トシの読書日記

読書備忘録

リアリズムの極致

2008-11-07 12:49:36 | な行の作家
西村賢太「小銭をかぞえる」読了

ブログのO氏が「実におもしろい」と言っていたので、どれどれと思って読んでみたんですが・・・。

これはあれですね。車谷長吉の亜流といったところでしょうか。内容は、間違いなく自分のことを書いてあるんですが、ここまでさらけ出すか?というほど、普通なら絶対人に言いたくない、自分の浅ましさ、醜さ、卑怯な部分をまぁ繰り出す繰り出す・・・。ちょっと読んでで辟易しました。

車谷と大きく違う点は、車谷の私小説は、それが一つの文芸作品として昇華しているのに対して、西村のそれは、ただのもてない男の愚痴話に終わってるところですね。残念です。

これを読んでから、出世作の「どうで死ぬ身の一踊り」を読もうと思ってたんですが、やめときます(苦笑)

禁煙は愉しいのか

2008-11-07 12:30:05 | や行の作家
山村修「禁煙の愉しみ」読了

以前読んだものの再読です。ブログのB氏が「文章の点で、誰かひとり選べといわれたら、最終的にはこの人をおいてほかにない。」と言っていたので、再び手に取った次第。

私は喫煙者です。決して禁煙しようと思って読み始めたわけではないんですが、いや、実におもしろかった。

禁煙は辛抱ではないという。喫煙の衝動を意思の力でねじ伏せることでもないという。ではなにか。禁煙を愉しみなさいと説いておられるわけです。湧き上がる喫煙衝動の波に対して、それに立ち向かうのではなく、サーフィンのようにその波に乗れというんです。なんとなくイメージとしてわかる気もするのですが・・・。

禁煙のことは措くとして、著者の文章の上品で洒脱なこと!軽妙なユーモアを交えて綴られる文章は大変心地よく、思わず自分も禁煙してみるか、という気にさえさせてくれました(笑)


まぁ、禁煙するかどうか、一服つけてゆっくり考えてみます(笑)

たかが名前といえど

2008-11-07 12:27:00 | さ行の作家
ジュンパ・ラヒリ著 小川高義訳「その名にちなんで」読了


デビュー作の短編集「停電の夜に」でヘミングウェイ賞等の文学賞を総なめにしたインド系女流作家の初の長編です。

「停電の夜に」でみせた登場人物に対するあたたかな視線が、本作品でも存分に発揮されています。

ロシアの文豪から名前をとり、ゴーゴリと名付けられた主人公が、アメリカとインドとの文化、生活習慣の違いに困惑し、葛藤しながらも強く、たくましく生きていこうとする物語です。

繰り返しになりますが、著者の、主人公ゴーゴリに対するまなざしが非常に愛に満ちていて、読んでいてすごく快かったです。

細かいことなんですが、主人公が生まれる少し前から32才になるまでの長い話であるにもかかわらず、文体がすべて現在形で書かれていて、それが非常に心地よいリズムとなって、小説をいっそう深く味あわせるのに効果的だったと思います。

余談ですが、表紙の折り返しに著者の近影があるんですが、びっくりするほどの美人です!
ジュンパ・ラヒリ、ますます好きになりました(笑)

10月のまとめ

2008-11-07 12:16:01 | Weblog
10月に読んだ本は以下のとおり。


中島義道「時間を哲学する」
広瀬正「ツィス」
吉行淳之介 開高健 「対談 美酒について」
吉本ばなな「キッチン」
エイミー・ベンダー著 菅啓次郎訳「燃えるスカートの少女」
ジュンパ・ラヒリ著 小川高義訳「停電の夜に」
町田康「破滅の石だたみ」
川上未映子「乳と卵」
白石一文「僕のなかの壊れていない部分」
なぎら健壱「酒(しゅ)にまじわれば」
吉本ばなな「ハチ公の最後の恋人」
絲山秋子「ばかもの」
井上荒野「グラジオラスの耳」


13冊でした。いつものペースです。

やはり、再読した「グラジオラスの耳」がよかったです。ほかにも「ばかもの」「燃えるスカートの少女」「停電の夜に」「キッチン」など、10月は非常に収穫の多い月でした。

12月、1月と、仕事の関係であまり読めなくなると思うので、11月は頑張っていっぱい読みます!