トシの読書日記

読書備忘録

人生的精進の人

2012-12-19 16:09:27 | か行の作家
葛西善蔵「哀しき父/椎の若葉」読了



ちょっと前にFM愛知の「メロディアス・ライブラリー」でこの短編集に収められている「子をつれて」を紹介していて、ずっと探していたのでした。ネットで調べればすぐ見つかるとは思うんですが、やっぱり書店で見つけたいんですね、自分としては。


大正末期から昭和にかけて純文学の象徴といわれた私小説家であります。しかし、初めてこの作家を読んだんですが、なんというか、読んでいて陰々滅々としてくるというか、相当暗いです。


東北の片田舎に生まれ、若くして上京するも、なかなか芽が出ず、生活できなくなると郷里へ帰り、また気合を入れなおして上京するということを繰り返し、肺結核のため42才の生涯を閉じた激流の人生を生きた作家であります。


巻末の解説を読むと私小説家とはいえ、多分にフィクションも混じえて作品の深みを出そうとしていたとのこと。そこが車谷長吉などの私小説家とはまた一味も二味も違う味わいを見せているのでしょう。


底なしに暗い小説ではありましたが、でも心に響く短編集でありました。

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