トシの読書日記

読書備忘録

世界を見る目

2019-05-23 00:07:55 | た行の作家



武田百合子「遊覧日記」読了



本書は平成7年にちくま文庫より発刊されたものです。


「ことばの食卓」に続いて本書を読んだわけですが、著者の文章の魅力をなかなかうまく言葉に表すことができず、もどかしい思いをしていたんですが、あれですね、著者は、自分が見るものに対して、少なくとも表現される文章には何の感情移入もないということなんですね。むしろ冷徹な眼差しさえ感じます。


しかし、武田百合子は物事に対して、そんな冷たい眼差しを向けているわけでもなんでもなくて、ただ、著す言葉としてそんな表現になってしまう、そこのところなんとも魅力的なんですね。


小川洋子もお気に入りの「藪塚ヘビセンター」が、中でも出色です。まぁ、ただでさえ気色悪いヘビを武田さんは物好きなんですかね、わざわざ見に行くわけです。このヘビの様子を淡々と書いているところがなんとも気味悪く、いかにも武田百合子らしい文章になっています。


さてお待たせしました(誰を?)。次は「伊丹十三選集」全三巻にとりかかろうかと思っております。