孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シリア難民の大量流入に直面するトルコ  ロヒンギャ・シリア難民への日本の対応は?

2015-06-22 22:12:36 | 難民・移民

(国連が定める「世界難民の日」にあたる20日、日本に逃れてきたミャンマーの少数民族ロヒンギャの難民などが、ロヒンギャの人たちを巡る問題解決に向けた支援を求めて都内でデモ行進を行いました。【6月20日 NHK】)

EU:密航業者の取り締まりに向けた軍事作戦
“安全”“人間らしい生活”を求めて押し寄せる難民・移民への対応に苦慮する欧州各国やオーストラリアなどの動きについては、6月18日ブログ「大量に流入する難民の扱いに苦慮する欧州・アジア  押し付け合い、壁の構築、カネで業者を買収・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150618)で取り上げました。

欧州ではEUは加盟各国に対し、シリアとエリトリアからイタリアとギリシャに上陸する4万人の難民を分担して受け入れるよう要請していますが、そうした救済策だけでは新たな難民の流入を加速させることになるとの懸念から、密航業者の軍事的取締りに動き出しています。

ただ、相手国(リビア)の了解なども必要になるため、具体化はまだ先のようです。

****地中海での軍事作戦決定=密航取り締まり強化―ロシア制裁延長・EU外相理****
欧州連合(EU)の外相理事会が22日、ルクセンブルクで開かれ、既に承認している地中海での密航業者の取り締まりに向けた軍事作戦の開始を決定した。(中略)

地中海での取り締まりは、相次ぐ密航船の事故を受けた移民対策の一環。軍事作戦に関しては、密航に利用される恐れがある船を捕捉し、破壊することまでを視野に入れている。

ただ、多くの密航船が出航するリビアの領海に入って作戦を展開するためには、リビアの承諾に加え国連憲章7章に基づく国連安全保障理事会決議の採択が必要だが、まだメドが立っていない。

このため、今回軍事作戦開始が決定されても、情報収集や監視活動に限って実施する見込みだ。【6月22日 時事】 
******************

シリア難民の最大受入国トルコ 欧米はシリア難民問題を傍観しているとの不満
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は18日、世界の紛争や暴力行為、人権侵害などが原因で家を追われた人の数が、2014年末時点で過去最多の5950万人(国内難民3820万人を含む)に達したとする報告書を発表しました。

シリアとイラクにおける紛争だけで1500万人が家を追われているとのことで、2014年末時点の難民受け入れ国トップはシリア難民を受け入れるトルコ(159万人)でした。
これに、パキスタン(151万人)、レバノン(115万人)が続いています。

トルコは、エルドアン大統領の強圧的な政治姿勢、イスラム色強化などで近年は国際的評判が芳しくありません。

シリアのイスラム過激派対策でもアメリカ等への協力姿勢を明確にせず、また、国境管理が緩いためイスラム過激派のシリア流入ルートになっているということで、アメリカなどの苛立ちを買ってもいます。

問題は多々指摘されるトルコですが、トルコの側からすれば、トルコはシリア難民を可能な限り受け入れており、欧米はシリア難民問題を傍観しているとの不満があります。

国内的にも増え続けるシリア難民によって軋轢も生じているとも言われています。
経済的負担も多大なものになっています。

ただ、そのトルコも、クルド人勢力のIS支配地域への攻勢によって大量に発生した難民については、一時流入を制限する措置を取りました。

****トルコ、シリア難民入国を放水・威嚇射撃で阻止、戦闘激化で国境殺到****
トルコ南東部のシリアとの国境の町アクチャカレで13日、激化するクルド人部隊とイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との戦闘から逃れようと国境に殺到するシリア人難民に対し、トルコ治安部隊が放水や威嚇射撃を行って入国を阻止した。現地で取材中のAFP写真記者が確認した。

シリア人難民らは国境の周辺に設けられた有刺鉄線の囲いの中に留め置かれている。

アクチャカレから国境を挟んですぐのシリアの町タルアブヤドはISに制圧されているが、英国に拠点を置く非政府組織(NGO)「シリア人権監視団」によれば現在、クルド人民防衛部隊(YPG)が町から10キロメートル以内まで迫っている。

国境には戦火を逃れようとするタルアブヤドの住民が続々と詰め掛けており、緊張感が高まっている。

トルコの警察と軍は国境フェンスを乗り越える者がないよう厳重な警備を敷き、フェンスに近づく者がいると放水や威嚇射撃で遠ざけようとしているという。
避難してきた女性の多くは頭から全身を黒い服とベールで覆い、所持品を入れた白い袋を頭部に乗せている。

トルコは2011年にシリアで内戦が始まって以来、レジェプ・タイップ・エルドアン大統領の掲げる政策に従って、180万人のシリア難民を受け入れてきた。

しかし、トルコ政府は11日、戦闘激化を受けてここ数日で数千人のシリア難民が国境に殺到したことを受け、難民のトルコ入国を制限する方針を明らかにした。

ヌーマン・クルトゥルムシュ副首相は、今後アクチャカレでは人道危機とみなされる場合のみ入国を認めると説明した。ただ政府は、難民受け入れに関する基本政策に変更はないと強調している。

