博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大敦煌』第33話

2008年07月15日 | 中国歴史ドラマ
今回から第3部開始です。舞台となるのは1937年の敦煌。フランス帰りの画家夫妻が敦煌にやって来るところから話が始まります。この画家夫婦を演じるのが、『笑傲江湖』の岳不群役でおなじみの巍子と、陳家林作品の常連で幸薄い女性役としておなじみの李建群。この面子だと、「旦那の方はいい人そうに見えて腹に一物あるんじゃねえかなあ」とか、「奥さんの方は旦那に見捨てられて惨めな最期を迎えることになるんかなあと」とか、ついついいらん想像をしてしまいます。

それとしょっぱなから敵役となるらしい日本人が登場していますが、何か日本人の描き方が『ドラゴン怒りの鉄拳』からあんまり変わってませんなあ(^^;) 役者さんの日本語も他のドラマと比べたらしっかりしている方だと思いますが、やっぱり所々おかしな言い回しになっていたり、発音が明瞭でなかったりしてますね。で、後に主人公の画家夫妻と関わる青年千葉三郎はどうやら千葉周作の子孫という設定のようです。上司の宮本というのはひょっとして宮本武蔵を意識しているんでしょうか。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『大明王朝1566』その2

2008年07月13日 | 中国歴史ドラマ
『大明王朝1566』第8~14話まで見ました。

浙江一帯が大洪水に見舞われ、民衆が日々の職事にも事欠く中で、巡撫の鄭泌昌と何茂才は「改稲為桑」政策をゴリ押ししようとしますが、新たに杭州知府となった高翰文、同じく新任の建徳県知県王用汲、そして我らが海瑞が反対の意を示します。それに対して巡撫側は、まず高翰文に悪質なハニートラップを仕掛けて弱みを握り、彼を政策に反対出来ない立場に追い込みます。ついで淳安県の有力者斉大柱が倭寇から食糧を買い入れたのが発覚したことから、その淳安県の知県である海瑞に倭寇と通謀しているという疑いをかけ、罷免へと追い込もうとします。いやあ、官場はまっこと恐ろしかところです(^^;)

しかし海瑞はそれにもめげず、斉大柱の処刑を引き延ばしたり、更に近隣から食糧を調達して賑恤に力を注いでいきます。そうこうしているうちに御用商人の沈一石が食糧支給と引き替えに農民の田地を買いたたきにやって来るという情報が流れ、海瑞は沈一石の糧船の入港を阻もうとしますが、沈一石は勅旨を奉じて大洪水の被害者の賑恤にやって来たと主張し……

このドラマ、状況がコロコロと変化するもんで、見ている私の語学力不足も相まって細かな話の流れとか、誰が悪の首魁なのかといったことがわかりにくくなっております(^^;) 中央政界の元老は厳崇にしろ、宦官の呂芳にしろ、嘉靖帝や民衆のことをそれなりに思いやっているという設定になっているんですね。むしろ厳崇の息子の厳世蕃とか呂芳の子分で江南織造局のトップの楊金水、巡撫の鄭泌昌・何茂才といった二線級の人材が典型的な貪官になっている感じです。で、何を考えているのやらつかみ所が無いのが嘉靖帝と、御用商人の沈一石と。

また、このパートから『本草綱目』の著者として知られる名医李時珍が登場しますが、元宮廷の太医で現在は流浪の身ということで、雰囲気的には武侠物によく出て来る神医キャラみたいになっていますね。これで後はブラックジャック並みの神業を披露してくれれば完璧なのですが(^^;)

一方、都では嘉靖帝が浙江で田地買収の動きがあることを知って激怒し、海瑞は倭寇との通謀の罪を押しつけようとする何茂才の追究をはねのけることに成功しますが……

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベトナムの軽身(キンタン)

2008年07月12日 | 雑記
ちょっと前にTBSの『世界ウルルン滞在記』が終了するというニュースが出ていましたが、これを機に『ウルルン』で最も印象に残っている回について書き留めておくことにします。それは3~4年ほど前に放映されたベトナムの軽身(キンタン)という武術を取り上げた回です。

レポーターの若手男優(名前は忘れました)がベトナムの田舎に住んでいる師範のもとで1週間か2週間ほど軽身を修行するという内容なのですが、そもそも軽身とはどういう武術かと言いますと、これを身に付けると川などの水上を走って渡れるようになるという、日本の忍術でいう水蜘蛛の術、中国でいう軽功のようなものです。

