Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

開き直りと突っ込み

2024年04月05日 | 読んでいろいろ思うところが
森達也「私たちはどこから来て、
どこへ行くのか」(ちくま文庫)を読む。
専門用語や科学的な理論が飛び交う本だけど、
理系科目がからきしダメな自分でも、
なんとなく面白く読めてしまう不思議。


「生粋の文系が模索する〜」との
サブタイトルがあるけれど、本書での森さんは、
ホントに文系なの? と思うぐらい
しっかりした知識と専門用語を駆使して、
名だたるサイエンティストたちに迫っていく。

たとえば脳科学者の池谷裕二と
エントロピー(物事は放っておくと、
無秩序で複雑な方向に広がっていくという概念)についての対話で、

「今うかがった言語を、脳のメカニズムや
シナプスの可塑性とからめて説明していただきますか」

と問うことができる森さん、なんかすごい。
めちゃ理系なんじゃないの、と思いつつ、
エントロピーの概念は、自分は何者であるかを考える
脳のしくみにも当てはまるのではないかという問いを発する。
専門用語のキャッチボールが心地良いというか、
「エントロピー」は知らないけど、
「シナプス」と「可塑性」という言葉の意味を
なんとなく知っていれば読めていける難易度というか。

森さんの問いは、つまるところ、
自分は何者で、なぜ存在しているのか
どこから来たのか、生と死って何だろうか、
という根本的な疑問に
なんとか答えを見つけるためのものだ。
問いかけられたサイエンティストたちは、
自身の知識や経験を踏まえて、エビデンスのある回答をしつつも、
森さんの問いがあまりにもシンプルで根源的なため、
戸惑いやゆらぎを見せる瞬間がある。森さんはそこを見逃さない。

わからないことはわからない。
自分が何者なのかなんて、いくら考えてもわからない。
そんな実もフタもない感じで進む本書。
哲学や宗教の領域に達しそうな
ギリギリのところで踏みとどまる自制心があり、
そのあたりにも好感が持てたのです。
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