博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『文明の生態史観』

2010年05月28日 | 世界史書籍
梅棹忠夫『文明の生態史観』(中公文庫、1998年)

本書は今までいろんな本で引用・紹介されてきたので、何となく読んだ気になっていたのですが、それではいかんということで実物を読んでみることに。本書の内容は以下の2つにまとめられます。

○日本と西ヨーロッパは地理的には東西に大きく隔たっているが、ほぼ同じような歴史的経過をたどって近代化を果たした。
○日本と西ヨーロッパの間に挟まれた地域は、中国・インドなど日本と同じくアジアに属する国が大半であるが、日本とは異質の歴史をたどってきた。

この2つがメインの主張となり、本書では表題にもなっている論文「文明の生態史観」でそのアウトラインを示し、それと関連する文章を数篇収録してその内容を補足しているわけですが、そのメインの主張以外にも面白い主張が2、3あったので、今回はそれを紹介してみます。

○日本の言論人・教師・官僚といった知識人は、政治家と非常に近い立場にあり、政治家になりたいと願いつつ条件が許さず、政治家になれないでいる人々である。だから彼らは条件さえ許せばいつでも政治家になろうとするし、常に統治者の意識になって思考・発言する。これはプロ野球選手のなりそこないが野球評論をやるようなもので、彼らの政治談義はいわば欲求不満の表明なのである。(「生態史観からみた日本」より)

……何で日本にタレント議員・候補が多いか、あるいは何でマスコミがいつでも執拗に政権批判するのか分かった気がした(-_-;) 要するに阪神ファンが監督になったつもりで選手起用や試合中の采配を批判するようなもんなんですね。ええ、わかります。

○国学の発達とナショナリズムの強さや性質には関連性がある。タイのように国学が未発達な国は、ナショナリズムは単に外国と対抗するための手段となり、日本のように「右翼化」しない。(「タイからネパールまで」より)

……そう言えば中国も国学が発達しておりますなあ。韓国はどうなんでしょう?
コメント (3)
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