Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

ロバの目には何が写る

2023年01月31日 | 映画など
マーティン・マクドナー監督
「イニシェリン島の精霊」を見る。
この監督の「スリー・ビルボード」同様、
暗喩に満ちたドラマであり、深読みをすればするほど
いろんな意味が読み取れる映画というか。
でもふつうに、友情が決裂する物語だと見ても
じゅうぶん興味深いし、
ずしりと重い感慨をもたらせてくれるのです。


舞台は1920年代のアイルランドの孤島。
この島に住むパードリック(コリン・ファレル)は、
親友のコルム(ブレンダン・グリーソン)から
いきなり絶縁されてしまう。
途方に暮れるパードリックだが、コルムの意志は固く、
これ以上関わったら、自らの指を切り落とすとまで言い出す。

コルムはパードリックのことを「退屈だから」という理由で
関係を絶とうとするが、あまり説得力がない。
それにしては決心が固く、
自分の指を切り落としても平然としているコルムに戦慄する。

アイルランドの内戦をこの二人の諍いに
象徴させているという解釈はおそらく正しいのだろう。
でも、ふだん生きている自分たちだって、
いきなり友情とか愛情が壊れてしまい、
どうにもならなくなることなんか
いくらでもあるじゃないですか(って、自分だけ?)。
そういう意味で、本作に込められた暗喩のようなものを
解釈するというよりは、単純に身につまされながら見ていたという。

パードリックを演じたコリン・ファレル。
こんなにいい俳優だったっけ? 
ブラピの2割引きみたいなひとだと思ってました(ごめんなさい)。
人は良いけど、どこか鈍重な役柄に好感。
飼っているロバがまた間抜けな感じで愛らしい。
ロバの目って哀しいんだな、と思ってしまうのは、
ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」に
毒されたシネフィルの悪癖のせいかもしれぬ。

思わせぶりな登場人物も多く出てきて、
それをいちいち解釈していくのも楽しいけど、
世の中から隔絶されたような、
孤島のロケーションがなんといっても素晴らしい。
殺風景な家並みと、パブのなかで注がれる黒ビール。
ロバだけでなく、馬や犬などの動物のいきいきした感じ。
すぐれた撮影の映画だと思うし、
海の向こうでは、内戦らしき砲声が遠くから聞こえてきて、
これは単純な物語じゃないんだぞという
静かなアピールも悪くない。傑作。

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コペルニクスが笑った日

2023年01月30日 | 日々、徒然に
「右翼というと、とても怖いイメージがありますが」

強面きわまるひとを前に、ものすごい緊張感のなか、
とんでもない質問を投げかけてしまい、
心のなかで「ああ、失敗した…激怒されたらどうしよう」
と縮み上がっていたら、

「右翼が怖い? だよね。僕も怖いよ」

とにっこり笑顔を見せてくれて、
場が和んだというか、安堵したことを覚えている。

鈴木邦男さん。享年79。

自分の拙い質問にも、にこやかに丁寧に
応えていただいて恐縮しっぱなしでした。
そもそもの右翼思想と、明治以降の右翼思想の違いとか、
なぜ天皇家の人たちは和服ではなく、常に洋装なのか。
一水会のこと。野村秋介や竹中労の話。
快楽亭ブラック師匠の皇室をネタにした
不謹慎きわまる落語の話になり、
「あれはひどいよねえ」と大笑いしていた鈴木さん。

物事を見るための指標を教えてくれたひとでした。
ありがとうございました。合掌。
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青春時代が夢なんて

2023年01月29日 | 呑んだり喰ったり
あのですね。
例によって人生崖っぷちですが、
それでも何とか生きていられるのは
コレがあるからです。


名古屋圏内を中心に
絶大な人気を誇るソウルフード中のソウルフード、
それが「スガキヤ」のラーメンです。
なんてったって世界一のラーメンですからね。
それがあなた、1杯360円ですよ。360円。

鶏ガラなのか魚醤なのか、
よくわからないダシの利いた白濁スープと、
少量のネギとメンマと極小のチャーシュー。
あと、いいですか。箸みたいな
前時代的なモノは使いません。
実は、ラーメンフォークという
これ1本で、麺とスープを同時にすくえる
近未来なモノを使えばいいんですから。

それに知ってますか?
名古屋の女子高生はマクドなんか行きませんよ。
みんなスガキヤのラーメンとデザートの
「クリームぜんざい」で青春時代を送り、
道に迷っているばかりなのです。

何度となく首都圏に出店するも、
ことごとく大失敗して撤退するのは納得がいきませんけどね。
そういえば、名古屋に旅行した知人が
「あんな激マズのラーメン食ったことないっすよ!」
と暴言を吐いたので、瞬殺したこともありましたっけ。
ラーメンフォークを散々自慢しても、
誰も反応してくれないので、
ひとり悔し涙を流したこともしばしばでした。
名古屋人のDNAに刷り込まれているだけと
陰口をたたくのは誰ですか。

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Teardrops Are Fallingな夜

2023年01月28日 | たまには音楽でも
杉真理 LIVE2023 Winter Mr.Melody
@SHIBUYA Pleasure Pleasureに行く。
やはり杉真理は稀代のメロディーメーカーだ、
ひとりレノン=マッカートニーだと思い知らされた夜。


杉真理といえば、
「ナイアガラトライアングルvol.2」のひとりであり、
ビートルズフォロワーとして80年代に活躍した
ソングライターと知られているけど、
ずっと現役バリバリで、多くのアーティストに
楽曲を提供してきた人でもある。なんと300曲近くもあるという。

