Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

絶望のその先に

2012年07月31日 | 映画など
園子温監督『ヒミズ』を見る。
いつの間にか日本映画、ひいては
世界中の映画の最先端に躍り出たこの監督の新作。
アングラとはもう誰にも言わせないほどの強度と
真摯な語り口に、感動せざるを得ないというか。



古谷実の原作漫画は読んでいないのだけど、
それはそれは悲惨な物語。
ボート屋を営む中学生・住田祐一(染谷将太)が主人公。
家を出た父親は、頻繁に金をせびりにきては、息子に向かって、
「お前ってほんと、死ねばいいのに」としみじみ語り、
母親は他の男と駆け落ちして、家を出てしまう。
学校にも行けず、絶望の淵に立たされる。

敷地内に住むホームレスの住人たちと、
クラスメートの茶沢景子(二階堂ふみ)だけが祐一の理解者だが、
彼らの気持ちを受け入れることができず、
人でなしの父親に苦しめられ、借金取りのヤクザに半殺しの目に遭う。

この世の地獄かと思える描写とエピソードが続くなか、
ボート屋の対岸にある川が、まるでもう一人の主人公のように映し出される。
祐一を始めとする登場人物たちは、みな雨に濡れ、
川に飛び込んだり落とされたりする描写が続く。
水の中でうごめくこと。それが生き物であり、人間なのだと
言っているかのようだ。

それでも祐一は死なない。
息絶え絶えでも自分の足で走ることを選ぶ。
絶望しても生きろ。いつでもやり直せる。
そんな強烈なメッセージが伝わってくると同時に、
東日本大震災の被災地が映し出された瞬間、
メッセージはこの映画を見たすべての人に届くほどの強度を持つ。

染谷将太は、まだ10代なのに
決定的な代表作をものにしたような気がするし、
二階堂ふみは、何かに取り憑かれたような怪演を見せ、
これまた強烈なインパクトを残す。
ところどころで、神様(宮崎あおい)そっくりの表情を見せるので、
信者はそのたびにドキドキしていた、
って横道に逸れちまいましたな。




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通りすぎた風

2012年07月29日 | やさぐれ男のつぶやき
仕事が終わらず、この土日も仕事。
世間はオリンピックだなんだと言っているのに、
遅々として進まない仕事にやさぐれていたら、
外から大音量の音楽が聞こえてきた。



脱原発のデモ行進である。
仕事場の近くでも目の当たりにすることになるとは。
窓を開けて写真を撮っていたら、
デモ中のお姉さんが手を振ってきた。
それに応えて自分も手を振る。

『にっぽん昆虫記』という映画を思い出した。
今村昌平監督の代表作の一本だ。
貧しい農村生まれの女が、自分の体ひとつで
戦後の日本をたくましく生き抜く姿を粘っこく描くのだけど、
主人公(左幸子)が、60年の安保デモの学生とすれ違うシーンがある。
学生たちの騒乱ぶりを横目で見つつ、
自分にはまったく関係ない、それよりは明日のおまんま代を
どうやって稼ぐか。それしか頭にない女。



あの映画の左幸子ほどではないけれど、
何もしてないし、何もできない自分がいる。
目の前にあることに精一杯というか。
それでもまずそれを片付けてこそ
次の一歩があると自分に言い聞かせるのでした。

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Don't break me down

2012年07月28日 | 日々、徒然に
早起きして、ロンドンオリンピックの
開会式の中継を見る。
いつも思うのだけど、オリンピックは
この開会式がいちばん面白い。
世界にはこんなにたくさんの国があるのか、と思うのと同時に、
その国の情勢がよくわかるというか。
参加者が少ない国は、やはり国力がないんだなと思ったり。
シリアとか北朝鮮とかジンバブエとかに注目したりと飽きない。



まあでも、今回のお目当ては当然この人。
聖火台に火がともったあとのフィナーレを飾ったポール。
「ジ・エンド」から「ヘイ・ジュード」の流れとは。
もっと演るかと思ったけど、結局2曲で終わりとな。