トルコ当局によると、この数日間で国内に流入したシリア人は、既に1万3500人を超えた。

トルコ政府は数か月にわたり、トルコの負担が増す一方で欧米はシリア難民問題を傍観していると非難を強めており、4月にはこの4年間で難民対策に55億ドル(約6800億円)を費やしたと発表していた。【6月14日 AFP】
*******************

しかし、トルコはすぐに難民受入に転じています。
このあたりの経緯については、何があったのか知りません。

****トルコ政府が国境開く、シリア難民数千人が入国****
トルコ政府は14日、トルコ国境に近いシリアの町タルアブヤド(Tal Abyad)をめぐり激化しているクルド人部隊とイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘から逃れたシリア難民が殺到して数日前から封鎖されていた国境を再び開き、難民数千人を入国させた。

難民が国境のフェンスを越えて不法入国しトルコ軍が緊急対応するなど混乱した場面も見られていた。現地にいるAFPの写真記者によると、難民らはトルコ南東部のシリアとの国境の町アクチャカレ(Akcakale)の国境検問所を通過しトルコ領内に流れ込んだ。難民の多くは荷物と小さな子どもたちを抱えていた。

トルコは、人道危機とみなされる場合にのみシリア難民の入国を許可するとして数日前からシリア人の入国を阻止していた。しかしアクチャカレの地元当局者は、それより先にトルコ政府から難民の受入れ許可を得ていたとしている。

トルコのテレビは約3000人がトルコ領内に入るとの見通しを伝えたが、現場のAFP記者によると実際の人数はそれをかなり上回りそうだという。【6月15日 AFP】
*******************

クルド人勢力(PYD)がタルアブヤドを制圧したことは、ISのトルコ経由の補給路を断つという大きな意味があります。

一方、トルコ政府には、国内のクルド系過激派PKKと関係の深いPYDが国境地域を支配するということで、PKKを刺激するのでは・・・との不安もあります。

更に、クルド人勢力がこの地域に独自の「クルド人国家」をつくろうとしているのでは・・・と見る向きもあるようです。

【『国民が慎重』な日本は難民受け入れは困難?】
日本は、数日で数千人という難民の大量流入に直面するトルコはもちろん、難民の目的地となっている欧州やオーストラリアに比べても直接の問題が及ばないところにいます。

ただ、それは日本が難民と無縁である・・・ということではありません。

****世界難民の日 ロヒンギャ難民が都内でデモ****
国連が定める「世界難民の日」にあたる20日、日本に逃れてきたミャンマーの少数民族ロヒンギャの難民などが、ロヒンギャの人たちを巡る問題解決に向けた支援を求めて都内でデモ行進を行いました。

デモ行進したのは、ミャンマーでの抑圧を逃れ難民となって日本で暮らしているミャンマーの少数民族、ロヒンギャの人たちなどおよそ40人です。

集まった人たちは、密航船に乗ったロヒンギャの人たちの写真を手にしながら、「ボートピープルを助けてほしい」などと問題の解決に向けた国際社会の理解と支援を訴えました。

ロヒンギャの人たちを巡っては、先月以降、ミャンマーの周辺国の沖合に相次いで密航船で漂着したり、タイとマレーシアの国境地帯で多数の遺体が見つかったりして、人身売買の実態が明らかになっています。

この問題を巡って、先月にはタイで国際会議が開かれましたが、ミャンマー政府は、ロヒンギャの人たちを隣国のバングラデシュからの不法移民だとして自国民とは認めない立場で、問題の解決は容易ではありません。

デモ行進を行った在日ビルマロヒンギャ協会の会長を務めるアウン・ティンさんは、「最近、ミャンマーから逃れ難民になるロヒンギャの人たちが増えている。問題解決のため世界中の人たちに協力してほしい」と話していました。【6月20日 NHK】
******************

群馬県館林市には、ミャンマーのロヒンギャ約200人が不安定な状況に置かれたまま暮らしています。

****難民」にもなれない8年 ミャンマー・ロヒンギャ族、群馬・館林に****
群馬県館林市に、ミャンマーのロヒンギャ族約200人がひっそりと暮らしている。日本で難民として認定されず、仕事や医療面で苦境にある人々も少なくない。

ロヒンギャ族やシリア難民など、国際社会では難民が改めて大きな課題となっている。国連は、難民の保護と支援への関心を高めようと制定した20日の「世界難民の日」を前に、世界の難民や国内避難民が過去最多になったと発表した。

古い民家の一室で、アウンアウンさん(38)は、2時間しか眠れず早朝に目を覚ました。
6月8日は、住んでいる群馬県館林市から、東京都港区にある入国管理局に行く日だった。正式な在留許可はない。「捕まったら、どうしよう」と考えると、心配でたまらなかった。