そうはいっても、80年代の曲をやりまくって、
おっさんなロックファン(自分、だ)を号泣させてくれる
ライブになるだろう、と思っていた。

でも、最近「Mr.Melody」という、
これまでに他人に提供してきた楽曲を集めた
CD6枚組のBOXを発売していて、今回はその記念ライブ。
80年代の曲もあるにはあったけれど、ごく少数(でも号泣)。
そんなセットリストで、初めて聞く曲が多かったとはいえ、
このひとの良質な曲群と多彩なゲスト、
バンドの充実した演奏で、大いに楽しんだのでした。

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なれなかった自分

2023年01月27日 | 日々、徒然に
目黒孝二さんが亡くなった。享年76。
訃報は勘弁してほしいと思いつつ、
自分よりひと世代かふた世代ぐらい上で、
映画や音楽、本など、サブカルチャーの
面白さを教えてくれた人たちが、そろそろそういう年齢に
差しかかっているということなのだろう。

「本の雑誌」の設立メンバーであり、
椎名誠、沢野ひとし、木村晋介らと共に
青春時代を過ごし、夢に向かって
ずんずんと突き進む姿は憧れの対象でした。

最近「本の雑誌」をまた購読するようになり、
どうして自分は目黒さんのように、椎名さんのように
沢野さんのようになれなかったんだろうと絶望しつつ、
結局、自分は自分にしかなれないと思い知りました。

北上次郎のペンネームで
情のこもった書評家としてもすぐれ、
本の雑誌社で代表取締役をつとめたということからも、
実務的な才にも長けていたひとだったと想像する。

YMOもユキヒロさんが欠け、CSNYはクロスビーが欠け、
「本の雑誌」も目黒さんが欠けて、
なんとも寂しい限りです。合掌。

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レジェンド拝見拝聴

2023年01月26日 | 日々、徒然に
NHK「Switchインタビュー達人たち」で、
小林信彦と細野晴臣が対談をしていた。
細野さんは「日本の喜劇人」を愛読していて、
大瀧詠一とも交流のあった信彦さんを相手に
それは話が合うだろうと。


大病を経た信彦さんがテレビに出演するのは
かなり貴重な機会だと思う。もうすぐ90歳と聞いて驚く。
言葉に少し不自由があるみたいだけど、お元気そうで何より。
嬉しそうに渥美清や弘田三枝子、
「ゲバゲバ90分」の裏話を披露していて、
それを聞く細野さんも楽しそう。
信彦さんが大瀧詠一を伴って、
谷啓のお宅を訪れたエピソードも可笑しい。

コメント (2)
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嘲笑から地獄

2023年01月25日 | 宇宙人の悲哀

お弁当のおかずがミカンとな。

あ。目ざとくやってきましたね。
またせせら笑おうという魂胆ですか。
宇宙人(by岡本太郎)ってほんとヒマですよね。
おかずがミカンなんて、そんなことあるわけないでしょう。
デザートですよ、デザート。

おかずはちゃんとハムカツ買ってますから。
あ、態度が変わりましたね。いまさら遅いです。
泣いたってダメですよ。あげませんからね。しっしっ、あっちいって。
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捧げられたもの

2023年01月24日 | 日々、徒然に
涙腺がダダ漏れどころでは、ない。
何かを見たり聞いたりして泣くのは、
ある程度仕方ないとはいえ、
かつて見たり聞いたりしたものを思い出して、
それに涙するようになった今日この頃。


みうらじゅん「アイデン&ティティ」。
大人の思い通りに歌って演奏しろという
プレッシャーをはね除けてロックしてロールする主人公。
その姿を思い出して泣けて泣けて。
自分は、これ以上のロックンロールを知らない。


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敗者の懇願

2023年01月23日 | 日々、徒然に
涙腺がゆるいのは、
けっこう前からのことだけど、
最近は訃報も多いし、
なにかと涙腺が決壊することがしばしば。

仕事場近くのスーパーが
あと1か月で閉店ということで、
店の一角におおきな紙が貼られ、
そこにお客さんがいろいろと書き込めるようになっていた。



ここのスーパーは
かれこれ20年近く利用しているわけで。
当然のごとく涙腺がダダ漏れだったという。
成城石井とか紀ノ国屋とか
ハイソでお洒落なスーパーに代わるんじゃねえの、
という噂はウソですよね。
ウソだと言ってよ。ねえったら、ねえ。

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すれちがいの人生

2023年01月22日 | 日々、徒然に
帰りの電車内にて。

向かいの席に座っている女性が
妙に、にやにやしているのに気づく。
マスクをしているにもかかわらず、
にやにやのオーラが凄まじい。
よくよく見ると彼女が手にしているのは、
ディスクユニオンのLPサイズの袋だったという。
いったい、どんなレコを買ったんですか。
そんなにやけるようなアレなんですか。
と問いかけようと思ったら、そそくさと降りていった。
ずいぶんお洒落な町に住んでるんですね。
家賃高いんでしょう。その鬱憤を安レコで晴らしているんですか。
と大きなお世話な妄想が膨らむのでした。

自宅近く。駅前の信号を渡る。

向かいからやってきた
母と6歳ぐらいの女の子の会話。
「パンに何をはさもうか」と母。
「ソーセージ!」と断言する女の子。
それを聞いていたら
自分もソーセージパンが食したくなったという。
いてもたってもいられず、
近くのコンビニ2軒を回ったが、ない。
ソーセージ、ソーセージ。
とつぶやきながら街を彷徨う。
仕事しないといけないのに、自分。

コメント (3)
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