うひょひょひょひょひょひょひょ。
うっ。気がついたらなんだか部屋じゅうに
とてつもない刺激臭が広がっているではないか。
やはり貴様の仕業か。邪悪なT君よ。
「いや〜なんか美味しい肉を食したとか言うじゃないですか〜。
そんなバチ当たりなコトしてたら桃源郷には行けませんよ〜。
ほらほら〜このニオイが桃源郷への入口ですから〜」
どこが桃源郷だ。そんなところに誰が行くものか。
刺激臭の元は納豆か、それともにんにくか。
「両方ですよ〜納豆とにんにく、どっちが強いか
確かめたかったんじゃないですかね〜。
で、結局、両方ともアレだったという〜」
アレとは何だ。また曖昧な指示語を使いやがって。
納豆とにんにくの焼きそばなどありえないだろう。
「それが全国一斉発売なんですよ〜日本中、いや世界中に
納豆とにんにくのニオイが充満してますから〜。
最近ペヤングがすっかりおとなしくなったと
それはそれは悲しい日々を過ごしてたんですよ〜
そしたらコレですからね〜たまりませんよ〜コレ」
だから指示語ばかり使うんじゃない。
と、叫びながら奴の体に納豆とにんにくを塗りたくる。
「うひょ〜ぬるぬるですね〜。
しかもこの刺激臭がなんとも〜まさに無敵じゃないですか〜」
そう言ってのける邪悪なT君は、納豆とにんにくのニオイを
撒き散らしながら、だんだん体が巨大化していくではないか。
「納豆は発酵食品ですからね〜たぶん空気中の邪悪なモノを
取り込んで、巨大化しているんじゃないですか〜」
なんとおぞましい光景だろう。
邪悪なモノが邪悪なモノを吸収している。
そうか。納豆の発酵菌がにんにくのパワーを得て
奴の体を食い尽くしているのか。
「取り込まれちゃいましたよ〜でもまあこれはこれで」
と言いながら、邪悪なT君はさらに曖昧に巨大化していき、
部屋を突き破り、家を、建物を、ビルを呑み込んでいく。
ついに奴は、自身が巨大な発酵物となっていくのでした。
目の前の異形なものを見つめ、これが桃源郷か、と呟くしかなかったのです。