テオ・アンゲロプロス監督、
交通事故死とのニュースが。
新作映画の撮影中、バイクにはねられたらしい。
なんということだ。
いまごろ世界中のシネフィルは
ショックを隠せないでいるに違いない。
『旅芸人の記録』は、大学の授業をぶっちぎって見たし、
『霧の中の風景』のときは、当時勤めていた会社を
思い切りサボって見て、そのあと飲みにいったような。
自分はアンゲロプロスの熱心な観客ではなかったけど、
何かを堕落させる力がこの監督の映画にはあったということか。
『シテール島への船出』を見た日は確か二日酔いだったし、
この巨匠に対して、不真面目極まりないな、と。
陰鬱な風景のなか、言葉少なげな登場人物たちが、
悔恨や焦燥、諦観などを抱え込みながら右往左往し、
ときには歴史とか国家を背負いながら、ときには苦しみ、
またときには祝杯をあげたり、歌を歌ったりする。
国家や民族が分断された哀しみを象徴するオブジェを
ところどころに挿入する演出。
そんな映画をとり続けたアンゲロプロス。
まさに唯一無二の監督だったと思う。
マストロヤンニが、アルバニア難民を支援する、
失踪した元政治家を演じた『こうのとり、たちずさんで』が
いちばん好きな一本。静かで、悲しくて、そして切ない。
それにしても突然の死。ありえないでしょう。
とても残念です。合掌。