原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

大学「秋入学」、今さら“及び腰”の腰砕け

2012年07月23日 | 時事論評
 最初にお断りしておくが、原左都子は今年1月に東大が提案した我が国の大学「秋入学」移行への動向に関して“反対”の立場である。

 本エッセイ集2012年1月バックナンバー 「『秋入学』が本当にグローバルなのか??」 に於いて、既に我が反対意向の論評を展開している。


 今回のエッセイを綴るに先立ち、冒頭より上記「原左都子エッセイ集」バックナンバーを要約して振り返らせていただくことにしよう。

 本年1月に東大が突如として言い出した学校の「秋入学(9月新年度制)」への移行に関しては、何もこんな時に東大が言い出さずとても教育界にずっと以前より存在していた議論である。 その趣旨とは、欧米諸国の学校と足並みを揃えようとの意図であったと原左都子は認識している。
 早ければ5年後にすべての学部を「秋入学」制へ移行したい東大の趣旨とは、海外からの東大への留学生、及び東大生の海外への留学に対応するのが第一義との報道である。 ただし、東大だけが5年後に「秋入学」制へ移行したところで社会全体の整合性が成り立つ訳がない事はさすがに東大も認識している様子で、政界や産業界、他大学をも含めて社会全体を巻き込んだ議論に発展させるべく魂胆で現在東大は動いているようだ。 
 ところが世を見渡すと世界規模で政治経済危機状態、そして昨年国内に勃発した大震災も今尚その復興がままならない状況下にある。  このように世界も国内も大混乱状態の時期に、何故東大は 「秋入学」 などという(原左都子に言わせてもらうと)“二の次”にするべき議論を持ち出して世間を騒がせたかったのだろうか??
 東大の言い分とは、日本の大学生の海外への留学は近年減る傾向にあるが、海外留学を希望する学生は数多いのに対して実際に留学した学生は1割未満。 その理由は就活や留年の心配が大きい事にあるため、「秋入学」によりこれを解消して留学を増やし国際感覚を育みたい、との事のようだ。 片や、海外からの留学生も減少の一途であるが、これは中韓などの主要大学に遅れを取るものらしい。 世界大学ランキングで東大の格付けも高くなく、東大が世界に選ばれる大学になりたいとの狙いもある、との事だ。
 私論であるが、そんなくだらない見栄、体裁の理由で日本の“一大学に過ぎない東大”が突然提唱した「9月新年度制」を、倒壊寸前の民主党政権も賛同しているからと言って、大幅な社会システムの移行をこの世界的政治経済危機の時期に強制され更に国民が混乱させられる事態など避けたいものである。
 原左都子に言わせてもらうと、現在東京大学の世界ランキングが低いのは東大自らの“自己責任範疇の問題”に過ぎないはずだ。 「秋入学」に依存する前に、大学として自助努力に全力を挙げることから東大はスタートし直すべきではないのか?? 
 東大から諸外国へ留学したい意思ある学生(あるいは海外からの留学生)の中には、もちろん本気で世界最高レベルの科学や学問を志し、今後世界の最先端を目指そうとする学生も存在することであろう。 それら学生の意向に応えるためには、「秋入学」という小手先の“制度いじり”に依存するのではなく、送り出す側も迎える側も是非共“学問力”を持って答えて欲しいものだ。 
 「秋入学」が実行可能な国内情勢に程遠い現在に於いて、今回の東大の「秋入学」制度導入意向は明らかにその時期を誤っている。 
 そもそも学校の新年度など、いつ始まろうが原左都子にとってさほどの困惑はないのも事実だ。
 今回のエッセイの最後に紹介すると、諸外国の企業はいつ何時でも有能な職員を採用しているようで、日本のような「4月新卒者一斉採用」という“一種特異的慣習”など無いという話でもある。 この本来の“実力主義”が日本社会全体で模倣できてこそ、東大も含めた日本の学校もやっと「9月新年度制」に真に移行できるということではないのか?
 (以上、「原左都子エッセイ集」バックナンバー「『秋入学』が本当にグローバルなのか??」より要約引用)

 バックナンバー引用が長引いてしまったが、今回学校「秋入学」に関する続報記事を綴るに当たり、我が見解を再度ご確認頂く意味で長々と紹介させていただいた。


 さてさて、いよいよ本日の記事の本題に入るが、朝日新聞7月17日報道によるとこの「秋入学」に関して国内の多くの大学が戸惑い“及び腰”の現状とのことだ。
 まさか、言いだしっぺの東大は「秋入学」に向かって猛進しているのかと思いきや…
 その東大内ですら学内にも異論があり意見をまとめ切れていないらしい。
 東大の全面「秋入学移行案」提案及び主導者である総長の浜田純一氏は、旧帝大や慶応等全国11大学に協議を呼びかけ、全面移行への課題を検討する協議会を5月に設置したとの事だ。 ところがその会議は発足後1回しか開催されておらず、議論はまったく進んでいないらしい…  東大からお声が掛かった11大学のスタンスもまちまちで、「移行を前提に検討中」と答えたのは北海道大学のみとのこと、京都大学は「検討していない」としているとの報道だ。(以上、朝日新聞記事より引用)

 ここで一旦私論を述べよう。

 これがもしも民間企業のプロジェクト事業であったならば、事業提案・主導者の浜田氏は即「左遷」、最悪の場合「首」となること間違いない。 
 「一大プロジェクト」の発足発表により世間を大いに巻き込み騒がせておきながら、現在までプロジェクト会議をたったの1度しか開催していない現状…  しかも、その提案に対し真摯に検討している大学も存在する中、主導者である東大総長は現在一体何を考えているのかも理解できない現状の様子だ。
 事業提案・主導者こそが強い意思と綿密な計画性をもって本気で動かない限り、一大プロジェクトの成就など見込めないのが世の現実であろう。

 片や一般社会に目をやると、今回の東大よりの「秋入学」提案により一番の迷惑を被っているのは、その全面移行の過渡期となる5年程先に大学を受験する生徒達であろう。 特に東大等(いわゆる)難関大学を目指している生徒達とは、もう既にその受験準備を進めているはずだ。 そんな生徒(及び保護者)にとって「秋入学」が5年後に決行されるとなると、その実態が全面的に我が身に降りかかる運命となろう。 受験準備でさえ大変なのに、「秋入学」移行準備まで背負って立たされる受験生及び保護者の苦悩・負担を考慮し、そのご苦労の程を偲んでいた原左都子でもある。 


 最後に原左都子の結論を述べるならば、本年1月に東大総長であられる浜田氏が提案・主導した5年後「秋入学」制度導入案は“計画倒れ”と表現するしかない。
 ここは東大を目指す受験生の存在等を勘案して早期に一旦その失態を認め、浜田氏は世間を“お騒がせ”した事態に対して国民の前で頭を下げ釈明する事をお勧めしたい。

 そして、今後東大総長氏がやはりどうしても「秋入学」制移行を目指したいご意向であるならば、その制度樹立のためには政界、経済界、教育界等日本国中のシステムすべてを巻き込まねばならないことを再度重々視野に入れつつ、綿密な計画性と事前調査・準備の下に制度導入を図り直すべきである。