水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-82- ボケナス

2018年04月27日 00時00分00秒 | #小説

 ボケナス・・とは人を罵倒(ばとう)する汚(きたな)い言葉だが、語源を紐解(ひもと)けば、外皮の色つやの褪(あ)せたナス。 ぼんやりした人を指(さ)す・・とある。まあ、ボケナス! などと怒られ、ぅぅぅ…と泣けるようなことにはなりたくないものだ。
 とある法律事務所である。所長と若手弁護士が言い争っている。
「なにを言っとるんだっ、君はっ!!」
「いえ! だからナニがコウなりましたから、アレはソウなったというようなことでして…」
「アレがソウだとっ! このボケナスがっ!! アレはナニにしなきゃいかんだろうがっ!!」
「はい…。しかし、コウなりましたから、如何(いかん)ともし難(がた)く…。で、ソウなりまして…」
「なにがソウだっ!! この、ボケナス!! ソウじゃダメじゃないかっ! いいかねっ! なにがなんでもアレはナニにしなきゃいかんのだっ!」
「なにがなんでもですかっ!?」
「ああっ!! なにがなんでもだっ!!」
「死んでもですかっ!!」
 互(たが)いに意固地(いこじ)となり、ついに口喧嘩(くちげんか)の様相(ようそう)を呈(てい)してきた。
「しっ、死んでもとは言ってないだろっ!」
「しかし、所長は、なにがなんでもと…」
「なにがなんでも・・は、言葉のアヤだよっ、君。ははは…」
 ボケナスは言葉のアヤで美味(おい)しいナスに生まれ変わるのだ。

                               完


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