で、レポーターは25メートルほどの幅の川の上に長いゴザを浮かべ、その上を走って渡れるように修行させられることになります。常識的に考えてそんなこと出来るはずがないと言いたいところですが、恐ろしいことに軽身の師範(40過ぎと思しき髭の男性)と師範代(20歳前後の医学生)は川に沈まずに向こう岸まで疾走してました(^^;) しかしというか当然というか、肝心のレポーターはそんな武術が一朝一夕で身につくわけもなく、ゴザの上で1歩か2歩ほど沈まずに済むかなという程度で帰国することになるのですが……

その師範ですが、なぜか頭に髷を結っており、更に一昔前の香港の武侠ドラマみたいな安っぽい着物を身につけています。彼の口からは「以前はもっとたくさん軽身の使い手がいた。ベトナム戦争の時に多くの軽身の使い手がベトコンとなり、敵に追われた時に川に浮かぶ葉っぱを踏み台にして向こう岸に渡って逃れたのだ」という恐るべき伝説が語られます。

師範代の医学生については、レポーターが彼の実家で寝泊まりすることになるのですが、部屋にブルース・リーのポスターが貼ってあるので「ブルース・リーが好きなのか?」と尋ねますと、「昔は彼を尊敬していた。しかし軽身をマスターしてからは彼を凄いとも思わなくなった」というこれまた恐るべき返答が…… ちなみに師範代の将来の夢は、医者として医療に従事するかたわら子供達に軽身を教え、ベトナム中の子供達が川を走って渡れるようにすることだそうです。

いろんな意味で強烈な回でしたが、これを見て以来私は水蜘蛛の術や軽功の実在を信じるようになったのであります(^^;)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『古書通例』

2008年07月10日 | 中国学書籍
余嘉錫著、古勝隆一・嘉瀬達男・内山直樹訳注『古書通例 ―中国文献学入門』(平凡社東洋文庫、2008年6月)

中国文献学の名著として知られている余嘉錫の『古書通例』ですが、まさか訳本が出るとは思いもよりませんでした(^^;) 

中国古代の書籍が偽書であるかどうかを、書籍の内容ではなく体例から判断していこうというのが本書の主旨です。先秦の諸子は後世の文集に相当するものであり、著者が生前に残したとされる単篇を後学が集成したものである。だから古文献の多くはまとまった形ではなく単篇で通行することもままあり、また篇の構成などについて特に前漢末の劉向による校書以前は定本と呼べるものがなかった。――

これらは本書の主張の一端ですが、本書が著述された時期に中国の学術界を席巻していた疑古派の学説が、1970年代以後の馬王堆漢墓の帛書や郭店楚簡などの出土資料の発見によって急速に説得力を失っていったのに対して(疑古派によって何となく偽書とされていた諸子の書が、出土資料によってそうでないことが明らかになってきているというのが近年の状況です)、本書の主張が逆に説得力を増してきているのには凄みを感じずにはおれません。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『大明王朝1566』その1

2008年07月08日 | 中国歴史ドラマ
先日上海新天地で購入したDVD『大明王朝1566 ―嘉靖与海瑞―』(全46話)をボチボチと見てます。

この物語の主人公は明朝皇帝嘉靖帝(世宗)と、清官として知られた海瑞の2人。嘉靖帝は子供の無かった従兄の正徳帝(武宗。この人は明朝皇帝の中でも極め付きの暴君というか奇人で、彼をネタにしたドラマも色々とあるようですが、ここでは省略)の後継として帝位を継ぎましたが、即位するやいなや、本来なら皇室の祖先祭祀で先帝正徳帝の父親である弘治帝(孝宗)を父として祀るべきところを、実父であるものの帝位に就いていない興献王を父として祀りたいと言い出して駄々をこね、3年半にわたって「大礼の議」と呼ばれる大論争を巻き起こします。

この「大礼の議」は反対派の官僚を粛清しまくったりして、ほぼ嘉靖帝の望み通りに決着がつきますが、そのあたりから段々政務に嫌気がさしてきたのか道教にハマり出し、怪しげな道士が宮廷に出入りするようになったり、青詞(道教の祭文)をうまく書けるという理由でこのドラマにも登場する厳崇を抜擢したり、不老長寿の薬になるということで処女の経血でつくられた丹薬を服用したりという奇行が目立つようになります。