この前のバンクーバーオリンピックでは、
開会式がブライアン・アダムスで閉会式がニール・ヤングだった。

となると閉会式は誰が出てくるのだろう。
順当なところだとエルトン・ジョンかな。
あとはストーンズとかロッド・スチュアートとか、
スティング…うーん、ないでしょう。
ジョンが生きていたら「イマジン」を歌ったんだろうなと
妄想を膨らます土曜の夜。

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助長の夏

2012年07月27日 | 日々、徒然に
ということで、朝9時から健康診断。
採血やら心電図やらバリウムやら、
体のあちこちを調べられる。
帰りに受付で、今日調べた数値が印字された
パンフレットのようなものを渡される。
そこには、こう書かれていた。



昨年の数値より、若干良くなったらしい。
ほとんど誤差の範囲内かと思うのだけど、
カテゴリー的には安全圏に入ったということだ。
「おめでとうございます」と言われても、ねえ。
それにしてもこの1年、
何も節制しなかったというのに、不思議。

ともあれ、ここ数日調子も悪かったので、
寝る前の麦のアレは自粛していたのだけど、
今夜はちょっと飲っちゃいます。うひょひょ。

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謝ればすむという問題

2012年07月26日 | 日々、徒然に
青山にあるK社で会議。
それにしてもこの暑さ。
原宿から青山方向に歩くと、
結構な坂道があり、息も絶え絶えに。

会議のあと、原宿駅前のドトールで、
ライターさんたちとお茶。やさぐれ話に花が咲く。
というか、やさぐれていたのは自分だけのような気が。

それもそのはず。
これがやさぐれずにいられますか。
実は明日、健康診断があり、
事前に体調管理をまったくしていないため、
満身創痍な感じで診断を受けること必至。
体にいいことは何ひとつやっていないので、
きっと怒られるんだろうなと戦々恐々。
すみません(←今、あやまっておきます)。



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妄想と美味

2012年07月25日 | 日々、徒然に
蒸し暑い、というのは今日みたいな日のことを言うのだろう。
朝から原稿書きに追われ、
書き終わらないまま、浅草方面で打ち合わせ。
10月に出す某パンフレットのことで、あれこれと。

スカイツリーが見える。
今度「ゴジラ」の新作が作られるとしたら、
きっとこのスカイツリーを破壊するんだろうな、
と妄想しつつ墨田川周辺を歩く。

帰りに神保町に寄って資料本を漁る。
「思想地図」の最新刊が出ていたので、一緒に購入。

空腹だったことに気づき、今まで見知ってはいたけど、
入ったことのなかった餃子屋で遅めのランチ。
そこの餃子定食770円。美味でした。

仕事場に戻り、原稿の続き。
書き終えたのが夜の8時過ぎ。
まだまだ仕事は終わらない。

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ミート・ザ・フォー

2012年07月24日 | 日々、徒然に
意外とないものだな、ヴェトナム料理屋。
店を検索すればいいのだけど、
街を歩いて偶然めぐり会うのを期待していたりして。

それそれと言うように私が頷くと、おばさんはすぐに麺を茹で、スープをかけ、鶏肉をのせ、サッと出してくれて。それには二分とかからなかっただろう。いざ食べようとすると、横に坐っていたタオルを首に巻いたおじさんが、テーブルの上の容器に山盛りにされている四つ切りのライムや赤トオガラシの輪切りを指さす。それを入れるとおいしいと言っているようだ。そこで、言われたとおりにライムを絞り、赤トオガラシをのせ、各種の調味料を少しずつ振りかけた。赤トオガラシはとんでもなく辛かったが、ライムの酸味の利いたフォーはとてもおいしかった。

沢木耕太郎「一号線を北上せよ」より引用。
フォーへの思い、ますます募る。

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ホーチミンさのばびっち

2012年07月22日 | 日々、徒然に
溜まっている仕事を
少しでも減らすために、ひたすら原稿を書いたり
ページ構成をしたりの週末。
これが7月後半かと思えるぐらいのひんやりした
空気のなか、なかなか終わらないなと思いつつ仕事。

