水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (4)捜査

2021年05月25日 00時00分00秒 | #小説

 捜査と聞けば、誰しもすぐに警察が浮かぶだろうが、実は捜査にも甘口(あまくち)と辛(からくち)があり、警察の場合だと辛口の捜査・・ということになる。ならば甘口は? ということだが、つい今し方までかけていた眼鏡(メガネ)をどこへ置いたかが分からず、探し回るといった場合を甘口の眼鏡捜査と呼ぶ。^^
 どこにでもある、とある普通家庭である。
「お父さん! 私のネックレス知らないっ!?」
「んっ!? そんなもん俺が知るかっ! そこら辺(へん)にあるだろっ!」
「そぉう? …怪(おか)しいわねっ! つい今、外(はず)したんだけど…。どこへ置いたんだろっ!?」
「よぉ~~く考えてみなっ! ネックレスが勝手に歩く訳ないんだからっ! ははは…逃げたかっ! 捜査、捜査、捜査しなっ!」
 ご主人は勤めの刑事癖が出たのか、しきりに捜査を連呼(れんこ)した。
「帰ってきたでしょ…」
「ああ…。玄関で靴を脱いだな。それは俺も目撃している…」
「問題は、そのあとよねっ!」
「ああ、そのあとだっ! どうしたっ!?」
「どうもしないわよっ! …服を着替えにクローゼットへ行ったわ」
「そうなのか? なら、クローゼットへ逃げたんじゃないかっ! なんなら俺の後輩の刑事(デカ)を呼ぼうか?」
「そんな…」
「ははは…辛口の冗談、冗談だっ!」
 奥さんはクローゼットへ行き、着替えた服を弄(いじく)り始めた。そして、十数分が経過した。
「妙ね…、ないわ…」
 そこへご主人がチラ見しながら現れた。
「どうだ、あったか?」
「それが、ないのよ…」
「ははは…甘い甘いっ! あったぞっ!」
「どこよっ!?」
「自分の首(くび)を見ろっ!」
「あっ!」
 奥さんはネックレスを外していなかったのである。捜査は辛く考え過ぎれば足元(あしもと)、この場合は首元だが、見誤(みあやま)るのである。^^


                   完


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