安田浩一・金井真紀
「戦争とバスタオル」(亜紀書房)を読む。
およそ繋がりのなさそうな
「戦争」「バスタオル」という2つの言葉に、
実は深い結びつきがあることがわかるノンフィクション。
著者のふたりがタオル片手にめぐる
各地の温泉の描写にほっこりしながらも、
戦争の加害と被害の歴史に踏み込む
ハードなアプローチが、なんとも不思議な味わい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/fe/2ce0d324e09ed86325d553b951ebcb1f.jpg)
知らなかったことが多すぎて恥ずかしい。
著者の安田さんと金井さんが
タイの温泉に向かう第1章では、
第二次大戦時、その温泉の近くで
旧日本軍が、外国人捕虜を強制労働させて
インドまで鉄道を敷こうとした歴史がひもとかれる。
ああアレね。「戦場にかける橋」の元になったアレね、
とアホなシネフィルは得意気に読み進めるが、
知らないことばかりで、しかも、日本軍の加害ぶりが
浮き彫りにされていくので、なんとも重い気分に。
でも、ところどころに挿入される、
現地の温泉のまったりした感じに安堵する。
金井さんのイラストの優しいタッチのおかげもある。
こうやってみんな裸になって、
ゆるゆると温泉に入れば、戦争なんかしないのに。ねえ。
第2章以降も、
沖縄に一軒しかない銭湯のおかみさんが語る、
ゴザ騒動など、沖縄の人たちの苦難の歴史。
韓国に渡った日本人妻の
支援を続けている釜山の温泉センターの社長さんの話。
さらに、旧日本軍が毒ガスの製造を
徴兵前の少年や徴用工、満州からの引揚者
に従事させたという負の歴史が語られていき、
知らなくてごめんなさい状態というか。
と同時に、ああ温泉行きたい。
せめて銭湯に行かせてくれえ。
という魂の叫びも湧き上がってきた374ページ。
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