アウンさんが入国管理局に向かったのは、3カ月に1度の「仮放免」更新のためだった。不法滞在などの理由で本来は収容対象だが、一時的に身柄の拘束を解かれることが「仮放免」だ。代わりに一定期間ごとの更新が必要で、県外への無許可での移動は許されていない。就労や国民健康保険の加入も認められない、不安定な立場だ。

入管では「難民認定のための面接には呼ばれましたか」などと質問され、無事に終了した。「この日は大丈夫だったが、心配しながら生きて、8年になる」

アウンさんはミャンマーで身に覚えのない爆発事件に関与したと疑われ、当局から連日事情聴取や暴行を受けたという。日本なら難民として受け入れられると期待して、2006年に逃げてきた。ミャンマーでは旅券が与えられなかったために偽造旅券で入国、1年間入管施設に収容された。

館林市には、日本にいる約230人のロヒンギャ族のうち約200人が暮らし、市内の住宅街にはモスク(イスラム教礼拝所)がある。会社を経営するロヒンギャ族の一人の男性を頼って館林市に集まり始めた。

働くこともできる在留特別許可が与えられる場合もあるが、アウンさんのように何年も仮放免のままという人もいる。

「仕事もできず病院にも行けず、自由に移動もできない。ミャンマーも日本も同じだった」。館林市に住むロヒンギャ族のムハマト・アドラさん(34)は漏らす。

ロヒンギャ族の受け入れは、今年に入って国際的な問題に発展した。ロヒンギャ族らの乗った船が次々と東南アジアの国々に向かったが、タイなどが船の受け入れを一時拒否。いまも数千人が海に漂流している可能性がある。

ムハマトさんは「船に乗った人々の中に自分の親族や友人もいるかもしれない。現地に行って助けてあげたいが、自分にはそれもできない」と話す。

インドネシア政府とマレーシア政府は、ロヒンギャ族の滞在を1年間に限って認めることを決めたが、1年後にどうするか、見通しは立っていない。

ミャンマー政府は「ロヒンギャという民族は存在しない」との立場を崩しておらず、避難民の流出が続く懸念をはらんだままだ。

 ■日本、認定に慎重
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、シリア難民の受け入れなどで日本にも協力を求めている。政府は認定制度の見直しも検討しているが、難民の受け入れ拡大にはなお慎重な姿勢だ。

法務省によると、2014年の難民認定申請者数は5千人で、13年から1740人増えた。

だが、このうち難民と認定されたのは11人のみ。ほかに110人について「人道的な配慮」などで在留を許可したものの、家族の呼び寄せがしやすく、日本語研修なども受けられる難民とは認めていない。

ロヒンギャ族については、難民問題に携わるNGOから「アジアの問題であり、日本が役割を果たすべきだ」といった声が上がっている。【6月19日 朝日】
**********************

シリア難民についても、日本への受入要請があります。

****シリア難民受け入れを日本政府に要請 UNHCR局長****
急増するシリア難民について、来日している国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のアミン・アワド中東・北アフリカ局長が朝日新聞のインタビューに応じ、「日本もシリア難民を受け入れてほしい」と話し、日本政府に19日、協力を求めたことを明らかにした。

アワド局長は難民受け入れについて、「日本で『国民が慎重』だから難しいとよく聞くが、そうだろうか。日本政府は国際社会との連帯を示す時だと気づいているはずだ」と述べ、日本の積極的な関与に期待をこめた。

さらに、「技術者の就労許可や若者が学ぶ間の支援など、期間を決めた難民受け入れもありうる」と提案。4万人のシリア難民受け入れを表明したスウェーデンが、医師や看護師資格をもつ難民らを活用して、人材不足の解消に結びつけている例を紹介し、「優れた技術者らも難民生活を強いられている。彼らが豊かな文化をもたらす側面も忘れないで」と話した。

長引く紛争と過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭で、シリアでは388万人が難民として国外に逃げ、国内避難民は760万人に上る。国連はレバノンやヨルダンなど周辺国での受け入れが限界に達しつつあるとして、各国に難民の受け入れを呼びかけている。【6月21日 朝日】
*******************

もちろん、難民・移民を受け入れることは国内的に多くの問題を惹起します。

しかし、だからといって難民問題を見て見ぬふりをするのがあるべき姿なのか?
“国際的な責任を果たす”ということ、日本の国際的信用を高めるということは、ホルムズ海峡に出かけて行くようなことではなく、難民という切実な問題に正面から向き合うことではないでしょうか。

『国民が慎重』と言うのであれば、国民にその意義を説得するのが政治の役割ではないでしょうか。
(受入を難しくしているのは、受入が引き起こす種々の問題というよりは、そうした問題を事あるごとに言い立てる、最初から外国人を受け入れるつもりのない偏狭な人々の存在でしょう)

国内的にみても、門を閉ざして内に籠ることで“日本的”なものを守るのではなく、異質な人々・文化を受け入れて日本を再構築していくことで、新たな次元に進めるのではないでしょうか?
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする