スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

女流王位戦&名前の定義

2020-06-19 19:18:02 | 将棋
 17日に指された第31期女流王位戦五番勝負第三局。
 里見香奈女流王位の先手で5筋位取り中飛車。加藤桃子女流三段は居飛車穴熊。先手が端を攻める展開になりました。
                                        
 後手が1一の玉を上がって角の直射を避けた局面。先手はここから☗4四銀☖同金☗同角と金銀を交換しました。後手は☖5四飛。この局面はすぐに☖5七桂成と攻め合うこともできたのですが,たとえば☗6二角成と逃げてくれればそこで☖5七桂成の方が,後手玉は安全という読みだったと思われます。
 先手はこの角取りを放置して☗1五歩と打ちました。これは驚きましたが,ここではいい判断だったようです。後手は当然☖4四飛で,一時的に後手の角得。先手が☗1四歩と取り込んだときに☖1六歩と受けました。ここから☗1三歩成☖同桂☗Ⅰ四香までは一本道。後手はここでは攻め合う手段がないので☖2四歩と催促しました。☗同桂成☖同銀は必然で先手は☗1五歩と打って香車を支えました。
 次に☗1六香と取られてはいけないので☖1七銀と打ちましたが,これは非常手段に思えます。☗同香☖同歩成☗同王。ここで☖2二銀上と受けたのですが,一旦は☖1六歩と打っておくのが優りました。というのは☗1三香成☖同銀のときに☗2七銀と上がられ,先手の玉が安全になってしまったからです。
                                        
 一時的に駒を大きく損しても,端を部分的に制圧してしまえば対等以上に指せるという先手の大局観が光った一局だったと思います。
 3連勝で里見王位が防衛第23期,26期,27期,28期,30期に続く連覇で通算6期目の女流王位です。

 スピノザによる実体substantiaの定義Definitioは第一部定義三にある通りです。したがって,実体をただひとつの属性attributumからなるものと解するintelligereという定義が,実体の定義として真verumであるとスピノザがいうかといえば,スピノザはそれを真であるとはいいません。むしろこれは実体について虚偽falsitasの命題であるというでしょう。スピノザがこのことを踏まえた上で,いい換えれば前提として,シモン・ド・フリースSimon Josten de Vriesや講読会のメンバーに宛てて,ここで実体の定義を実例として用いたのは間違いありません。しかしそこでスピノザが何をいいたかったのかといえば,この定義は真ではなく偽であるということではなく,このような類の定義は,真理veritasと関係していなくても構わないということなのです。このことは,スピノザが真理であるとは認め得ないようなこの定義について,それをよい定義であるともいっていることから明らかだといわなければなりません。ここのところは混同してはならないのです。
 スピノザは,もし実体がこのように定義されたのであれば,複数の属性によって本性essentiaを構成される実有ensについては,それを実体とはいってはならないといっています。いい換えれば実体とは異なった名称が与えられなければならないのです。しかしもしもこの条件が守られさえすれば,この定義はよい定義ですから,この条件を守った公理系のうちでは,これは実体についての真理であるということになります。要するにスピノザがいっているのは,単一の属性からなるものを実体と解するという実体の定義は,ある場合には真理にもなるし,またある場合には真理ではなくなるということなのです。この種の定義が真理と関係しなくてもよいとスピノザがいっているとき,それが具体的に意味しているのはこういうことだと解釈するべきでしょう。
 したがってこれは,あるものの名前を定義しているということになります。そしてあるものの名前を定義するときには,それが十分に理解できるものであるならよい定義であって,定義されるものと定義された内容とが一対一で対応し合う限り,それは真理なのです。このことはスピノザが定義のうちに唯名論的なものを認めているということと関係します。

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