Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

もったいない男たち

2024年09月30日 | 読んでいろいろ思うところが
内澤旬子「着せる女」(本の雑誌社)を読む。
お決まりのスーツしか着ないおっさんたちを
銀座や六本木にある専門店に連れて行き、
その人の体型やキャラクターに合ったスーツを
あつらえようとする本。内澤さんの本は
おおむね読んでいるので、本書を買ったはいいけれど、
ずっと積ん読のままで、スーツとは
てんで縁のない自分が読んでもいいものか。
と思いつつ読み進めていったら、止まらなくなったという。


いや、そりゃ。知ってますよ。
ダンヒルとかバーバリーとか五大陸とか。
名前だけですけどね。一生縁がないと思い込んでますから。
でも本書ではスーツブランドのおすすめとして
「ニール・バレット、遊び出すならラフ・シモンズ、
シャツは絶対トム・フォード」と話す
いとうせいこうさんの言葉など呪文にしか聞こえません。

ともあれ、著者の内澤さんは、
その人の体型に合ったスーツを着ている男性が
日本には恐ろしく少ないと嘆く。
みんな吊るしのスーツで適当に着つぶすだけで、
なんと勿体ないことをしているのだろう、というのが
本書を書く動機だったと語られる。
つまり、若者でもおっさんでも
太っていても痩せていても、背が高くても低くても
その人にちゃんと合ったものを着るだけで
真っ当に見えるということらしい。
そうなると吊るしのスーツでなく
オーダーメードになるのかと戦々恐々しつつも、
吊るしでも何とかなる場合があるという例も示される。

内澤さんの知り合いの作家や編集者を
連れて行くお店のスーツソムリエの蘊蓄がまた面白い。
自分もスーツ、というかネクタイを締めることも滅多にない。
冠婚葬祭だけというか。最近は「葬」ばっかりですけどね。
って関係ないか。

正直、このままずっとファストファッションを着て
死んでいくと思っていたけれど、少しだけ思い直そうかな。
そういう意味ではとても有意義な読書体験。

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なんやその辛気くさい顔は

2024年09月29日 | 日々、徒然に
ふうん。
そうですか。
ジャイアンツ優勝ですか。

なんでも4年ぶりらしいですな。
阿部監督をはじめ、
ドラゴンズに滅法強かった菅野とか
ノーノーの戸郷とか、岡本はもちろんオコエもそこそこで
選手がみんな頑張りましたよね。
ひと昔前の頃のように、他球団から
エースと4番バッターばかり引き抜いていた
金満な感じとは違いますよね。
ていうか、こちとら中田翔を獲ってたわけですから
もう何も言えません。素直におめでとうと言いたい感じです。

ふうん。
そうですか。
大谷が50−50どころか、
イチローの盗塁記録を抜いた上に、
三冠王まで取ろうっていう寸法ですか。

WBCの練習試合のとき、
バンテリンドームでバッティングの
練習をしていた大谷選手をドラゴンズの選手たちが
憧憬の目で見ていたのを思い出します。
あれは「いつかオレも大谷のようになってやる」じゃなくて、
ただただ「すごい」「うわあ」というファン目線でしたな。

とかなんとか、いまひとつ煮え切らないことを
書きましたが、言いたいことはひとつです。

今に見てみい!
ドラゴンズは日本一になったる、ニッポンイチやで。

と、パターナリズムにあふれ、
歌詞のすべてに突っ込みどころ満載の
「浪花恋しぐれ」が脳内で響き渡るのでした。
一度でいいから「あんた遊びなはれ、酒も飲みなはれ」
と言われてみたいけど一発アウトです。


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ロックがぼくを待っててくれる

2024年09月28日 | 映画など
奥山大史監督「ぼくのお日さま」を見る。
今年の2月にハンバートハンバートのライブに行ったとき、
この映画の音楽と主題歌を担当しているという
アナウンスがあって、へえそうなんだ、
公開されたらまあ見ようかなと。
そんな割と軽い気持ちでいて、実際見たら、
いやはや、これは傑作だと感じ入ってしまったという。


場所は特定されないが、
どこかの北国が舞台で冬は雪が降り積もる街。
冬のあいだホッケーのチームで練習していた
小学生のタクヤは、リンクで華麗な舞をしていた
中学生のさくらの姿に憧れ、池松くん演じる
荒川コーチの指導のもと、ペアでアイスダンスの練習を始める。

自然光だけで映し出されたスケートリンクに、
ガリガリッ、ザザッというスケート靴の音が鳴り響く。
だんだん上達していくタクヤをさくらが受ける形で、
ふたりして見事な滑りを見せるショットの美しさ。
それを見守るコーチのあたたかな目。三人揃って
カップ麺をすする場面が挿入される小気味良さ。

ゾンビーズの「Going Out of My Head」が流れるなか、
氷の張った池で戯れる三人の様子などは、
なんだかとても懐かしい光景というか。
ずっといつまでも見ていたいと思わせるほどだ。

しかし、あたたかなトーンはいつまでも続かず、
ちょっとした誤解というか思い込みが
三人のあいだに亀裂が入り、切なさが募る結末となるわけで。
それまで雪と氷ばかりのなか、あたたかな感じがあったのだけど、
急に冷たさが募り、自然光でキレイだなと思っていた画面が
暗く陰鬱な感じをまとっていく。
それはそうとして、あのときのタクヤとさくらは
とっても輝いていたよね。それはホントだよね。
それでいいんじゃないの。と諦観とともに納得する。

タクヤには吃音があり、
自分の言いたいことがなかなか口に出せない。
最後の最後にそれは吃音なの、それとも
ほんとに口に出せない何かがあるの?
と問いかけたくなるエンディング。
なんともお見事であり、作り手の「どう?いい終わり方だよね」という
意識を強く感じたりもするけれど、傑作であることには変わりはない。
で、ハンバートハンバートの主題歌も滲みたわけで、
エンドロールのデザインも素晴らしい。

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その声はどこまで届く

2024年09月27日 | 日々、徒然に
NHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」が終了。
実に濃厚かつ画期的な朝ドラだったと思う。
ドラマでここまでやれるんだ、と勇気をもらった半年間。


ヒロインを演じた伊藤沙莉の声に尽きる。
とは言い過ぎかもしれないが、彼女のあまりにも魅力的な
低音の声の響きが、このドラマの
「しっかりした」感じを支えていたと思う。

ドラマの要である脚本も用意周到で、
マイノリティーと呼ばれる人たちが声を上げて、
本来持っているはずの権利を
手に入れようとする物語を緻密に組み上げていった。
決して成功と栄冠の物語ではなく、
挫折と苦難の物語でもある視点にもブレはない。

ガチな法廷ドラマでもあったし、
戦前から戦後、そして現代にいたるまでの
日本社会のあり方を問い続ける姿勢。
関東大震災の朝鮮人虐殺や、原爆裁判など
タブーなネタも躊躇なく挿入していく。
それでいてユーモアもあり、コミカルな描写も多く、
前作「ブギウギ」の菊地凛子を同役で
登場させるというお遊びもあって、
エンタテインメントとしても充分すぎるほどだった。

出演者もみんな素晴らしかった。
平岩紙や土居志央梨ら、共に法律を学ぶ学友たちとの絆が
このドラマの軸になっていて、そのまわりを
これまた適材適所な俳優たちが取り囲んでいた。
松山ケンイチと沢村一樹と滝藤賢一を
同じシチュエーションで登場させる贅沢さ。
田中要次や平田満、余貴美子といったベテランも
実にいい味が出ていたし、個人的には
田中克実と田口浩正の凸凹弁護士兄弟が楽しかった。
あと塚地武雅。この人はもう俳優といっても
いいんじゃないかと思ったり。
でも、最も印象に残ったのはやはり小林薫。
リベラルで限りなく優しいヒロインの恩師なのに、
無意識の偏見を醸し出す芝居に戦慄すらした。

ほぼすべての登場人物に血が通っていて、
しかもヒロインを始め、誰一人として完全無欠でなく、
きわめて人間くさいのに、嫌味にならず、
みんないとおしい存在だと思わせてくれた。

こんな骨太で楽しい朝ドラが終わる日。
自民党の新総裁に、選択的夫婦別姓に賛成している
石破さんが選ばれたり、
前の日には、袴田さんが再審で無罪判決が出たりと、
まさに動いているこの現実と本作をリンクさせるのも、いい。

