原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

自分の“負け”を認める美学

2012年07月21日 | 時事論評
 元タレント、弁護士であり前大阪府知事、そして現職は大阪市長である橋下徹氏。
 「大阪維新の会」代表でもあるこの人物を知らない日本人は存在しないであろう。

 民主党政権が消費税増税問題をきっかけに分裂状態に陥り政権続行に陰りが見えている現在、1969年生まれ43歳の未だ“青年”とも表現できそうな橋下氏との連結を目指し、“ラブコール”を送る著名政治家は各方面より数多い。 
 例えば東京都知事の石原慎太郎氏も然りであるが、先だって民主党を離党した小沢一郎氏までが橋下氏に対し、政治方針に共通項が多いナンタラカンタラ…と“上目遣い”の有様なのには驚いた。(こいつと結託すると票が取れると目論んだら、ベテラン政治家としてのプライドもへったくれもぶっ飛んでしまうもんなんだねえ~~)


 橋下氏は地方自治体の首長の経験しかないこともあり、原左都子としてはこの人物の政治家としての全貌が未だ摑み切れず、国民が騒ぐ程にはその真価の程が評価できないでいる。

 一方、橋下氏が自己PR力に長けていることはよく理解できる。 大阪府知事選挙及び大阪市長選に於いて市民より大量得票を得て当選をゲットできたのも、普段よりの自己PRの派手さによるものと理解している。

 橋下氏のその辺の“自己PRの派手さ”に関して、少し古くなるが朝日新聞6月7日付記事において、同社社会社説担当の前田史朗氏が絶妙な表現をされているため、以下にその一部を紹介しよう。
 「敵をつくって注目を集める『橋下劇場』」 「押すところは押す、引くところは引く。変わり身の早さは彼らしい戦術」  (それらの戦術を使い分けつつ)橋下氏はこれまで既成観念にとらわれない施策を次々と打ち出してきた。 教育委員会改革や公務員の政治活動規制、労働組合の事務所撤回…。 局面局面での軋轢を生みながらも、多くの市民の支持を得てきた。
 (以上、朝日新聞記事より引用)

 まさに朝日新聞 前田氏のご指摘通りだ。 
 さすが元タレントの橋下氏。 “「橋下劇場」戦術”による自己PR力には凄まじいものがある。

 ところがこの橋下氏にして(自らが座長の)「橋下劇場」の舞台から降り、初めて政治家としての 「負け」 を認めたのが“大飯原発再稼働”をめぐる「民主党政権打倒宣言撤退」事件だったのではあるまいか。
 関西電力大飯原発再稼働に強く反対してきたはずの橋下氏が、一転して容認へと立場を変えた事態には、原発再稼働反対派の原左都子も愕然として大いに失望させられたものだ。
 この“態度の豹変”に関し橋下氏は、「報道陣に大飯原発再稼働を事実上容認した事について、『正直、負けたと言われてもしかたない。』 反対し続けられなかったことは反省する」との表明をしているようだ。
 この報道に接した私は、強気一直線だった橋下氏が政治家になって初めて「自分の“負け”を認めた」と解釈し、少し人間味を感じたものである。


 さてさて、その橋下徹氏が“ろくでもない事象”でメディアに捕まってしまったらしい。

 何でも大阪府知事選前の“不倫騒動”が今頃になってメディア上に浮上している事態のようだ。
 ネット上で見つけたそれに関する文書を以下に要約して紹介しよう。
 クリントン元米大統領が、ホワイトハウスのインターン女性との関係を公に認めるまでには数カ月かかった。 この出来事は一大スキャンダルに発展しクリントン氏は大統領の職を危うく失いかけた。 
 一方、橋下徹・大阪市長は世論調査で日本の次期首相に「最もふさわしい人物」とされている人物であるが、氏はすぐさま問題に真正面から向き合った。 橋下氏と大阪のクラブホステスの不倫を報じたスクープが掲載されるとのうわさがかけめぐると、すかさず橋本氏は7月18日に記者会見を開き2人の関係について率直に語り、政治の世界に入る前は「聖人君子」のような生き方はしていなかったと説明した。 氏はまずは妻と話す必要があるとし、「公人だから説明しなければならないが、知事になる前の話であり、今どこまでそれを言わなくてはならないのか考えたい」と述べた。 大阪市役所で会見を行った橋下氏は、妻は既に記事を読んだとし、「妻は本当に普通の主婦だから。正直ほんとに大変な状況だ」「ものすごいペナルティーが家で待っている」と7人の子を持つ父親でもある橋下氏は、暑さに汗をかきながら語った。 現時点では、このスキャンダルが橋下氏の人気や政治的野心に影響するかどうかは不明だ。 同氏は道徳的問題に対する強硬姿勢で知られており、最近も入れ墨のある市職員の取り締まりを命じている。また今年初めには学校行事での国歌斉唱時に教職員の起立斉唱を義務付ける条例を市議会に提案し、可決させている。
 (以上、橋下氏の“不倫騒動”に関するネット情報の一部を引用)


 いやはや、“天下”の橋下氏もひょんなことで大変な目に遭っていそうだなあ。

 何分、冒頭に記した通り橋下氏とはその人気の高まりに目をつけられ、政界リーダーらは将来的な支援獲得に向けその人気を利用しようと躍起になっている事態だ。 産経新聞が最近行った世論調査では、近く衆院選が行われた場合、橋下氏率いる「大阪維新の会」が国政で影響力を持つような議席を獲得することに期待すると答えた人は60,5%に上った、との上記ネット報道でもある。

 原左都子として一つだけ救われるのは、橋下氏が今回の「不倫報道」に於いても自らの「負け」を認めた事と思いたい。
 米国のクリントン元大統領のごとく、奥方であるクリントン夫人が実質的実力者だったような場合、たとえ不倫騒動が勃発しようがその政治生命は奥方が引き継ぐ事も可能であろう。
 ところが橋下氏の場合、今まで奥方に関する噂を聞いた事もない。 如何なる人物かは心得ないが、橋下氏過去の“不倫騒動”が公になったことによる奥方の打撃は計り知れないものがありそうだ。 しかも、子どもが7人??? これも驚きである。

 不倫ねえ…。
 そういう事態が発生するのは世の常かとほんの少しだけ考察する私でもあるが、政治家等人民の上に立つ事を志す人間とは、自分の生き様において慎重の上にも慎重を重ねる人生を歩むべきであろう。

 現在一世を風靡しているとも捉えられる橋下氏にとって、過去の“不倫”の発覚とは人生最大の失策だったのではあるまいか?
 さて人間の基盤である身内の信頼を失った橋下氏は、今後如何なる再出発を企てるのだろう?

 美学が美学として通用するためには、人間関係上の最低限の礼儀が必須であることを、(原左都子の視点からは)未だ“青年”の橋下氏は遅ればせながらも認識するべきである。