リチャード・リンクレイター監督
「6才のボクが、大人になるまで」を見る。
ある一家の12年間を描くのに、同じ俳優を使い続け、
リアルに12年間かけて撮り上げた希有なホームドラマで、
積み重なった人生の断片を味わう3時間。
希有なドラマとは書いたけれど、
たとえばトリュフォーがジャン=ピエール・レオーを主役にして、
アントワール・ドワネルという人物を、
少年から中年にかけて演じさせたシリーズもあるし、
ましてや日本人にとっては、「北の国から」という
俳優が年齢を重ねるのと、役が同時進行するドラマがあったわけで、
よく考えると、ものすごく珍しい作りではないというか。
ただ、こうした映画やドラマは連作であり、
「少年編」「青年編」「結婚編」といった形で分かれている例が多い。
本作が異なるのは、それを1本の映画にまとめたところだ。
演じる俳優がリアルに年を取るごとに、
その年齢に合わせたエピソードを撮り、繋げて3時間の映画にまとめる。
観客は、俳優が役を演じるのを見ながら、
同時に彼ら彼女らがリアルに年を重ねていくのを目の当たりにする。
その手間というか、持続力というか。
映画の作り手たちがよくぞそんな長い期間、同じ思いを共有できたものだと思う。
映画の作り自体、感動的ではあるのだけど、
それと映画の面白さは別である。
じゃあ、実際どうなのかというと、ご安心を。ドラマとして無類の面白さ。
ある程度、人生経験を重ねてきた人が見れば、
誰でも身につまされるエピソードが盛り込まれ、
主役の少年の成長ぶりを、固唾を呑んで見守るような作りになっているからだろう。
少年はかなり不幸な境遇だけれども、家族や周りの人々の愛情に支えられ、
多少屈折しながらも、なんとか育っていく。
まあいろいろあったけど、なるようになったなあ。
そんな感想を抱かせる映画は珍しい。これって人生そのものかもと思ったりする。
少年の母親を演じたパトリシア・アークエット。
「トゥルー・ロマンス」の頃は可愛かったのに、
おばさんになったなあ、と思ったら、
映画の中でさらにどんどん年を取っていくので、ありゃりゃと思いながら見る。
イーサン・ホークがいい感じのおっさんになっていくのも微笑ましい。
主役だけでなく、脇に少しだけ出演する俳優たちも年を取っているので、
説得力のあるドラマになるのは当然だろう。