水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (21)景気

2021年12月27日 00時00分00秒 | #小説

 景気の先行きが明るいと、人々は明るくなる。要は、生活のゆとりが出来ることにより、暮らし向きが何かと明るくなる・・といった寸法だ。ところが景気の先行きが暗いと、世の中全体が暗くなってくる。景気を明るくしたり暗くしたりするのは経済の動向だけではない。数年先の一万円札のお方でも、これだけはどぉ~~しようもないに違いない。具体的には新型コロナの蔓延(まんえん)といった一例だ。
 とある繁華街の商店主二人が話をしている。
「明日は首を括(くく)らにゃならんかもなっ!」
「ははは…冗談がきついぜっ! お前が首括るんなら、俺は崖から飛び込むさっ!」
「ははは…まあ、冗談はさておいて、仕入れも半減、売れは四分の一だぜっ!」
「お前とこは毛皮屋だからなっ! 今どき、景気よくても売れねぇ~だろっ?」
「いやいや、それがなっ! 変わったお客もいらっしゃってなっ!」
「フェチ・・ってやつかっ? そういうの増えたなっ!」
「ああ、この前の奥さんなんか、『毛皮でマスク作りたいのっ』って、こうだっ!! 奥さん、いくらなんでも毛皮のマスクは…とも言えねぇ~からなっ!」
「売れたのかいっ!」
「ああ、牛革のマスクだってよっ! あんたの皮を鞣(なめ)したらどうです? とも言えねぇ~しなっ!」
「ははは…そりゃ、言えねぇ言えねぇ!!」
「景気はともかく、牛革のマスクで予防になるのかねぇ~?」
「予防より見栄なんだろうな…」
「俺達と違ってよぉ~、景気を気にしない明るい方々もいらっしゃるってこった!」
「だなっ!」
 景気の冷気は、暮らし向きが暗い、弱いところ弱いところへと流れ込むようである。^^

                   完


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