たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

「次いつにするー?」

2015-01-28 02:04:52 | Weblog
 「飲み物、買った?」
 と君は言う。僕は
 『ああ、もう持ってるけど、付き合うよ』
 っと言って、コンビニへと足を向ける。特に待ち合わせをしたわけじゃなく、同じくらいの電車で、駅から一緒になり、駄弁りながら他のメンバーも待つスタジオへと向かう。駅から少し距離があるスタジオに到着し大きいドアを開けると、真ん中の椅子に腰かける。

 「いやー、疲れた」
 『実験だったの?』
 「そう。まぁ、流れ作業だけどね」
 『で、スタジオ練だけど、大丈夫?』
 「ダメかも笑」

 くだらない話の合間に淡々と進められる受け付け作業を横目にしていると、掲示板に目がとまる。色んなバンドが各パートを募集してる。ギター募集、ボーカル募集、などと、とてもじゃないけれど参加したくないような色使いと字の汚さで書いてある。
 タバコの匂いが立ち込める。普段僕はタバコの匂いがするとあからさまに厭な顔をするのに、なぜ今は心地良いのだろう?ココは音楽をする場所なのだから、あの歌詞のように、"タバコの flavor がした、ニガくてせつない香り"、などと表現しても良いかもしれない。いや、ヤローが何人か揃って、タバコの「flavor」がした、はありえないだろう、と思ったが、よくよく考えてみればあの歌詞はどうして「flavor」の後に「切ない香り」と表しているのだろう。などと考えていると、いつの間にか全員揃い、名前が呼ばれ、部屋番号が伝えられる。

 「ミキサー頼むわ」
 と言いながら、それぞれのゴッパーをみんなで繋いでいく。絡まるコードさえ愛しい、この瞬間、、椅子を並べながら音を創っていく前段階を楽しむ。
 機材を設定している時、ここから作っていく、僕は音楽やってるんだ、と気持ちが高揚していく。

 『とりあえず、全部、通してみよっか』
 と言ったのが、嘘のように昔に感じて、いつの間にか終了を告げる赤いランプはともされている。

 そして、
 「次いつにするー?」
 という会話をしながら会計を済ませ、夕食を取る。スタジオ練のあとは、飲み屋じゃなくて、松屋とかに行くのが、まったく売れないミュージシャン、っぽい。

 定食を食べながら、決して定まるはずのない方向性と価値観をぶつけあって、くたくたになりながら帰宅する。どんなに価値観が合わなくても、どんなに喧嘩みたいになっても、心地良い。なぜなら、僕は、スタジオに行くのが好きだし、何よりもみんなが好きだから。

 そんな青春の日々を、まだ望んでいるのかもしれない。まったく違うことで、まったく別の集団で、まったく異なる価値観で良い。
 俺は、あの日々がいつまでも続くことを、きっと心のどこかで願っている。