原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

山中伸弥氏による “iPS細胞小講座” (NHKテレビより)

2019年10月08日 | 学問・研究

 

 (写真は、昨日発表された2019年「ノーベル医学生理学賞」に関連する朝日新聞記事を転載したもの。 これに関しては、本エッセイの最後に少しだけ述べます。)

 

 この本年度ノーベル医学生理学賞の発表に連動してか、本日昼間のNHKテレビ「午後ナマ」のゲストが、2012年度ノーベル医学生理学賞受賞者であられる山中伸弥氏だった。

 番組冒頭にて、山中氏による“iPS細胞小講座”が放送された。 素人にも分かりやすい解説だったため、我がメモ書きに頼り、記憶が新しいうちにその内容の一部を紹介しよう。

 その講座の前に山中氏による雑談があったのだが、それが面白かったため前座話として紹介しておこう。

 山中氏は、ノーベル賞を取得する以前は、京都先斗町をよく飲み歩いていたそうだ。 ところが受賞後、“時の人”となってしまい、その後は先斗町飲み歩きを自粛しているらしい。 その後年月が流れ、今となっては先斗町は海外旅行者の訪問地と化し日本人が少ないそうだ。 それ故、また先斗町飲み歩きを復活させたとか、させてないとか…?? 

 さて、それでは「iPS細胞小講座」に戻ろう。

 山中氏は現在iPS研究所所長として、約600名の研究者達を率いる立場の所長を務めている。 そのため、ご自身は実際に実験を実行する等の研究とは直にかかわっていないとのことだ。 故に、本国内に於いては研究者というよりも、iPS宣伝活動担当も含めた“経営者”の立場であることをご自身が認めておられた。 その分、米国を訪れた際等に実験を施すことはあるそうだ。(?)

 このiPS細胞は、12年前に山中氏ご本人が自ら作ったとの事だ。 ここから専門的になるが、人体は約37兆個の細胞から成り立っているが、その元はたった1個の受精卵である。 その受精卵が細胞分裂を重ね10か月後に37兆個にまで増殖する。 そして生命誕生となる訳だが。

 受精卵が人体を構成する臓器の細胞となるのは、一方通行だ。 それが逆戻りできないものか、と山中氏は目を付けた。 その逆戻り、すなわち細胞の運命の「リセット」をする方法を見つけた事実、イコールiPS細胞の誕生だった。 このiPS細胞はどんどん増殖させることが出来る。 そしてiPS細胞を増殖させた後に、神経、心筋、肝、筋肉、等々の細胞を作り出すことが可能だ。

 今現在、このiPS細胞は中高生にでも作れることが出来る程の簡単な実験手技だそうだ。 しかも、金銭的にも数十万円程で作れるらしい。 ところが一旦これが臨床現場で再生細胞を作り出すためには、3000万円程の費用がかかるらしい。 しかも、細胞から臓器に発展させる過程が現在でも難しいのが未だネックでもあるそうだ。

 現在の「再生医療」に関しては、我が国でもパーキンソン病や角膜障害に対応可能なレベルにまでiPS臨床応用が進んでいるとのことだ。 山中氏の希望としては、このiPS細胞利用により「薬の開発」(たとえば、アルツハイマー型認知症やALS等の疾患対応薬作成)にまで発展させたい、との談話だった。

 iPS細胞が誕生して12年の月日が流れているが、“未だ道半ば”とも山中氏は語った。 今後もっと数多くの病気に対応させるためには、「オールジャパン」体制でiPS細胞研究を実行するべきとの発言もあった。 iPS細胞臨床応用の先駆者は米国であるが、米国の特徴としてその研究に莫大な費用をかけられることにあると(羨ましそうに)語った。 (要するに、日本ではその支援金が少ないと言いたいのだろうが)、山中氏の希望としては、単に資本主義に走るのではなく、適正価格でiPS細胞技術による医薬品等々を患者に届けたい、とも語った。

 (以上、原左都子のNHKテレビ放送“聞き取り書き”により、本日放映された山中伸弥氏の「iPS細胞小講座」を紹介した。)

 

 私論に入ろう。

 原左都子がこの山中伸弥氏の“iPS細胞”騒動を肯定的に捉えていない事に関しては、本エッセイ集バックナンバーに於いて幾度も公開している。

  何故肯定的に捉えられないかと言えば、それはまさに本人も認めているがごとく、この方はノーベル賞受賞後は医学研究者というよりは、“iPS細胞宣伝部長”としてしか動いていない事実故である。(未だお若いのに、どうしてご本人が医学実績を活かし更なる研究意欲を続行しないのか? 私はあくまでも疑問だ。) 本日のNHKテレビ出演に於いて、それをご本人が正直に認めたところが興味深かった。 

 それにしても、これまた本人が本日認めた通り、日本に於ける“iPS細胞臨床応用研究”も未だ道半ばだ。(いや、我が印象だと“道一割”との感覚だが。) 要するに、成果が乏しい割には“iPS応用研究”にカネがかかり過ぎているとの印象すらある。 山中氏の“夢”の程は理解出来るが、医学臨床研究とは “流行りうさり”で捉えられるべく事象でもなかろう。

 ここはやはりいくらノーベル賞受賞者であると言えども、“売れっ子”になった事実にいつまでも浮かれていないで、もう少し広い視野をもって臨床医学全般を見つめ直してみてはどうか?、と結論付けたいものだ。

 

 おっとっと。

 熱を入れて執筆しているうちに、字数も時間もオーバーのようだ。

 冒頭写真の「2019ノーベル医学生理学賞」に関しては、次回以降に回そう。