博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2015年12月に読んだ本

2016年01月01日 | 読書メーター
儒教とは何か 増補版 (中公新書)儒教とは何か 増補版 (中公新書)感想増補版が出たのを期に再読。これまで主に議論や研究の対象となってきた儒教の礼教性に対して、宗教性を強調するのが本書の特色であるが、「当時の儒教知識人が、霊魂の存在を認める自分たちの宗教性を忘れ」とか「儒教知識人の大いなる儒教誤解」といった記述を見ると、当時の人々に忘れられ、誤解される儒教の宗教性とは一体何なんだろうかという疑問も生じる。読了日:12月1日 著者:加地伸行
つながりの歴史学つながりの歴史学感想中国古代史・日本中世史・日本近世史・西洋近代史の研究者が、それぞれの分野の研究史と各論とをそれぞれ担当し、連結させるという構成。テーマとなっている「つながり」とのつながりは少々強引かなと。読了日:12月4日 著者:本田毅彦,木村茂光,柿沼陽平,山本英貴
「昭和天皇実録」を読む (岩波新書)「昭和天皇実録」を読む (岩波新書)感想既に同種の実録関連本もいくつか出ているが、本書では同じく原氏が岩波新書から出した『昭和天皇』の続編という番外編という位置づけから、宮中祭祀に関して、また昭和天皇と母の貞明皇后との関係、カトリックやローマ教皇との関係に重点を置いている。終戦直後に実際に昭和天皇がカトリックに改宗していたとしたら、現在の日本にどういう影響を及ぼしていただろうか?読了日:12月6日 著者:原武史
代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書)代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書)感想「代議制民主主義」と題しているが、議会制度・選挙制度だけでなく、大統領などの執政制度も含めて検討している。日本の代議制民主主義もおおむね世界的な傾向と歩調を合わせており、二院制の国会のねじれ、有権者の地方議会への不審と地方首長の突出など、日本が抱える問題は、世界各国が共通して抱えている問題ということになるようである。代議制民主主義の問題点に関して目新しい解決案を提示しているわけではないが、今の問題とその背景をうまく整理していると思う。読了日:12月9日 著者:待鳥聡史
中国学の散歩道―独り読む中国学入門 (研文選書)中国学の散歩道―独り読む中国学入門 (研文選書)感想加地氏の学術エッセーというか雑文集。個人的に考えさせられたのは、伝世文献での『詩経』の引用は、特定の詩篇や詩句に限られているのではないかとする第三章の「『詩経』からの引用」と、現代中国語の発音で漢詩や漢文を音読することの非を説く第八章の「漢詩指導についての覚書」。第九章の講演録では、中国学が資料の調査と分析を重視する分野であると説くが、別の言い方をすると、「ブラック体制」が養われる分野ということになるだろうか。読了日:12月11日 著者:加地伸行
真田四代と信繁 (平凡社新書)真田四代と信繁 (平凡社新書)感想信幸・信繁兄弟の父昌幸に関して、信玄のもとで武藤家の養子となるなど、武田氏の譜代格として遇される一方で、兄信綱の氏を承けて真田家を継承する際には信綱側から文書が譲渡されないなど、複雑な立場にあったと指摘。その他、信幸と三成とのつながり、大谷吉継がハンセン病ではなかったと考えられること、秀吉死後の淀殿が秀頼の母として、当時一般的に認められていた後家権を発動したと見られるといった、真田家の周辺人物や豊臣政権に関する指摘で面白いと感じた点があった。読了日:12月15日 著者:丸島和洋
漢文入門 (学芸文庫)漢文入門 (学芸文庫)感想入門とあるが、無論テキストとか参考書的な意味での入門書ではない。漢文とは何か、古代漢語による文献は日本でどうして漢文として、現在のような形式で読まれるようになったのかを解説した書である。本書によって現代漢語がわかれば漢文を読解することができるという意見には問題があるのはもちろんとして、一方で訓読形式で古代漢語による文献を読むという手法にも問題があるのではないかという疑問を抱かされる。読了日:12月18日 著者:前野直彬
