たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

その分野の目標と価値

2009-10-30 01:21:00 | Weblog
 価値って、どの視点から見るかで、どんどん変わってくる。

 「おー、どこの研究室になったの??」
 『BEC(ボース-アインシュタイン凝縮)の研究室です。っま、僕は、フェルミオンなんですけど。』
 「あれ、でも、大学院は違ったよね?」
 『そうですね、生物系に行くことになりました。』
 「あー、そうだそうだ。そんなこと言ってたねー。」

 「っていうかさー、ベックってーのは、ボソンの粒子を詰め込んで、凝縮させるわけでしょ??」
 『はいはい。』
 「この下の研究室でもこの前できたみたいでさ。んでさ、確かに、ド・ブロイ波長が重なって、一つの波で書けますよーって…」

 俺は、その瞬間、まさか、っと思った。

 「…んで、巨視的な量子状態が記述できてよかったね、って、はいはい、理論通りになったなったー、ってやるけど、それで??って思うんだよね。。」
 『っと言いますと、それ以降のもっと理論的な研究内容があっても良いじゃないかと?』
 「うん、それもそうだし、まだ研究の余地があるのかもしれないけど、外部の人から見ると、いったいこんなのが何の役にたつのかなー?って、思ってしまうんだよ。」
 『…はっはははは(笑)。素粒子やってるんですよねー??素粒子の研究者が、そんなこと言っちゃうんですかー??(笑)』
 「いやー、だってさー、ベックの理論がある程度確立されて、実験的にも成功して、20年くらい経ってるでしょー。そろそろ何かの分野に応用しようとする動きがあってもイイと思うんだよねー。なのに。。」

 この辺が、他の教授とは違う、この人の売りなんだと思ったりする。理学系の教授から、何の役に立つの?、なんて言葉聴いたの、無いぞ。

 『だから、僕、この分野の最終目標って、よくわからないんですよねー。』
 「うんうん、そうね。」
 『例えば、素粒子なんかは、わかりやすいじゃないですか??』
 「うん?じゃぁ、この分野の最終目標なんだと思ってるの?」

 やべ、相手、素粒子のエキスパートやん。この人、っぽくないから、忘れてた。あー、失敗した。でも、まぁ、思ってること、ぶつけてみっか。

 『えーっと、物とは何か?空間とは?時間とは?存在とは?を、明確に定義し、解明することだと思うんですが。。?』
 「まぁうん、そーだね。」
 『その点、BECとか凝縮系とかって、わかりにくいと思うんですよね。今、Latticeやってますが、…。と言う風に、価値があるみたいですが、どーもつかめなくて…!』

 『僕、別に、物理学も好きですし、楽しいんですけど、いや、ホントに申し訳ないですけど、、物が何か?がわかるよりは、遺伝子治療のが、明確にヒトの役に立つと思うし、同じ頑張るなら、役に立つほうがイイと思っちゃったんですよ。。』
 「はははははっは(笑)。そりゃそうだよ。それでイイと思うし。モノが何かなんて、研究が何十年遅れても全然問題ないけど、そっちは、実際に、何人か助けられる可能性が上がるからね。そりゃ、そっちのが大事だよ。」

 だったら、卒研から、生物やればいいじゃないか、っと思われる読者もいるかもしれないけど、、それは違くて、物理学を武器としなきゃいけないから、研究分野まで、つまり、第一線まできちんと経験しとかなきゃなんですな。っと、この先生自身が、2年くらい前に言ってたのを、実行してるまでなんだけどね。

 『ただ、実際に、器具をいじった経験が少ないので、その辺が不安ですけど。。』
 「大丈夫だよ。卒研でやることなんて、どーせ大したことじゃないんだから、そこまで影響しないって。」

 あれ??

 いや、わかってますよ、それとそれは、違うってんでしょ。そうだと思うけど、言葉だけ拾うと、矛盾だよね。(笑)

 勘違いされてはいけないので、一応書いときますが、科学のどんな分野も研究のし甲斐は、絶対にあると思うし、楽しいと思います。
 ただ、度合の問題。
コメント
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