孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

余剰食品の有効活用  デフォルトの瀬戸際にあるギリシャ、食品廃棄禁止法が成立したフランスの取組

2015-06-20 22:25:02 | 欧州情勢

(首都パリ郊外クールブボワ市で食品の無料配給に加わる同市議員のアラシュ・デランバーシュ氏(右から2人目)【6月9日 AFP】)

22日のユーロ圏首脳会議が“最後のチャンス”】
ギリシャについては、妥協点が見いだせないまま時間だけが経過しています。

電気料金などへの付加価値税の増税や、低額年金受給者への補助金の廃止など、やるべき改革を行って財政状況を立て直さない限り、これ以上の融資はできない・・・・とするEU側。

万一、ギリシャのデフォルトやユーロ離脱となっても、その影響は制御可能な範囲内だとの思いもあるようです。
また、ギリシャに“甘い顔”をすれば、ほかの国でも同じような問題が起きるとの懸念もあります。

****<ドイツ>与党副院内総務「ギリシャに成長の具体策はない*****
我々が求めているのは、財政黒字を確実に達成できる改革案だ。ギリシャがそうした改革案を提出すれば(支援策の)協議に応じられるが、現状の提案には成長のための具体策はない。

誰もギリシャの破綻を望んではいないが、EU加盟国に新政権が誕生する度に前政権との合意が見直されるようなことはあってはならない。

結果的に交渉が決裂したとしても不安はない。(ギリシャのユーロ離脱など)あらゆる事態に準備はできている。(債務危機が発生した)5年前と違い、欧州安定化メカニズムなどの安全網を整備してきた。ギリシャが債務不履行に陥ったとしても、ほかのユーロ圏の国に影響が生じるとは考えにくくなった。

それよりもギリシャと安易な妥協を結ぶことで、他の国が財政規律を守らなくても良いと考える「ドミノ効果」が問題だ。財政危機に陥ったポルトガルやキプロスなどは厳しい緊縮策を受け入れ、経済回復している。

チプラス政権は「有権者の要望を実現する必要がある」と言うが、それは我々も同じだ。【6月18日 毎日】

一方、これまでも言われるようにやってきた。その結果が今の状況だ。これ以上の緊縮策はできない。ギリシャはEUの植民地ではない。とにかく追加融資してもらわないと返済ができない。それでいいのか?・・・というギリシャ。

****EUギリシャ交渉、年金巡る対立続く 債務返済期限迫る****
・・・・元庭師のミハリス・ハミロソリスさん(76)は、スーパーより割安な市場に妻と足しげく通う。月1300ユーロだった年金は3年前の緊縮策でカットされ、1千ユーロに減った。

失業中の息子と孫2人を含む家族5人の暮らしは年金が頼りだ。ハミロソリスさんは「EUは我々からパンを奪おうとしている」と話す。

ギリシャでは2010年に比べ、1人あたりの平均年金受給額は4~5割減らされた。12年には、基礎的な年金に上乗せされる「補助年金」(平均月額168ユーロ)の基金の黒字化を義務づけられた。緊縮策を続ければ3年後には基金が底をつき、補助年金がほとんどなくなるとみられている。

そのため、ギリシャは基金黒字化の義務づけを廃止するよう求めているが、EU側は財政再建が遅れかねないとして拒んでいる。(後略)【6月12日 朝日】
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チプラス首相は、EU側の付加価値税引き上げや年金削減などを求める提案に「不愉快で驚いた」「ばかげた提案には合意できない」と反発。

EU側をけん制するかのようにロシアを訪問し、EUの圧力を受けた天然ガスパイプライン「サウスストリーム」計画中止に伴う新たな「トルコストリーム」計画を推進する立場でプーチン大統領と一致した首相は、「EUは傲慢になるべきでない。連帯と公正な社会の原則に立ち返るべきで、緊縮財政は無意味だ」と批判を展開しています。

