博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『古書通例』

2008年07月10日 | 中国学書籍
余嘉錫著、古勝隆一・嘉瀬達男・内山直樹訳注『古書通例 ―中国文献学入門』(平凡社東洋文庫、2008年6月)

中国文献学の名著として知られている余嘉錫の『古書通例』ですが、まさか訳本が出るとは思いもよりませんでした(^^;) 

中国古代の書籍が偽書であるかどうかを、書籍の内容ではなく体例から判断していこうというのが本書の主旨です。先秦の諸子は後世の文集に相当するものであり、著者が生前に残したとされる単篇を後学が集成したものである。だから古文献の多くはまとまった形ではなく単篇で通行することもままあり、また篇の構成などについて特に前漢末の劉向による校書以前は定本と呼べるものがなかった。――

これらは本書の主張の一端ですが、本書が著述された時期に中国の学術界を席巻していた疑古派の学説が、1970年代以後の馬王堆漢墓の帛書や郭店楚簡などの出土資料の発見によって急速に説得力を失っていったのに対して(疑古派によって何となく偽書とされていた諸子の書が、出土資料によってそうでないことが明らかになってきているというのが近年の状況です)、本書の主張が逆に説得力を増してきているのには凄みを感じずにはおれません。
コメント (2)
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