佐野元春&ザ・コヨーテバンド
「HAYABUSA JET Ⅰ」を聞く。
かつての代表曲をいまの元春が等身大で
セルフカバーしたアルバムというか。
いかにもコヨーテバンドなアレンジと
曲に対するアプローチが新しい。でも楽曲自体が
エバーグリーンなので結局のところ、
ああ、いつもの元春じゃないか、と。

これまで元春は何度もセルフカバーをしてきたし、
「月と専制君主」や「自由の岸辺」といった
セルフカバーのアルバムも出してきた。
本作ふくめ、「ヤングブラッズ」や「ジュジュ」
「インディビジュアリスト」「君をさがしている」
などは何度もアレンジを変え、
歌詞を少しずつ書き直し、異なるバンドメンバーで演奏され歌われてきた。
でも、ディランほど原曲をぶち壊すこともないし、
おなじみのメロディとリリックは口ずさむことができるし、
何よりも心地良い。もしこのアルバムが世に出ることなく、
ライブでしれっと演奏されたとしても、ふつうに盛り上がり、
「だいじょうぶ、と彼女は言った」なんかを聞いて
涙ぐんでしまったりするのだろう。
若い頃のように、シャウトはできないだろうし、
ボーカルの力も弱まってきているのは、
元春をずっと聞いてきたファンなら
少しの心配とともに受け入れてきているわけで、
年齢相応の洗練した大人のロックを聞かせてくれる。
元春自身はいまの音で再演して、
若い人たちにも聞いてほしいみたいだけど、
そのあたりはどうなのかわからない。
ベストトラックは上の
03 だいじょうぶ、と彼女は言った
元春の曲のなかでもかなり好きなんだけど、
さりげなくてせつない応援ソングな感じが増している。
あと
07 欲望
この世に生きる自分のエゴを
歌い上げた原曲の重さから解き放たれて、
静かなポエトリーリーディングのような曲になっている。
ということで、
ライブ行きたいんですけど
チケットの抽選は全滅。
そんなに行きたきゃファンクラブ入れ
ってことなんだろうけど、追加公演に期待します。