福沢諭吉の朝鮮 日朝清関係のなかの「脱亜」 (講談社選書メチエ)福沢諭吉の朝鮮 日朝清関係のなかの「脱亜」 (講談社選書メチエ)感想福沢諭吉の朝鮮論と言えば「脱亜論」が知られるが、それ以外の朝鮮関係の社説はどういう内容で、どういう背景のもとで書かれたのか、そして福沢自身と朝鮮人との関わりはどのようなものだったのかを探る。当時慶應義塾に朝鮮からの留学生が相当数存在し、兪吉濬のように福沢の息子ともどもの付き合いとなった者や、祖国の政府高官となった者も存在するということで、当事者として、実際に交友を持った朝鮮人や、日朝清三ヵ国間の関係に散々振り回された上での「脱亜論」ということになりそうだ。読了日:12月21日 著者:月脚達彦
つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る (新潮選書)つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る (新潮選書)感想縄文時代・弥生時代という名称が歴史教科書に採用されたのは戦後になってからだったという衝撃的な指摘からはじまる縄文時代研究史。縄文時代・弥生時代のような形での時代区分は外国では類例がないガラパゴスな区分ではあるものの、ガラパゴスな分だけ使い勝手がいいという困った状況に陥っているようだ。しかしであるとすれば、実は縄文時代には既に農耕が始まっていたというような指摘や議論が何だか馬鹿馬鹿しく見えてくるが……読了日:12月22日 著者:山田康弘
蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書)蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書)感想葛城集団の中心氏族として、当初から朝廷で強い勢力を誇った蘇我氏が、大化の改新で本宗家を滅ぼされ、奈良・平安時代を経て中・下級貴族へと没落していくまでの過程を概観。蘇我氏の「その後」に相当の紙幅を割いているのが本書の特徴。中・下級貴族への没落が蘇我氏のみならず、物部氏の子孫の石上氏・大伴(伴)氏・橘氏など、古代氏族に共通した展開であるという点が興味深い。読了日:12月24日 著者:倉本一宏
今すぐ中国人と友達になり、恋人になり、中国で人生を変える本 (星海社新書)今すぐ中国人と友達になり、恋人になり、中国で人生を変える本 (星海社新書)感想本書が他の中国・中国人理解本と異なるのは、現実に中国で暮らすことを前提としている点。中国では酒を飲めないのは恥ではなく、むしろそれほど飲めないのに中途半端に飲んでしまうことの方が問題であるとか、中国ではエンタメ関係の流行は何でも規制されるとか、一人っ子政策下では女の子を産む方が勝ち組だとか、重要な指摘が盛り込まれている。最も重要な指摘は、あとがきにある、内戦がおころうと何があろうと、(当たり前だが)中国人は絶対にいなくならないということ。読了日:12月26日 著者:井上純一
ラーメンの語られざる歴史ラーメンの語られざる歴史感想アメリカ人研究者による、ラーメンをめぐる日本社会・文化史。元々中国・台湾系移民の手によっていたラーメンが、中国色を消して日本の国民食となっていく過程、(そもそもラーメンという名称自体、支那そばという名称を嫌った台湾系店主が使い出した呼び方とのこと)終戦直後のアメリカによる食料援助(実際は無償ではなく日本側が対価を払っていたが)とラーメンとの関係、そして台湾系移民で、アメリカからの余剰小麦の利用法としてチキンラーメンの売り込みを図ったと、日清食品の創業者安藤百福の業績を歴史的に位置づけている点が読みどころ。読了日:12月27日 著者:ジョージソルト
香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)感想戦後、大陸からの難民の流入によって急激に人口が膨れあがったイギリス統治下の香港。難民たちにとってあくまで仮住まいのはずだった土地が、中国への返還決定を受けて、急激にイギリスによって民主化改革が進められ、急激に「香港人」としての意識が形成され、急激に副題にある「中国と向き合う自由都市」となっていく過程を描く。近年話題となった「雨傘運動」についても多くの紙幅を割き、ジャッキー・チェン、金庸といったポップカルチャーについても言及する。香港でのあり方を通じて、日本の難民やデモに対する新たな見方を迫る好著。読了日:12月29日 著者:倉田徹,張暋(チョウイクマン)

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