今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

世田谷中心部を歩く

2024年03月10日 | 東京周辺

東京都世田谷区は23区で一番広いので、有名ポイントはいくつか分散しているが(下北沢、自由が丘、二子玉川、三軒茶屋など)
今回は、区立郷土資料館を中心とした世田谷区の中心部まさに地名としての世田谷を歩いた。

主目的は、しばらく休館してリニューアルした郷土資料館で、その地を理解するためにもまずはそこを目指す。

最寄駅は東急世田谷線の上町。
新宿から京王線に乗って上高井戸で世田谷線に乗り換えた。
世田谷線は、上高井戸から三軒茶屋までを結ぶ世田谷の街中だけを走る線。

都電荒川線のように、専用の線路空間を走るが気分は路面電車。
しかもこの路線オリジナルの車両で、小さい二両編成ながら、
座席はロングシートではなく、1人がけ。
ただ椅子の間隔が狭く、私を含む男性は膝を通路側に斜めに出さざるをえない。


上町で降りて(運賃は一律160円で、乗る時にスイカで支払う)、
まずは代官屋敷内の郷土資料館に入る
(新しい施設ながら無料。さすが世田谷は太っ腹)。

約4万年前の旧石器時代からの石器から始まり、石器時代から弥生時代まで、
およそ野川の国分寺崖線沿いの湧水が豊富な台地に人が住んでいたことがわかる。

顔の把手がついている縄文中期(5000年前)の土器(区文化財)が展示されていた(写真)。
世田谷南部の多摩川沿いには古墳が多く、それらの復元模型や副葬品の埴輪類の展示と続く。

中世になると、世田谷の中心部を支配していた吉良(きら)の情報が中心となる。
吉良氏は、三河(愛知県)吉良(吉良町:現在は西尾市に編入)が苗字の地の足利一門で、
その庶流が武蔵の瀬田郷を支配していた(忠臣蔵の吉良上野介は、吉良本家筋)。

戦国期になると小田原北条氏が進出してきて、氏康弟の北条幻庵が吉良氏に嫁いだ娘に宛てた作法心得の文書は、
武家礼法の視点でも貴重な資料(小田原北条氏は、伊勢・小笠原・今川の三礼式家と全て関わりがある)
とりあえずデジカメで全文を撮ったが、誰か翻刻してくれていないだろうか
(当館発行の資料や世田谷区史の資料を探してみたが、見当たらなかった)。

郷土資料館の隣にあるのは重要文化財の代官屋敷で、
彦根藩世田谷領の代官を勤めた大場家の屋敷であった(大場家は敷地に現存)。


代官屋敷の前の通りは、世田谷ボロ市の通りで、そこを突き抜けて北上すると、
寺が2つ並んで、左は真言宗、右は大吉寺という浄土宗の寺。
その大吉寺に、江戸時代の故実家・伊勢貞丈の墓があるという。
※:室町時代の礼式家伊勢氏の末裔
伊勢貞丈といえば、『貞丈雑記』という作法の百科全書の作者で、
武家礼法などの日本の作法を勉強するならまず最初に読むべき本(平凡社の東洋文庫に全4巻で出ている)。
なので、武家礼法を嗜んでいる私が彼の墓を素通りするわけにいかない。

本堂前にある貞丈墓の説明板の QRコードをスマホで開くと、
貞丈の墓の写真が出た。
その墓の姿を頼りに、本堂裏の墓地内を探し、
本堂裏正面の少し奥に傘があるキノコ型の墓を見つけた(写真)。
花も線香もないが、合掌して、感謝の意を示した。


ここからマップのナビを使って、吉良家墓所に行く。
この世田谷の地に来たのだから、その主・吉良家に挨拶したい。

Googleマップでは「吉良家墓所」としか載っていないが、
そこは勝光院(曹洞宗)という立派な寺で(写真)、
吉良家の菩提寺である(書院が区の文化財になっている)。

ここから世田谷線の線路を越えて、豪徳寺の参道入口を右に曲がって、
公園状になっている世田谷城跡に達する。

城跡といっても、吉良家の館(豪徳寺)の端っこの堀や廓のある部分。
それらの縄張り地形は残っているが、公園として通路が整備されているので(堀両側の整った石垣は公園整備用に構築したもの)、山城巡りのようにはいかない。


来た道を戻って豪徳寺の境内に入る。
ここは江戸時代の井伊家の墓所が有名だが、上記したように元は吉良家の館跡。

ただ参拝者は井伊直弼の墓参に来るのではなく、
もっぱら”招き猫”を見にくる(外国人も多い。掛けてある絵馬は中国語だらけ)。
参拝者のほとんどは、招き猫の本尊である観音堂に参拝し、その周囲にずらりと置いてある招き猫の人形の前で写真を撮り(写真)、庫裡で招き猫の人形を求める行列に加わる。

ここの本尊は、我が菩提寺・目黒の五百羅漢寺のずらりと並んだ羅漢像の作者だった。

私は行列には加わらず、寺を出て西に向かって、この地の鎮守・世田谷八幡(なるほど清和源氏の氏神)に参拝する。

かように世田谷は、吉良氏の地であり、それが井伊家に引き継がれた場所だった。



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