ギリシャ国内では、22日のユーロ圏首脳会議が“最後のチャンス”とも見られています。

EU・IMFからの支援が期限切れで打ち切りになった場合、月末のIMFへの約16億ユーロの借金返済や、欧州中央銀行向けの7月の約35億ユーロの返済ができず、債務不履行(デフォルト)が現実のものとなります。

破綻を懸念するギリシャでは、“静かな取り付け騒ぎ”とも言えるような状況も。

****<ギリシャ>預金5880億円流出 さらに加速も****
財政破綻の瀬戸際にあるギリシャで、今週だけで全預金の約3%にあたる42億ユーロ(約5880億円)が銀行から引き出されたことが19日、わかった。

欧州中央銀行(ECB)は同日、ギリシャ中銀の要請に応じ、銀行の資金繰りを支援する「緊急流動性支援(ELA)」の上限を急きょ、約18億ユーロ増額した。

欧州連合(EU)が22日開催するユーロ圏首脳会議で金融支援に合意できない場合、預金流出がさらに加速するのは確実だ。(中略)

ギリシャ中銀は19日、「金融システムの安定は中銀の行動で完全に確保されている」との声明を出し、冷静な行動を呼びかけた。

EUのトゥスク欧州理事会常任議長(大統領)は同日夕、ビデオ声明を発表し、「ギリシャが(EUの)提案を受け入れるか、債務不履行に向かうか、選択の時が近づいている。時間は数日しかない」とギリシャ政府に緊縮策の受け入れを強く求めた。

同時に「首脳会議に手品のような解決策があるとの幻想は持つべきではない」と述べ、トップ交渉による譲歩引き出しを狙うギリシャ政府をけん制した。【6月20日 毎日】
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ギリシャ 「私たちには、できる!」】
瀬戸際に追い詰められたギリシャ市民生活ですが、売れ残り食品などを貧困者へまわす、自衛の取り組みも行われているようです。

****食べ残し、貧困層を救う ギリシャ****
2011年末、ギリシャの首都アテネの貧しい人が多く住む地区で、数人のグループがパン屋で売れ残ったチーズパイ12個を、教会が運営する配給所に配った。3年半後、グループは毎日約4千人分の余剰の食べ物を国内の慈善団体に配布している。

ギリシャ語で「私たちには、できる!(Boroume)」と名付けられたこのグループは、余剰の食べ物を慈善団体に配布することを通じて、食料の有効活用に取り組むNPOだ。創設者の3人は、数十人のボランティアとともに、日々食べ物の無駄をなくすために奮闘している。

グループは昨年だけで、130万食分以上もの食べ物を有効活用し、配分量は前年比400%増だった。1食当たり約1・5ユーロ(約210円)と見積もると、全体で200万ユーロ近くになる。

創設者の一人、アレクサンドロス・セオドリディスさんは「組織を立ち上げた当初は、これほどの反応は予想していなかった。1日に数千人分もの食料を回収、分配できるとも思わなかった」と語る。

余分な食べ物を寄付するには、電話を1本かけるだけでいい。家庭の夕食や会社の催し、結婚披露宴やスーパーで残った食べ物を配給所や必要としている団体に届けられる。

11年の創設時から、グループは、全国の食料配給プログラムを地図にして、ウェブサイトで公開してきた。今では、配給所のような、食料を受け入れうる団体660以上と公的社会サービス180以上の情報がデータベース化されている。

昨年には、食べ物を無駄にしないことで貧しい家庭を支援する新たなプログラムを発表した。

そのうちの一つ、商品にならずに畑で放置される果物や野菜を有効活用するプログラムでは、昨年、各地で4トン以上を有効活用した。「我々は全国の農家と話し合い、プログラムへの理解を求めている。その際、収穫高に悪影響を与えることがないことを強調している」とセオドリディスさんは説明する。