最近家にある沢木耕太郎の本を引っ張り出して、
読むようになっている。買ってはいたけど、
未読のものが何冊かあったので。
「一号線を北上せよ」(講談社文庫)を手に取って読む。
ホーチミンからハノイを縦断するヴェトナム紀行なのだけど、
これがまたすこぶる面白く、アジア熱が募るばかり。

行きたいなあ。仕事はあるけど。
とりあえず、近場でヴェトナム料理屋を探して、
フォーを食そうかと。そんな小市民な願望が頭に浮かぶ日曜の夜。


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暗闇に呑まれて

2012年07月21日 | 日々、徒然に
米コロラド州のオーロラで、
男が映画館に入り込み、銃を乱射した事件があったらしい。
これまでに少なくとも12人の死亡者と
50人近くの負傷者が出たという。

上映していた映画は『ダークナイト ライジング』。
クリストファー・ノーランとクリスチャン・ベールの
『バットマン』シリーズの3作目だ。

悪役がとりわけ魅力的に描かれるこのシリーズでは、
前作の『ダークナイト』に登場したジョーカーが出色だった。
故ヒース・レジャーによって演じられたこの悪役は、
葛藤しながら、そしておどけながら、
人の心の中にある「善」や「正義」に異を唱えていた。

作品に流れるこのようなテーマが、
銃を乱射した男に乗り移ったのだろうか。
新作の『ライジング』がどんな作品かは不明だが、
なんとも幼稚で悲惨な事件としか言いようがない。






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スピードの時代

2012年07月18日 | 邪悪なT君
飯田橋で打ち合わせ。
レギュラー仕事の雑誌の付録で、
96ページの別冊をつくることに。
11月売りの号に同梱されるのだけど、
意外に時間がないことが判明。
同じく11月ぐらいに発売になる本の進行も
そろそろ本格始動しないと危ない感じになってきた。

与えられた時間はあまりにも、少ない。
しかもこの暑さでやさぐれ度もピーク。
どうしろというのだ、と叫びそうになったその時。

うひょひょひょひょひょ。

神経を逆撫でする男が現れた。
世間を舐めきった貴様の顔など見たくない、邪悪なT君よ。

「まあまあ~いいじゃないですか~。
 それにしても大変な時代ですよね~いつも時間に追われて、
 あくせく働かなきゃならないなんて、たまりませんよ~」

君があくせく働いているようには見えないのだが。

「これでもスピードをあげるために、
 いろいろ工夫をしてるんですよ~ほら、うひょひょ」


 
なんだこれは。
カップヌードル? しかも焼きそば!?

「そうなんですよ~いや~思い切りましたね、日清も。
 本家本元のカップヌードルが
 これまで培ってきた実績や伝統を投げ打って、
 焼きそばに成り果てるとは、思ってもみませんでしたよ~」

どうやら具はカップヌードルお馴染みの
玉子とか海老、ダイス肉で、味も似ているらしい。

「そうなんですよ~しかもお湯を入れてから1分で喰えるんですよ~。
 このスピード時代にぴったりのアレだと思いませんか~」

3分でなくて1分?
なんともまあ恐ろしいほどの速さ。

「コレにすれば時間が短縮できて、
 仕事もはかどると思いませんか~。
 このスピード時代にぴったりの逸品ですよ~」

焼きそばのために生き急ぐ方が間違っているのだ。
そんな輩は君と一緒に、この猛暑で焼かれてしまえ。

「直射日光には弱いんですよ~やっぱり陽が当たらなくて、
 少しじめじめしたところが落ち着きますね~。
 そんなところでコレを食せば元気一発ですよ~」

そう言ってのけた邪悪なT君は、
こちらの罵倒をするりとくぐり抜け、
その黒い羽を羽ばたかせ、
ブーンという鈍い音を発しながら、
熱帯夜の中を飛んでいくのでありました。




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