原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

自費出版の時代の終焉

2008年01月08日 | 時事論評
 昨日(2008年1月7日)の朝日新聞朝刊一面記事によると、自費出版大手企業の「新風舎」(本社・東京都港区)が負債額約20億円で民事再生法の適用を申請したらしい。
 同社は、持ち込み原稿の募集や著者発掘のコンテスト開催、自費出版物を流通にのせ各地の書店に並べる手法なとで急成長してきた出版社である。最盛期の05年、06年には出版点数で講談社を抜き、連続1位を記録している。
 
 実は、この私も昨年7月に新風舎の出版賞ノンフィクション部門にエッセイ作品を応募した。私は十数年前より、投書投稿、意見書提出をライフワークとしており相当数の原稿を書き溜めていたため、その原稿の中から応募作品としてふさわしいものをエッセイ集としてまとめ直し応募したという経緯である。(当ブログのバックナンバーにその応募作品も掲載しているのであるが。)新風舎の出版賞の場合、入賞作品数点は会社の費用負担での出版化という特典付きのため、あわよくばと考えての応募であった。世の中そんなに甘くないことも承知の上での応募であり、案の定、入賞は逃がしたのであるが。

 この私の出版賞応募に前後して、自費出版をめぐる自費出版本の著者と出版社の間のトラブルの話題が新聞を賑わせていた。例えば、コンテストの最終選考まで通過し最終的には落選したのだが、出版社からの自費出版のしつこい勧誘を受けおだてに載せられて自費出版したものの騙されたような気がするという著者の話、また例えば、出版社との自費出版契約内容とは裏腹に製本化した後の販促活動を出版社がまったく行わない等、契約内容に誤解を生む要素があったとして著者が出版社に損害賠償を求めて提訴したという話、等を私は目にしていた。

 上記のようなトラブル情報を既に入手していたため、私は出版社側のだいたいの手口は予想できていた。応募後はまさに上記の騙されたのかと思って後悔している著者とまったく同じで、案の定私の場合も出版社から入賞者発表直前に最終選考まで通過しているという連絡が入るのである。そして落選後に応募作品を褒めちぎった評価と共に“出版化推薦作品認定証”が届き、是非自費出版しましょう、とくるのだ。断った後も、再三自費出版を促す連絡が来るという段取りである。

 私の場合、身内が既に某社より自費出版本を出版していたこともあり、自費出版とは如何なるものかを既に把握していた。費用としては200万円程かかる。出版後の出版社からのフォローはないに等しい。そのような条件でも自己満足が得られるならば200万円の価値はあろう。自分の著作物が製本化されること、売れることは期待せずとも少なくとも身内や近親者には配布できること等に価値が見出せるならば、200万円も惜しくはないのであろう。(我が身内も惜しくなかったから出版したらしい。)
 私もほんの少し自費出版化も考慮した。私の場合は既にこのように「原左都子エッセイ集」をブログにて展開している訳であるが、本にはブログとはまた異なる趣があることは事実だ。日々更新の世界で日々通り過ぎ、はかなく流れ去ってゆくブログとは異なり、本には蓄積性があり確固とした実質的な存在観がある。 だが、結果として私は自費出版に対して我が身内ほどの思い入れはなく、やはり出版は取り止めた。

 若い世代の人間とのかかわりの希薄化現象や引きこもり現象、あるいは団塊の世代の定年等により(?)、活字や写真、映像、等の形での自己表現の場を求める人口が急増している今の時代を、ブログを開設したお陰で私も実感する日々である。
 今回のこの新風舎の民事再生法適用申請は、それらの人たちの自己表現の場のひとつである自費出版が早くも終焉を迎えていることを実感する出来事である。

 
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