裁判手続きなしで横行する処刑、強制労働などの実態を調べた。

報告書によると、エリトリアの国民は政府に人権を奪われ、日常生活のあらゆる面に干渉されて「絶え間ない不安状態」にある。

国民は政府に常時監視されて、その結果得られた情報を理由に拘束されたり、拷問を受けたりする。行方不明者や死者も後を絶たないという。

国外への渡航は厳しく制限される。一時は逃亡を図った者をその場で射殺するルールが施行されていた。国連の調査でも、一部の証言者は「標的になったことがある」と話した。

国境に近付いただけで厳しく処罰され、外国から帰国した後で拘束され、拷問を受ける人もいる。国内での移動にも旅行許可証や身分証明書が必要だ。

政府に何か質問するだけで処罰され、平和的な抗議行動も阻止される。デモ参加者が裁判なしで処刑されることもある。

政府が認定する宗教はカトリックやイスラム教スンニ派など4つだけ。ほかの宗教は02年以降すべて非合法化された。信者は法律上の人格さえ認められない。書物などが押収され、信者らが姿を消したケースも少なくないという。

国連の報告書は、「司法によって基本的人権を守れる状況ではない」「この国で公正な裁判は不可能だ」と結論付けている。

強姦や拷問によって自供を強制されたとの証言もある。理由も分からずに拘束され、そのまま行方不明になる人が多い。行方を尋ねた親族は「同じ目に遭う」と脅される。

組織的な人権侵害がこれほどの範囲と規模に及ぶ例はほとんどないと、国連は指摘する。

同国では1995年に徴兵制が敷かれ、さらに02年には18歳未満の少年少女に6カ月間の軍事訓練が義務付けられた。訓練所では性暴力が横行している。訓練以外の場でも未成年の生徒らが脅されて労働を強いられるなど、「奴隷制に近い」状況がみられる。

こうした現状から逃れようと、昨年半ばまでに35万7000人余りが国外へ脱出。現在も毎月5000人前後が、地中海を渡るなどして逃亡を図る。

この調査結果は今月、ジュネーブで開催される国連人権委員会の会合で正式に報告される。

国連はエリトリア政府に調査許可や情報を求めたが、応答は得られていない。同国の大統領報道官や外務省は、この報告を「作り話だ」などと強く批判している。【6月10日 CNN】
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エリトリアのアフェウェルキ政権については、“世界でも最も威圧的で妄想性の強い独裁政権”との評価もあります。

****国外脱出の理由****
独立運動の総司令官であったイサイアス・アフェウェルキ(59)はエリトリアの独立以降、大統領に就任し独裁政権を敷いている。アフェウェルキ氏は過去に中国に留学。毛沢東の思想や軍事知識を学んでいる。

世界でも最も威圧的で妄想性の強い独裁政権に支配されるエリトリアは、貧しい国のワースト10に入る。

国連人権理事会は2014年6月、エリトリアの人権状況の調査を決定した。これまで同様の決定が行われた国は、シリアと北朝鮮のみ。

最初の「停車駅」はエチオピア
密入国の目的地として主にエチオピアかスーダンが選ばれてきた。地理的、文化的に近いことや家族の絆が主な理由。

しかし、過去数年の間にスーダンの国境は危険度が増し、国境を越えようとするエリトリア人は強制送還されたり、拉致されてシナイ半島に住むベドウィン族に人身売買されたりする恐れが増加している。

そのため、欧州への道のりが遠くなってもエチオピアとの国境を選択する難民が多い。

一方、イスラエルがエジプトとの国境に230kmもの壁を築いて以来、イスラエルへの国境を越えるのは事実上不可能になった。そのためエリトリア人は地中海を渡るルートを頻繁に利用するようになった。