グループは、国外に住む人々からの支援を呼び込むことにも成功している。たとえば、ギリシャ系カナダ人は、医療施設などに1トンの食料を寄付した。【6月20日 朝日】
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フランス 「始めはたった一人で走っていたが、今では大勢が私に合流している」】
余剰食品の有効活用が求められているのはギリシャだけではありません。
フランスでは売れ残り食品の活用が法律で義務付けられています。

****仏、大手スーパーに食品廃棄を禁止 寄付か転用義務付ける****
フランス議会は21日、大手スーパーマーケットに対し売れ残った食品の廃棄処分を事実上禁止する法案を全会一致で可決した。一法案をめぐって仏議会が一致団結することはまれ。

新法の下では、大手スーパーは食品廃棄防止対策を義務付けられ、売れ残った食品のうちまだ食べられるものについては慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や農業用の堆肥に転用しなければならない。また、大規模スーパーは全店が食品寄付を行っている慈善団体と契約を結ばなければならない。

フランス人1人当たりの1年間の食品廃棄量は20~30キロで、そのコストは最大で年額200億ユーロ(2兆7000億円)にも上る。仏政府は2025年までに食品廃棄量の半減を目指している。【5月22日 AFP】
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この動きを主導した人々は、フランスだけでなく欧州全土、世界に運動を広げていこうと活動しています。

****仏スーパー食品廃棄禁止法、署名運動は次に欧州へ****
食品を無駄にすることに反対する運動によって、スーパーマーケットに対し、売れ残った食品を慈善団体に寄付することを義務付ける法律の制定に導いた地方議員が、今度は欧州全土での法制化を目指して署名運動を準備している。しかも、ここで終わるつもりはない。(中略)

デランバーシュ氏の計画は、単純だ。スーパーマーケットが売れ残った食品を廃棄処分するのを止めさせ、世界の飢餓を減らす。

「そんな考えは甘い、理想主義だという声もあるかもしれない。しかし、私が提案していることは現実的だ」と同氏はAFPに語った。

■仏スーパーに食品廃棄処分禁止法
仏議会は5月、スーパーマーケットに対し、毎日ごみ箱に捨てられている大量の売れ残り食品の廃棄処分を禁止する法案を全会一致で可決した。

この法律によって、延べ床面積400平方メートルを超える店舗には、売れ残り食品の受け入れを行っている慈善団体との契約を2016年7月までに結ぶことが義務付けられ、これを行わなければ、最高7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金が科されることになった。また、人の食用に適さなくなった売れ残り食品については、家畜の餌や堆肥として転用しなければならない。

しかし、こうしたことは、デランバーシュ氏が自らの勝利と考えている法律の一部でしかない。

首都パリ郊外クールブボワ市の議員を務めるデランバーシュ氏は1月、今回の新法を要求する署名運動を署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」で開始。約21万1000人分の署名が集まり、政府の関心を引きつけた。

同氏は6月、同じ署名を欧州全土で立ち上げようとしている

■「困窮とは呼べないがぎりぎり」
食品の廃棄が当たり前となっている現状を目の当たりにしたデランバーシュ氏は、食料を必要としている多くの人々が、羞恥心や資格に相当しないという理由から、フードバンク(困窮者向けの食料配給)に行かないことを知って行動を起こした。

「困窮とは呼べない程度には稼いでいるんだ」というデランバーシュ氏によれば、フランスの労働者階級は最低1500ユーロ(約21万円)程度の月給を受け取っているが、それでやりくりするのに苦心している。

一方、デランバーシュ氏が大手スーパーチェーンを訪ね、貧困者に配るために一日の終わりに売れ残った食品をもらえないかと打診したところ、断られた。店側は「(売れ残り)食品を漂白剤に漬ける方がいい」のだという。

