Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

戦場にかけるお湯

2023年10月22日 | 読んでいろいろ思うところが
安田浩一・金井真紀
「戦争とバスタオル」(亜紀書房)を読む。
およそ繋がりのなさそうな
「戦争」「バスタオル」という2つの言葉に、
実は深い結びつきがあることがわかるノンフィクション。
著者のふたりがタオル片手にめぐる
各地の温泉の描写にほっこりしながらも、
戦争の加害と被害の歴史に踏み込む
ハードなアプローチが、なんとも不思議な味わい。


知らなかったことが多すぎて恥ずかしい。

著者の安田さんと金井さんが
タイの温泉に向かう第1章では、
第二次大戦時、その温泉の近くで
旧日本軍が、外国人捕虜を強制労働させて
インドまで鉄道を敷こうとした歴史がひもとかれる。

ああアレね。「戦場にかける橋」の元になったアレね、
とアホなシネフィルは得意気に読み進めるが、
知らないことばかりで、しかも、日本軍の加害ぶりが
浮き彫りにされていくので、なんとも重い気分に。

でも、ところどころに挿入される、
現地の温泉のまったりした感じに安堵する。
金井さんのイラストの優しいタッチのおかげもある。
こうやってみんな裸になって、
ゆるゆると温泉に入れば、戦争なんかしないのに。ねえ。

第2章以降も、
沖縄に一軒しかない銭湯のおかみさんが語る、
ゴザ騒動など、沖縄の人たちの苦難の歴史。
韓国に渡った日本人妻の
支援を続けている釜山の温泉センターの社長さんの話。
さらに、旧日本軍が毒ガスの製造を
徴兵前の少年や徴用工、満州からの引揚者
に従事させたという負の歴史が語られていき、
知らなくてごめんなさい状態というか。

と同時に、ああ温泉行きたい。
せめて銭湯に行かせてくれえ。
という魂の叫びも湧き上がってきた374ページ。
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