近年イタリアを目指す難民の船やボートの数は急増した。リビアの情勢が不安定なことに加え、2013年10月にイタリアが打ち出した海を渡る難民を支援する「マレノストラム作戦」もその背景にある。【2014年9月16日 スイスインフォ】
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国境を超えるのも大変ですが、エチオピアに入ってから、そしてその先も命懸けです。
そのあたりは、上記「エリトリア難民、命がけの逃亡 失う物は何もない」【2014年9月16日 スイスインフォ】http://www.swissinfo.ch/jpn/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2_%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%E9%9B%A3%E6%B0%91-%E5%91%BD%E3%81%8C%E3%81%91%E3%81%AE%E9%80%83%E4%BA%A1-%E5%A4%B1%E3%81%86%E7%89%A9%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%82%82%E3%81%AA%E3%81%84/40694210 に詳しく書かれています。

エリトリアに関しては情報が多くはありません。

“ジャーナリスト保護委員会は2012年、エリトリアを報道の自由が少ない「検閲国家ワースト10」の第1位に選んだと発表した。外国人記者の入国を認めず、報道内容から取材相手の選択まで全てを同国の情報省が仕切っていることが理由としてあげられている。

また、国境なき記者団による「世界報道自由ランキング」でも最下位にランク付けされている。そのため、「アフリカの北朝鮮」とも呼ばれる”【ウィキペディア】

「アフリカの北朝鮮」と呼ばれるような閉鎖的な国家ですから、実情は北朝鮮同様よくわからないところもあります。

エチオピアとエリトリアの関係は今も「戦争とも平和とも呼べない」緊張状態が続いているため、独裁体制の軍事国家となっているようです。

“男女を問わず全員徴兵され、また兵役期間は無期限である。軍隊の任務以外にも「ナショナルサービス」と呼ばれる勤労奉仕活動(事実上の強制労働)に従事させられる”【ウィキペディア】とも。

“兵役期間は無期限”では国民も困ります。前出記事の“02年には18歳未満の少年少女に6カ月間の軍事訓練が義務付けられた”との関係はよくわかりません。

いずれにしても、「北朝鮮のような国」と言われれば、なんとなくわかったような感じにもなります。

なお、子供の難民が多い理由として、上記徴兵制の存在があげられますが、“しかし、「兵士になる」、ということが背景にあるのは事実ですが、保護団体によると、実は親が子どもを業者に売り、ヨーロッパで金を稼がせようとしているのだと説明します。”【4月22日 “あほうどりのひとりごと” http://www.あほうどりのひとりごと.com/article/417731551.html】とも。

目的がカネであるにしても、子供を売らなければ生活できない、命がけの難民に堕さなければいけないとしたら、悲惨な状況であることに変わりありません。

【“欧米側のプロパガンダ”とする声もあるものの・・・・
なお、エリトリア側が国連報告を「作り話」だと批判しているように、人権侵害云々を欧米側のプロパガンダだとする声もあるようです。

北朝鮮でも、国内には体制を擁護する考えがありますし、体制にうまく乗れている人々はそれなりの生活を享受できていますから、エリトリアでも・・・。

エリトリアを旅行した方の旅行記を見ると、信号はあるけど使われていない、線路はあるけど鉄道は原則走っていない・・・等の状況にはあるものの、

「アフリカは40数カ国に訪問しましたが、こんなに人々が親切で、安全で、街がきれいな国は初めてです。」
「(首都)アスマラの治安は超安全。深夜でも女の子一人で平気で歩いている。っていうか、犯罪が無い。」
「進んだ電子機器やお金はないけど、豊かな文化がある。そう現地の人は私に話しました。」

と、好意的な感想が記されています。

報道の自由が少ない「検閲国家ワースト10」の第1位ですから、よくわかりません。
北朝鮮も平壌は上記のようなイメージになるのかも。

とにかく、人口560万人ほどの小国で、明確な内戦などの政治混乱でもないのに、毎月数千人が命がけで国外に逃れているというのは尋常ではありません。

「人々が親切で、安全で、街がきれいな国」で「進んだ電子機器やお金はないけど、豊かな文化がある」のであれば、そんな事態にはなっていないのではないでしょうか。
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