これは、店のごみ捨て場あさりをさせないための対策で、店側は廃棄処分した食品を食べた誰かが具合を悪くし、訴えられることを恐れているのだという。

デランバーシュ氏は別のスーパーからようやく許可をもらい、アイデアが成功したことから署名運動を思いついた。「まるで映画の『フォレスト・ガンプ』みたいに始めはたった一人で走っていたが、今では大勢が私に合流している」

売れ残り食品を慈善団体に寄付することをスーパーマーケットに義務付けている地域は、世界では他にベルギー南部しかない。

人間の食用に生産される食品の3分の1が、浪費または廃棄されているとする国連の統計を受けて、食品廃棄の取り締まりに向けた全世界の取り組みは加速している。(後略)【6月9日 AFP】
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某有名ドーナツ店で、閉店時間に大量の売れ残り商品を大きなゴミ袋にドサドサと入れ込んでいる光景を目にし、衝撃を受けた個人的な記憶があります。

【「われわれが生きている間に、飢餓という災厄の廃絶が本当に可能だ」】
先進国フランスにあっても、貧困は大きな問題となっています。

****フランスの子供は5人に1人が貧困状態****
フランスの子供の5人に1人が貧困ライン(1日1.25ドル)以下の暮らしを強いられている。・・・・そんなショッキングな統計が発表された。

仏ユニセフ協会が先週発表した報告書には衝撃的な数字が並ぶ。貧困下で暮らす子供は300万人以上、子供のホームレスは3万人、スラム同然の地域に住む子供は9000人、学校を中退する子供は毎年14万人にも上るという。

なかでも移民の子供たちの生活は「容認し難いレベル」だとして、報告書はオランド政権に対策を追っている。「報告書は、今すぐすべての子供たちのために、もっと効率的な対策を講じる必要があると警鐘を鴫らすはずだ」と、同協会のミシェル・バルザック会長は語る。

1月に発表されたEUの統計機関ユーロスタットの統計でも、フランスの子供の貧困率は21%という結果が示された。

ただ、EUの中にはもっとひどい国もある。スペインとイギリスの子供の貧困率は32.6%に上る。最下位のルーマニアに至っては48.5%の子供が貧困下で暮らしている。【6月23日号 Newsweek日本版】
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フランス、欧州ですらこういう状況ですから、世界に目を向ければ・・・・。

世界の飢餓人口は、以前に比べれば減少しており、国連は飢餓撲滅に向けた取り組みを評価しています。

問題が山積しつつも、世界経済が成長軌道にあることの結果であり、そのことは喜ばしいことです。
ただ、未だ8億人近い人々が飢餓状態にあるということでもあります。

****世界の飢餓人口、初めて8億人下回る 国連****
世界で飢餓に苦しむ人々が、国連が統計を取り始めてから初めて、8億人を下回った。国連食糧農業機関(FAO)が27日に発表した年次報告書で明らかになった。

FAOによると、世界の飢餓人口は約7億9500万人で、1990年~1992年より2億1600万人減少した。

FAOのジョゼ・グラジアノ・ダシルバ事務局長は、「ミレニアム開発目標(MDG)での飢餓削減の目標達成に近づいたことは、われわれが生きている間に、飢餓という災厄の廃絶が本当に可能だということを示している」と述べた。

報告書によると、発展途上諸国では栄養不良の割合が、25年前と比べ、人口の22.3%から12.9%へ減少した。

FAOが監視した129か国のうち72か国が、今年までに栄養不良の割合を半減させるという「ミレニアム開発目標」を達成した。発展途上地域全体としては目標達成に及ばなかったが、その差はほんのわずかだ。

食糧安全保障の改善は、世界人口が1990年以降に19億人増加し、それだけ食糧消費人口が増えたことを考えると、際立った成果だとFAOは主張している。【5月28日 AFP】
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“われわれが生きている間に、飢餓という災厄の廃絶が本当に可能”かどうかは甚だ疑問ですが、そこへ向けた取り組みを国家・市民の各レベルで行うべきでしょう。
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