ドラマ中の嘉靖帝の修行シーン。はっきり言って異様です……

更にモンゴルの侵入と倭寇による略奪のいわゆる北虜南倭に悩まされる国事多難の折にも関わらず、治世の半ば頃から自ら造園させた西苑の万寿宮に引き籠もってしまい、政治を厳崇らに任せきりにして20年以上も宮廷に出て来ない始末……

一方の海瑞はそんな嘉靖帝を諫言する上奏を行った硬骨漢ですが、一般的には文化大革命の引き金となった戯曲『海瑞罷官』の題材となった人物として知られています。ですからこの海瑞が主人公となっていることで、このドラマの政治性の強さが窺われるわけなんですが(^^;)

タイトルにある1566年(嘉靖四十五年)とはこの海瑞が上奏を行った年であり、また嘉靖帝が崩御した年でありますが、ドラマの方はそれに先立つ1561年(嘉靖四十年)から始まります。というわけで前置きが長くなりましたが、今回は第1~7話まで鑑賞。

この年、朝廷では外国の商人に盛んに取引されている絹織物を増産するため、浙江省で田地を潰して桑畑へと造り替えさせる「改稲為桑」政策の実施を決定。地元民が強く反発する中で浙江省では折悪しく豪雨による大洪水が発生。政策を推進する厳崇の息子・厳世蕃はどさくさ紛れに浙江各地の堤防を決壊させ、多くの田地を水没させて再開発をやりやすいようにしようと画策。他の高官もこの政策をゴリ押ししようとしますが、そこで浙江の民衆のために立ち上がったのが、嘉靖帝の皇子裕王(後の隆慶帝)の推薦で淳安県の知県となった海瑞であるというわけです。

ドラマに則して当時の官界の状況を整理すると、張居正らをブレーンとする裕王派と、厳崇・厳世蕃親子派、そして呂芳を頂点とする宦官の3派が並び立ち、対立し合っています。しかし主役2人のほか、戚継光や張居正なんかは良いとして、その他諸々は馴染みのない面子ばっかりなんですが、却ってそういう状況に萌えています(^^;)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『新・上海グランド』第1話/『大敦煌』第32話

2008年07月06日 | 中国近現代ドラマ
本日からテレビ大阪でも『新・上海グランド』の放映が始まりました。

デジタルハイビジョン画質に日本語と中国語の2カ国語放送と気合いが入ってます。主人公・許文強の過去など、まだまだ話や設定の見えない部分はありますが、しょっぱなから銃撃戦が繰り広げられたりして割と楽しく見てました。今後精武門やら日本のヤクザ組織やらが絡んでくるということなので楽しみです。主演の黄暁明も、『神雕侠侶』の楊過とも、当然三枚目の韋小宝とも異なるキャラクターに難なくハマってますね。

しかし気になったのが、「当時の上海は弱肉強食の世界」というナレーションとか、「この上海で下心無しに人に親切にする者はいない」というセリフ。当時の上海はかように生き馬の目を抜く世界だったのかーーーっ!!(^^;)

で、お次は久しぶりの『大敦煌』です。気がついてみれば今回が第2部の最終回でした。

当初は歴史ドラマとして見るべき所が無かった第1部と比べ、話の展開が面白いなあと思って見ていましたが、途中から匪賊の女頭領が主人公の文人に惚れて、怪しげな薬を飲ませて振り向かせようとしたり、悪徳商人が外国人と結託して前から目をつけていた棺桶屋の娘さんから婚約者を引き離して妾にしてしまったりと、かなりどうでもいい話が続く始末…… で、終盤近くで敦煌文書が世に出て、ようやく話が動いてきました。

それにしても外国人や敦煌文書への官府の対応が、同時期の義和団事件の影響を受けてコロコロ変わるのが面白いところ。(当時本当にあんな感じだったのかどうかは知りませんが……)しかし今回もバッドエンドになってしまって「あーあ」という感じです(^^;) 

来週から放送時間が火曜日の4時からに変わり、1937年の敦煌を舞台にした第3部が始まりますが、予告を見ている限りでは中国人の愛国心を強調するような要素もあるものの、お話自体は面白そうですね。第2部までのように途中で展開がダレまくるんじゃないかと不安ではありますが……
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『シルクロード英雄伝』第1~2話