さて。来週からは「おむすび」。
橋本環奈さんがどんなヒロイン像を見せてくれるのか。
仲里依紗や北村夕起哉、麻生久美子、
ピーター(池畑慎之介)、一ノ瀬ワタルといった
キャスティングはかなり個性的。
また半年間楽しませてもらいます。
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君の大好きなものなら、僕もたぶん好き

2024年09月26日 | やさぐれ男のつぶやき
午前中。
とある人のお見舞いで病院に行く。
とりあえず回復に向かっているようで
良かった良かったと思いつつ、おいとまする。
駅まで街道沿いに歩いていたら、
あったあった、大好物が。


仕切りのないベンチというものが、
これほどまでに人の心を癒やしてくれるとは。
しかもこの年季の入ったやさぐれ感。素晴らしい。

お見舞いでホッとして、
このベンチを見て座ってホッとする。
まだ暑いけど、ちょいとコンビニまで走って、
麦のアレとか買って、ここに陣取って飲(や)ったら、
桃源郷まっしぐらだなあ、うひょひょげしし。
と、邪悪な薄ら笑いをするも、まだ午前中なので、
お天道様のバチが当たるのは必然かもしれぬ。

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あらま無常

2024年09月25日 | 日々、徒然に
今日の朝日新聞夕刊に
「選挙」や「精神」などを撮った
想田和弘監督のインタビューが載っていた。
いわく、自分を形作る大事なもののひとつに
「瞑想」があるという。以下、引用。

静かに自分の呼吸や身体の感覚に集中する。でも雑念が湧くんです。夕飯何にしようとか明日のインタビューで何をしゃべろうとか。ダメだ!と雑念を追い払うのではなく「これが今の私の現実」と心の中でニコッと笑って瞑想を続けます。怒りが湧けば、怒りが湧いているなと観察する。世の中の全ては無常なのでその怒りも消えていきます。そういう回路を鍛えていくのが瞑想です。

そうなのか。
マインドフルネスや認知行動療法と
近い考え方のような気がする。瞑想か。よし、
今の自分はやさぐれているなと観察してみる。
が、いつまで経ってもやさぐれは消えないし、
疲労度も増すばかり。んもお。


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やさぐれ男が排除された日

2024年09月24日 | 日々、徒然に
仕事場の最寄り駅の周辺が
いま再開発中で、やさぐれた街並みが
どんどん壊されてキレイになっているという。
日陰者としては、スクラップアンドビルドで、
あまりに街が新しく清潔になってしまうのは
いかがものかと思っているが、経済原理のなせる技なのだろう。


と溜息をついていたら、
キレイになった駅前の広場に
新しく設置された植樹のまわりが
座れるようになっていて、しかも排除アートな仕切りもない。

これでアホみたいにやさぐれても、
人生に自暴自棄になっても、あんなコトやこんなコトをして
自責の念にかられても、このベンチで休めば
なんとかなるような気がしてきた。
って、まさかやさぐれ男の利用は禁止なんて言わないですよね。

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その死にざまを見よ

2024年09月23日 | 映画など
藤田敏八監督「修羅雪姫 怨み恋歌」を見る。
おお。これは反権力映画の傑作ではないか。
梶芽衣子はもとより、原田芳雄に伊丹十三、
吉行和子、岸田森、安部徹、さらには南原宏治に山本麟一と
70年代日本映画が誇る鉄壁のキャスト陣を堪能する。


修羅雪姫とは
無実の罪で惨殺された両親の怨念を背負った
鹿島雪(梶芽衣子)の通り名である。
蛇の目傘に仕込んだ刀で俗にまみれた連中を叩っ切るのだ。

第1作で両親の仇を取った雪は、
警察に捕まり死刑判決を受けるが、
特高の親玉(岸田森)に助けられる。
その代わりにアナーキスト(伊丹十三)を殺し、
彼が持つ政府の機密書類を奪うことを強いられる。

伊丹十三演じるアナーキストは、
幸徳秋水あたりをモデルにしているんだろうか。
ともかく時の明治政府の腐敗ぶりを
暴露しようとしているインテリで、いかにも伊丹らしい役柄。

