博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『日本の歴史00 「日本」とは何か』

2011年09月13日 | 日本史書籍
網野善彦『日本の歴史00 「日本」とは何か』(講談社学術文庫、2008年11月)

講談社が2000年頃に刊行した『日本の歴史』の文庫版ですが、いつの間にかこのシリーズ、文庫化されていたんですね。本書は特に網野氏の研究の集大成的な内容になってます。ネタ的にも面白い話がいくつか見られたので、ここでは特にその中から2つ紹介してみます。

ネタその1

「日出ずる国」という意味の「日本」という国号が中国の側から我が国を指す呼び方であり、そのことから「日本」という国号が大嫌いだという江戸後期の会津の国家神道家佐藤忠満の意見を紹介する網野氏。そしてNHKの番組で、一部の支配者が決めた「日本」という国号は国民の総意で変えることができると発言。それに対して視聴者から「日本が嫌いなら日本から出て行け」というお叱りを頂戴しますが、それに対する網野氏の反応は……

「こうした立場に立つあなた方こそ、この国家神道家の意志を継承して『日本』という国号が大嫌いだと言うべきであり、また中国側に視点を置いた『日本』という国号の変更運動をおこされるべき。」……一応理屈は通っているのですが、通っているだけに腹がよじれるほど笑ってしまいました(^^;) しかし同時に、世界の国の中で一部の支配者が決めたものではない国号が果たしてどれだけ存在するのかという疑問も浮かんでくるわけですが……

また、本書では平安時代の貴族紀淑光の、「『日本』が『日の出るところ』という意味であるとすると、我が国は確かに唐の国から見ると太陽が昇ってくる東の方角に位置するわけだが、この国にいて見ると、太陽は国の中からは出ないではないか。それなのになぜ『日出づる国』ということになるのか」と、「日本という国号はよく考えるとおかしいんじゃね?」という疑問を述べていることを紹介しています。『日本』という国号に関する議論というか疑問は割と古くから存在したわけですね。

ネタその2

江戸時代の「日本国」に対する認識として、春画の文章や川柳まで史料として引用する執念には脱帽です。しかし「男性の快美の絶頂」の表現として「日本国がひとつになって、身うちが解けて、煮こごりになるようだ」とか「逆鉾の先々へ日本の寄る如し」なんて文章を引用しているのを見ると、余裕で腹筋崩壊できるのですがwww でもこういうのを見ると、割りとマジな意味で歴史学の可能性を感じてしまいますね(^^;)

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5 コメント

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Unknown (さとうしん)
2011-09-18 20:37:30
>山科さま
>外国と交渉なり戦争なりがあってはじめて国号をつくるわけで、

まあ、確かにそうですね。中国の王朝名にしても、秦や楚に対する漢といった具合に他の勢力を意識したものでしょうし、「中国」に至っては周辺の勢力との関係をモロに意識した呼称ですしね……
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外国がないと国号はない (山科)
2011-09-18 14:46:07
 外国と交渉なり戦争なりがあってはじめて国号をつくるわけで、外国を知らないあるいは無視しているところの場合は、意識しないかないんじゃないかな。
  「大日本は神国なり」と北畠親房が書いたのは蒙古侵略の60年後でしょう。
 だから外国から呼ばれる名前が国号になるのは少しもおかしくない。網野さんも妙なこといってるなあ。
 中国でも日本でも、
  本朝とか國朝とか聖朝とか自称することが多いのでは?まあ、「おらがくに」とかせいぜい「おおやしま」とかいうようなのが普通でしょう。
  今昔物語も本朝・震旦・天竺です。

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Unknown (さとうしん)
2011-09-14 19:19:04
>飯香幻さま
厨二病……たしかに言えてるw

>川魚さま
網野氏のこれまでの研究のエッセンスが盛り込まれており、このようにネタも豊富でと、ホントにいい本だと思います(^^;)
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Unknown (川魚)
2011-09-14 00:31:51
これはええ本ですよね、愛読書ですわw
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Unknown (飯香幻)
2011-09-14 00:11:47
日本男児は江戸時代から壮大な中二病を夜な夜な...いやなんでもない
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