goo blog サービス終了のお知らせ 

博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国雑話 中国的思想』

2007年11月09日 | 中国学書籍
酒見賢一『中国雑話 中国的思想』(文春新書、2007年10月)

刊行された当初はスルーしてましたが、宣和堂さんのブログでの紹介を見て読んでみることに。中身は「劉備」「仙人」「関羽」「易的世界」「孫子」「李衛公問対」「中国拳法」「王向斎」の八題噺ですが、後半の拳法・気功絡みの章が、どこまで本当なんだかわからないような武術家たちの武勇伝がてんこ盛りで滅法面白いです(^^;) 

ただ、これだけ武術家を取り上げておきながら黄飛鴻と霍元甲について全く言及していないのが不審でありますが、拳法修業に健康増進の効果があることから、子供の頃に病弱な体質を治すために修業を始める人が多かったという話や、外国人との異種格闘技戦に挑んだ達人の話のように、霍元甲の生涯と重なるようなエピソードが目に付きますね。

あと、太極拳の諸流派分派の過程をわかりやすくまとめているのも参考になります。太極拳は河南省温県の陳氏(すなわち陳式太極拳)が元祖とのことですが、後に陳派から分かれ出た楊派が自分達こそ太極拳の本宗だと主張するため、武当山の仙人張三丰が太極拳の開祖だと言い出し、その伝承が広まったとのこと。

しかし著者がカンフー映画で太極拳使いを見たことが無いというのはこれまた不審です。李連杰主演の『マスター・オブ・リアル・カンフー』とか、張三丰や太極拳を扱った作品はいくつかあると思うのですが。まあ、この辺りチェックが甘いというよりは、酒見氏は拳法そのものに興味があるのであって、この手の創作物に興味があるわけではないということなのかもしれませんが。(ちなみに私はその逆です……)