水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (42)日足(ひあし)

2020年12月13日 00時00分00秒 | #小説
 四季がある我が国では当然、その季節ごとで日足(ひあし)が遅くなったり早くなったりする。同じ夕方の五時近くでも春から夏と秋から冬とでは大きな日足の違いを見せる。春から夏だと、なんだ…こんな時間かっ! と明るい余り、まったく時の過ぎたことを忘れ、腕を見て、もう夕方だと気づかされる。ところが、秋から冬だと、なんだ…もう、日暮れかっ! まだ五時近くなんだが…と、作業を終えねばならなくなる訳だ。それほど日足は季節で違いを生じるのだが、なんとかならないのっ! と通販の値引きのように頼んでも、こればっかりはお日さまも、『私のせいじゃないわよっ!』 くらいの気分で、お困りになることだろう。^^
 鬼瓦(おにがわら)は小春日和のその日、朝食[{ト-スト一枚+目玉焼き+ケチャップ+マヨネ-ズ+レタス+トマトのスライス}+ミルク、その後でコ-ヒ-]もそこそこに、日曜大工を始めた。^^ …これで、そこそこなの? は、判断が分かれるところだろうが…。^^
「なんだ、もう昼か…」
 準備していた図面通りに木材を切り始めて二時間、鬼瓦は腕を見て、昼食を思わなくてもいいのに思った。ものは思いようで、ある程度、片付いてからでもいい訳である。だが、思ってしまったものはどうしようもない。鬼瓦は昼食休憩にしよう…と作業を一端、中断した。軽く昼食[{即席麺+焼きおにぎり1ケ}+日本茶+バナナ1本]を済ませ、作業をふたたび開始したとき時刻はすでに、昼の1時近くになっていた。…これで、軽くなの? は、これも判断の分かれるところだろうが…。^^
 再開して、ようやく組み立てに入ったとき、すでに日足は落下の速度を速め、オレンジ色の夕闇を放って鬼瓦に迫ってきていた。鬼瓦はふと、腕を見た。四時を回った頃だった。
『えっ! 四時だろっ!!』
 鬼瓦は日足の早さに、思わず文句を言った。
「また、来週にするか…。どうせ、ニスも塗らんといかんからな…」
 そう呟(つぶや)くと、鬼瓦はその日の作業を断念した。
 個人個人の思いよう次第になるが、日足の遅い早いを計算に入れて計画は立てた方が賢明である・・という、ただそれだけのお話である。^^

                      完

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 思いようユーモア短編集 (... | トップ | 思いようユーモア短編集 (... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事