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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『清国作法指南』

2010年12月10日 | 中国学書籍
W.G.ウォルシュ著・田口一郎訳『清国作法指南 外国人のための中国生活案内』(平凡社東洋文庫、2010年9月)

20世紀初め、清国に派遣された英国人宣教師が当時の人々の風習などをまとめたものですが、あくまで清国に暮らす西洋人がマナー上の問題で恥を掻いたり、トラブルに巻き込まれたりしないためのハウツー本であり、民俗誌ではないのがポイントです。ここらへんは中国人の重視する葬儀関連のマナーや暦に関する知識がかなりの紙幅を占めているという所からも見てとれるでしょう。また、実際の動作を写真で実演して見せているという点もなかなか面白いポイントです。

しかし普段から郷紳などの有力者や官憲との付き合いをたやすなとか、夜警も捕役も強盗の一味だから対応に気をつけろといったコメントがあるところを見ると、著者の中国での生活の苦労がしのばれます(^^;) それと読者に中国人の服装や身なりをするなとコスプレ禁止令を出しているのは面白いところですね。理由は、当時の服装は元来満州族の民族衣装であって漢族の服装ではないし、またうっかり身分不相応の服装をしてしまうことから、却って中国人に反感を持たれたりナメられたりする原因となるからだとということですが……

あと、個人的にウケたのが、翻訳者解説の「私の専門である古典に現れるような動作は、中国人の実演は望むべくもなく(中国の時代劇の動作を信用してよいものだろうか)」(309頁)という一文。確かに時代劇に出て来る動作とか言葉遣いなんてのはナンチャッテの要素が強いんですよね(^^;)