頭木弘樹「落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ」
(ちくま文庫)を読む。
まさにタイトル通りの本というか。
自分はただのライトな落語ファンだが、
まったく落語に興味のない人に、
その面白さを伝えるのは難しい。
この頭木さんの本は、落語の入門書というよりは、
もっと深く、語り文化としての
落語の成り立ちや、基本的な構造に言及している。
それでいてものすごくわかりやすいし、目からウロコの連続。
この本があれば、素人でも落語の面白さが伝わるし伝えやすそう。
落語は口承文学。
つまり、口で伝えて耳で聞くもので、
いま世界中で残っているのは日本の落語ぐらいだという。
耳で聞くだけ、つまり目で見ることができないから、
たとえば「子ほめ」で、生まれたばかりの赤ん坊をほめて
一杯呑ませてもらおうと思った男が、
「大きい子だ」とほめるのだけど
「赤ん坊のくせに顔じゅう皺だらけで入れ歯がたがたやがな」
「そら、お爺やんが昼寝してんねやがな」
というくだりで笑わせるのだけど、これをたとえば映像で
やるとしたら無理がある。見たら赤ん坊じゃなくて爺さんだと
すぐわかるはずで、目では見えないからこそ
口承文学としての落語の面白さがある、と。
などなど、目からウロコの分析がたくさん。
しかも、頭木さんは文学紹介者として、
志ん生や米朝などの本だけでなく、
カフカや夏目漱石などの作品を引きながら
落語の魅力を語っていく。ファンなら常に携帯すべき
落語のガイドブックなのかもしれない。
寄席ではなくて、公会堂とか小ホールでのホール落語です。地方でコンサートや演劇を開催するのは大変ですが、落語は座布団一枚用意すれば来てくれるんですね(笑)
先日は春風亭一之輔。3年前は公会堂の半分しか入って無かったのが(コロナ禍でもあり)「笑点」出演後は満席でした。
30人くらいで満席の小さな会場には、毎月立川こしらが来てくれてます。
噺家さんの語りだけで、
いろんな世界に連れてってくれます。
一之輔はいちどチケットを買おうと思ったら、
すでに売り切れでした…。