無意識日記
宇多田光 word:i_
 



昨年の私個人の流行語大賞は、"New Stuff Is Coming Soon"だった。日本語にすれば「間もなく新しい作品が出ますよ」という意味だが、これは昨年の4月に光がロンドンの地下鉄でファンに対して呟いた一言である。有言実行、約束を守る女宇多田ヒカルはしっかり新曲「桜流し」を発表してくれた。あれ、そうすると私の真の流行語大賞はズバリ「桜流し」か。……まーどっちでもいいか。

という事は、もしかしたら私の今年の流行語大賞はこの"But it is coming very closer."になるかもしれない。照實さんが1月18日の朝8時8分18秒に呟いた一言である。なんじゃこの一か八かの数字の並びは。

内容はこうだ。ファンから「UtadaのLIVEdvdまだー?」と訊かれて「ごめん、随分長くかかっているね。でも、もう本当に間近だから」と答えた、という顛末。その最後の部分が"But it is coming very closer."である。ここに入っている"very"には要注目である。ニュアンスの話として、ただの"But it is coming closer."だったら、何らかの進展なり前進なりがあった、という意味にしかならない。もしかしたら諸問題100のうち1つか2つを解いただけで99か98の問題は残っているのかもしれず先は長い事を暗示させる事すらありえる。

しかし。"very closer"だと随分と違う。これは、積極的に「ゴールが近い」事を示唆する。ここまで来ればもう後は時間の問題、最後の1つ2つの懸念さえ払拭できればオールグリーンだ、という風にすら取れる。つまり、いよいよ「Utada In The Flesh 2010 FOOTAGE」のリリースが近いのである。恐らく、今年中には出すつもりではないか。「光は毎年何かをリリースする」法則は15年目も安泰とみていいか。12月デビューだと「何年目」ってのも定めにくいが。

それにしても、ここまで来てしまえばツアー自体も3年前、Wild Lifeも開催されたお陰で新鮮味さも薄れた。何というか、Footage自体に「歴史的価値」を見いだせる域に入ってきているようにも思える。つまり、名アーティストの名演奏、いついつどこどこのものが有名ですね、この度その模様を初DVD化しました、という感じのリリースに近くなるなではないかという事だ。新作、というより生まれながらにしてアーカイブスというか。

となると、売り方も考えた方がいい。さっき先走ってDVDと書いたが、2013年にUtadaのLIVE映像が欲しいという層なんてDVD、出来ればBlurayで出して欲しいに決まっているのである。つまり、配信で販売しても何のメリットもないんじゃないか、という事だ。

最近よく使う言葉が「配信で済ませた」である。日本での音楽配信の位置付けがよくわかる台詞だ。"で済ませる"ものなのだ配信なんてものは。Utada Live Footageともなれば、これを買おうという層で「配信で済ませ」たいと考える人の割合は相当少ないと見積もりたい。となるとやはりこの作品は円盤で出すべきなのだが果たしてそれは可能なのか…もう少し経緯を見守りたい。

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30歳か~。

ただの数字だな。

オフ会で座長と会ってきたんだけど、予想通りというか予想に反してというか(どないやねん)、相当ニッチな方向でチェックしてるらしい。5人しか観客の居ないLIVEに行ったり。どんなんやそれ。

邦楽には「広場」がなくなりつつある。正確にいえば、"本物の"広場しか残っていない。それはフェスティバルや対バンといったLIVE会場だ。まずはここをチェックすればいい、という中央が、インターネットの普及と共にリアルに帰りつつあるというのは何とも皮肉というか当然の帰結というか。

音楽でいえばそれは「シーン」とかいう曖昧な言葉で表現されるものだ。大小の規模が層を成して「取り敢えずここに放り込んどけ」という広場、市場(しじょう・いちば)というものが何によって形成されてきたか。それはラジオでありテレビであり雑誌であり時には新聞だった。手書きのファンジン(同人誌)から視聴率80%のテレビ番組に至るまで、どこかしらが"広場"として機能していて、そこから空気を汲み出していた。そのチェックの流れは、まずいちばん大きい所から入って、徐々にに小さい方に流れていく、といったものだったが、今はどこから入っても忽ちいちばん小さい所にまでたどり着いてしまう。用意された道を見つけられるかどうか、に話は集まる。要は、途方に暮れる事が多くなった。

音楽が売れないのは、そういった「自分自身の趣味嗜好を見定める冗長性」を、特に若年層が得ていない事も大きいのではないか、と思えてくる。まぁ、勿論殆どの人は流行りの歌を聴くだけなのだが、流行りの歌が生まれるにはそういう"広場"で認知されるステップが必要だ。それがどうもうまく構築出来ていない。AmazonにしろiTunesにしろ、レコメンドが充実していて精度も高く、すぐに自分の趣味嗜好に合った知らない音楽に出会えるのだが、今言っているのはその前の段階、「最初の一枚目を買おうと思わせるタイミング」をどうやって作るか、という話だ。

ヒカルは、そういった"広場"を、余り考えずにやってきた。ファンクラブというのも、ファンの広場みたいなものだろうけれど作らず、まずは1対1というスタンスをとってきた。しかし、ここまでの知名度を獲得するのに最終的に効果的だったのはテレビ番組だった。25%を超える視聴率。誰よりも「広場の力」を使って売ったのだから。

それを考えると、本来彼女はひとりひとり耕していくようなファンベースの作り方が似合っていたのかもしれない。しかし、現実にはメジャーレーベルからの全国発売のもつ可能性を目一杯、それも史上最高の度合いで引き出して、ここまできた。これからも変わらず、ひとこと呟いただけでヤフトピのトップに取り上げられる事だろう。しかし、Yahoo!トップというこの新しい広場は、有名人は欲していてもなかなか音楽を届ける所までいかない。もう暫く人間活動をしていても大丈夫なんじゃないかなぁ。

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