上西充子「呪いの言葉の解きかた」(晶文社)を読む。
「嫌なら辞めちゃえば?」「母親なんだからしっかり!」
「選ばなければ仕事はある」
「デモなんか参加したら就職できなくなるよ」
「●●を政治利用するな」「誤解を与えたとすれば」
こういった言葉は、すべて「呪いの言葉」だという。
たとえば「嫌なら辞めちゃえば」という言葉は、
ブラック企業に勤めている人に対してよく使われるのだけど、
そもそも劣悪な労働条件で働かせる方に問題があるのに、
「どうせ辞められないんだろう、だったら我慢して働け」
という意味合いで使われるわけで。
少なくともこうした言葉を吐く人は、
ブラック企業で働いて苦しんでいる人に対して、
思いやりの感情は全くない。
働かせる側に責任を負わせないための言葉だ、と。
このような呪いの言葉はそれこそたくさんあり、
苦しんでいる人の心に入り込み、内面化して
すべては自己責任だと思い込ませる。
シングルマザーが低賃金で貧困にあえいでいても、
「母親なんだからしっかりしなさい」という呪いの言葉で追い込み、
LGBTの人たちへの差別的な発言をした政治家は、
「誤解を招いたとしたらお詫びします」という呪いの言葉で、
誤解をした側に責任があるかのように言い放ち、
自らの責任をうやむやにする。
貧困なのも、いじめられているのも、
すべては自己責任だと思っている人に是非読んでもらいたい。
上西充子さんは法政大の教授で専門は労働問題。
あの「ご飯論法」を提唱し、
国会パブリックビューイングを主催している人。
先生の自身の研究成果をもとに
多くの心ある人の助けを得ながら、
お上にたてつく過程も語られる。
さらに「呪いの言葉」の真逆である
「灯火(ともしび)の言葉」で、
呪縛から逃れ自由になるための提案もある。
ちなみに自分もたまに
呪いの言葉をかけられることがある。
「真摯な対応をお願いします」
「プロなんだから何でもできるでしょう」
「あのときこうしてくれって言いましたよね」
こういう言葉を使う人とは、
あんまりお付き合いしたくなかったりするというか。