その弟で貧民街の医者をしているのが原田芳雄。
この人が輝いていたのは
やっぱり70年代だなあと、最近とみに思う。
その野性味と色気、佇まいのカッコ良さと
なんといっても声の魅力である。

物語に戻ると、
政府のやり口はそれはそれは極悪非道で、
貧民どもなどいくら死んでも構わん。
それより儂らの金と名誉が大事に決まっとろうが。
そんな悪のオーラを撒き散らしている奴らを
皆殺しにする梶芽衣子と瀕死状態の原田芳雄。

梶芽衣子はたとえば
「緋牡丹博徒」のお竜(藤順子)のような
様式美あふれる殺陣とは異なり、
どこか危うい不安定さがあるというか、
虚無感を漂わせながら悪党どもを殺しまくるわけで。
原田芳雄はといえば、この人には型などなく、
情念だけを背負いながら、ぐにゃぐにゃと
よろめきながら敵に立ち向かっていく。

靖国神社のような英霊たちが眠る境内で、
血みどろになりながら権力の犬どもをぶち殺していく。
これが日本という国なんだという、
あからさまなカメラワークが最後の最後に示されて、
なんという反権力な。そしてものすごい傑作だと
確信せざるを得ないラストだったのです。

ともあれ、どなたかシネフィルの人、
原田芳雄という俳優の身体性について論じてくれませんかね。
とか思いつつ、そうだ山根貞男の「活劇の行方」(草思社)が
あったとひもといてみたら、澤田幸弘監督の
「反逆のメロディー」における原田芳雄を
「跳梁」というキーワードで論じていた。
その中味については長くなるのでまたの機会に。

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思い出のフォトグラフ

2024年09月22日 | 日々、徒然に
ポール・マッカートニー写真展
@六本木ヒルズTokyo City Viewに行く。
滅多に行くことのない六本木。
しかもヒルズの52階で入場料が2,600円。
敷居も高いしビルも高いし値段も高い。
でも、行くんだよ。だってポールだもの。ビートルズだもの。
そう呟きなから、千円札を3枚ぶるぶると握りしめて
敵地(違うと思う)に向かうのでした。


63年から64年にかけてというと、
ビートルズがアメリカに上陸して
世界を席巻した頃であり、
ペンタックスの軽量なカメラを手にしたポールは、
身近にいるメンバーやスタッフ、
自分たちに取り巻く記者やファンの姿を写真に収めていた。

ジョンやジョージ、リンゴはもとより、
ブライアン・エブスタインやジョージ・マーティン
当時のポールの恋人ジェーン・アッシャーや
ジョンの妻だったシンシア、さらには共演した
ロニー・スペクターなどの
ミュージシャンたちのポートレートがとてもいい。
身近で親密な関係性が見て取れるというか。

パパラッチたちが嬉しそうに自分たちを取る様子や、
やたらに「見知らぬ女性」が写っているのも興味深い。
当時のビートルズが巻き起こした現象が
真空パックされているかのような写真の数々。

ということで、かなりの満足度というか。
大枚はたいて見に来て良かったとは思う。
グッズ売り場も見て回るが、写真集14,500円とか、
トートバック4,000円とか
マグカップ3,500円とか見て円安だからなあ、と
自分を無理に納得させる。



250メートルの高さから、
ぼんやりと東京タワーの方を眺める。
ダイヤモンドを持ったルーシーが
空に浮かんでるかと思ったら、あるのは曇天だけ。
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Just The Way You Are

2024年09月21日 | 日々、徒然に
永遠に愛を誓うといえば、
スガキヤのラーメンにとどめを刺す。
なんてったって世界一のラーメンなんだもの。


そんなスガキヤがこんなリニューアルをすると、
スガキヤ信者の友人から情報をもらう。

ふーん。麺とスープをねえ。
伸びにくい麺って、出されたらすぐ喰っちまうんで
別にぶよぶよの麺でもいいですけど。
スープの旨味をアップって、
もうじゅうぶん旨いですから。
名古屋人のDNAに「うまい」と刷り込まれてますから。

味や食感が変わっても
世界一であることは変わりないんだけど、
いつまでも同じままでいてくれたらいいな。
素顔のままのあなたを永遠に愛しているのだから。
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