原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

早稲田政経入試に今まで「数学」が無かった事こそ信じ難い

2018年07月24日 | 教育・学校
 私自身は、幼稚園から小中高、2度に及ぶ大学(理系・文系2大学)そして大学院修士課程と、そのすべてを国公立にお世話になった身だ。

 故に、私立大学の実態はあまり知らない。
 その立場で私立大学の論評をする資格は無いのだろうが…。

 ただ、40数年前の高校在学中、周囲に私立大学を目指す生徒が数多く存在したため、私立大学の入試が3科目程度しかなく、“楽(ラク)”だということは知っている。
 特に国立理系の場合、国語、数学(数Ⅲまで)、英語、社会はちろんの事、理科2科目が必修だったため、私立受験生の何倍もの時間をかけて受験勉強に励まざるを得なかったものだ。
 早くから私立大文系1本に絞り込んでいる生徒など、いつ受験勉強しているのか??と不思議な程にラクそうで、“地元国立限定!”を我がノルマと課した親どもを本気で呪っていたものだ。


 早稲田大学政経と言えば、おそらく私立文系最難関の大学学部であろう。
 そこの出身者に、国会議員や国家官僚が数多いとの事実も熟知している。
 そんな最難関私立大学学部入試に、今まで「数学」が無かった事こそ信じ難い。
 現在は、大学受験生のほぼ全員に大学側が「センター試験」通過を課しているため、私立文系受験者の中にはセンター試験で数学を選択する生徒もいるのだろうか?  (何分、私自身が“国立一期校”“国立二期校”世代であり、「共通一次」も「センター試験」も経験が無い故に詳細を承知していないのだが…。 娘もサリバン指導により大学へは秋の“公募制推薦”にて入学させたし…。)

 「数学」を経験しない学生達が学ぶ大学学部が、“難関” と名乗る資格があるのか?!? と、言いたくもなるが。


 一昨日だったか、やっとこさ早稲田大学政経学部が2021年度一般入試から、受験者に「数学」を課す、との情報をネット上で発見した。
 “時既に遅し”の感もあるが、以下にそのネット情報の一部を要約して紹介しよう。

 早稲田大学政治経済学部の入試改革が教育業界に波紋を広げている。 6月7日、現在の高校1年生が受ける2021年度一般入試から、受験者に数学を必ず課すと発表したのだ。
 現在同学部の一般入試では、外国語・国語の2科目と、世界史・日本史・数学の3科目から1科目を選択することを求めている。
 今回の入試改革では、現行の学部独自試験である3科目受験を廃止。 一般入試受験者には「大学入学共通テスト」(大学入試センター試験に代わって始まる共通テスト)を課し、さらにTOEFLのような英語民間検定試験と、政治学や経済学に関する日英両言語の長文読解の記述式試験の受験が求められる。
 数学の必須化とは、大学入学共通テストの数学Ⅰ・Aを受験することが必要になることを指す。
 これまで私立大学の文系学部のみを受験する学生たちは、「国語、英語、地歴公民(社会)の3科目のみを勉強して備える」(首都圏私立高校教諭)のが当たり前だった。 早稲田の政経学部は、いわばその象徴といえる学部だった。
 早稲田大学政治経済学術院長(政治経済学部長)の須賀晃一教授は「現行の一般入試でも選択科目である数学、日本史、世界史の選択者の割合はそれぞれ4割、3割、3割と、数学選択者が実は最も多い」と数学を必須化しても受験者数に大きな影響は出ないとみる。 そして、須賀教授は「数学を多用する経済学はもちろん、政治学でも統計・数理分析など数学が求められている分野が増えており、数学的なロジックに慣れ親しみ続けてほしい」と数学必須化に込めた狙いを解説する。
 今回の入試改革にあたっては、学部内からも不満の声が出ていた。 経済学では微分・積分が必須で、高校数学でいえば数学Ⅱ・Bから数学Ⅲ・C以上のレベルが求められる。 経済学科の複数の教授は「ミクロ経済学の必修講義では数学ができない人が多くて、約4割の学生が再履修することもある。やるなら数学Ⅱ・Bまでを必須化すべき」と話す。 逆に、政治学科の一部の教員からは「数学を必須化することで絶対に早稲田の政経にいきたいという受験者がいなくなるのでは」と、伝統や独自色が薄まることを懸念する声もある。
 須賀教授は、そうした学内の批判があったことを認めたうえで、「これからの時代をグローバルリーダーとして生きていく若者たちに数学がいらないと断言できる人はいないだろうし、また数学の入門レベルのロジックを忘れないでほしいというメッセージとしては、数学Ⅰ・Aだけで十分だろう」と説明する。さらに「独自試験で政治や経済に関する日本語と英語の長文を読解してもらうことで、受験生の政経学部への適性は把握できる」と政経学部の独自色はむしろ強化されるとする。
「早稲田政経学部にとっても、今回の改革は単なる受験科目の変更だけを意味しない。 10年以上前から始まった「学部改革の一環」(須賀氏)だ。
 政経学部は2004年にもともとあった政治学科と経済学科に加えて、国際政治経済学科という新学科を設置した。 グローバルリーダーを養成するという政経学部の目標とともに、「政治学と経済学が車の両輪のようにつながっている『政治経済学』部を象徴する学科」(須賀教授)である。
 その両輪である政治学と経済学をつなぐ軸として、数学的方法論や公共哲学を国際政治経済学科のカリキュラムで必修化していった。 今後、政経学部の全学科でも必修化が予定されている。入学後に学生がついていけなくなることを防ぐためにも、入試における数学の必須化が必要だった。
 今回の入試改革のキモは、単なる数学の必須化だけではない。 政経学部を目指す学生、そしてそれをサポートする学校、学習塾は、しっかりとした準備が求められることになりそうだ。
 (以上、ネット情報より一部を要約して引用したもの。)

 
 私論に入ろう。

 上記ネット情報内の、早稲田大学政治経済学術院長(政治経済学部長)の須賀晃一教授がおっしゃる通りであろう。
 「数学を多用する経済学はもちろん、政治学でも統計・数理分析など数学が求められている分野が増えており、数学的なロジックに慣れ親しみ続けてほしい」との須田氏の談話に同意する。
 まさに社会科学分野と言えども数理発想は必須だし、社会科学を学ぶ者にロジカル思考は外せない。

 私の場合 「経営法学修士」を取得してる身だが、“法解釈論”に於いても数理思考が役立ったものだ。 修士論文(法解釈論ものだが)に「グラフ」を書いたのは恐らく世界中でも私が最初で最後だろうが、学説間での解釈論対立の有様を「グラフ」化した経験がある。 (指導教官は単に呆れていた記憶があるが、それでも元々理系出身である我が“冒険”を一応評価して下さった。)

 上記ネット情報によれば、早稲田政経学部の場合、数学経験の乏しい学生が中途で学問に行き詰っているとの記述もある。
 そりゃそうだろう。 特に「国際政治経済学科」の場合、上記記述にある通り、数学的方法論や公共哲学を国際政治経済学科のカリキュラムで必修化せずして、学科の存続が成り立たないはずだ。

 
 早稲田大学政経学部さん。
 
 「数学」を入試必修化すれば受験者が減るぞ!! と塾側から脅されて弱気に陥っている場合ではなかろう!
 早稲田政経学部が” “私立文系の最難関” の誉れ(原左都子としては未だそれを疑わしく思っているが…)を死守したいのならば、ここは是非とも学部長須田氏の“英断”を尊重し、是が非でも「数学」を入試必修科目とするべきだ!