2008年07月05日 | 武侠ドラマ
先週からBS日テレで放映が始まっている『シルクロード英雄伝』(原題:絲路豪侠)ですが、これって後漢の時代の西域を舞台にした作品だったんですね。歴史上の人物としては班超の息子の班勇が出て来ます。それにしても『三国志』関係以外で後漢が舞台になる作品って非常に珍しいのでは…… まあ、私が知らないだけで、他にも色々とあるのかもしれませんが。

肝心の内容の方ですが、ストーリーが面白いわけではなく、アクションシーンも多いわけではなく、今の所普通につまらない武侠ドラマという感じです(^^;) ヒロインがかわいくないのもマイナスポイントですね。次回もこんな調子ならもう見ないと思います。どっちみちこちらの予定通りにいけば日本で全話見られないわけですし。

で、明日からは大阪方面で『新上海灘』の日本語版の放映が始まりますが、『大敦煌』中編最終回と合わせて感想をアップしたいと思います。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『昭和天皇』/『雪山飛狐』

2008年07月05日 | 日本史書籍
今月、金庸『雪山飛狐』の文庫版が刊行されました。例によってドラマ版DVDのリリースに合わせての刊行ですが、同じくドラマ版の原作となっている『飛狐外伝』も引き続いて文庫化されるのかどうか気になるところです。なお、今回も書き下ろしの解説は無しです。

原武史『昭和天皇』(岩波新書、2008年1月)

これまでさほど重視されてこなかった宮中祭祀を軸として昭和天皇の生涯を追った著作です。

宮中祭祀や宮城外での式典などへの入れ込み具合から見ると、昭和天皇のメンタリティは戦前も戦後も大して変わっていないのではないかとか、自身の生物学研究への取り組みが却って「神」(この場合は皇祖・皇宗ということになるんでしょうけど)への信仰を強めるきっかけになったのではないかとか色々ツッコんでますが、中国殷周期の祭祀儀礼なんて難儀なものを専攻している立場からすると、本書が帝王にとって祭祀儀礼とはどういうものなのかを示してくれているのが興味深いところです。

それにしても20世紀の我が国の状況が紀元前の中国を勉強するのに役立ちそうだというのは、喜ぶべきなのかどうか(^^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『失われた年表を求めて ―夏商周年代確定プロジェクト』

2008年07月03日 | TVドキュメンタリー
VCDパッケージには『四千年前的叙事 遠古年輪』とありますが、『尋找失落的年表 ―夏商周断代工程』が元々のタイトルのようです。

中身は中華人民共和国建国50周年記念プロジェクトとして進められた夏商周断代工程の記録フィルムです。全3集で、第1集がプロジェクトのあらましと夏~殷代の二里頭遺跡・鄭州商城・偃師商城などの紹介、第2集が殷の武丁の在位年数の検討や、西周期の晋侯墓地の紹介など、第3集が殷周革命の年代の検討を取り上げています。

全体的に岳南の『夏王朝は幻ではなかった』に書いてあるようなことをザーッとなぞったような番組でした。第2集で故人の鄒衡とか馬承源のインタビューが収録されているのですが、この番組はいつ制作されたものなんでしょうか(^^;) 

内容的に面白いのもこれらのインタビューで、周囲の人々に墓泥棒に襲われるのではないかと心配されながら、鄒衡一人晋侯墓地の近辺で寝泊まりしていた話とか、燕の瑠璃河遺跡で出土した卜甲に最初に日本人の留学生が文字が刻まれているのを発見した話とか、上海博物館が購入した晋侯蘇鐘は、当初台北故宮や日本人も購入を検討していたが、鐘の表面にタガネで銘文を線刻してあるのが偽物臭いということであきらめたというような話が紹介されていました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

やる夫で卒論

2008年07月02日 | 雑記
最近2ちゃんで、AAキャラのやる夫を主人公とした入門シリーズが続々と作られており、中国史系では「やる夫が科挙を受けるようです」シリーズなんかがよくまとまっているなあと思ってみていたのですが、気がついてみると下のようなスレが出来てました。

VIPワイドガイド:やるおで学ぶ卒業論文の書き方(文系編)

これは世界一わかりやすい文学部での卒論の書き方入門かもしれんなあと思って見てましたが、よくよく考えると、こういう指導って本来は指導教官がやるべきものですよね。こういう丁寧な指導が必要な学生にフォローが行き届いていないというのが、今の大学教育の問題点のひとつなのかもしれません……
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする