スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ディープスカイ&少女

2015-11-28 19:16:30 | 名馬
 25日の兵庫ジュニアグランプリサウンドスカイが勝ちました。父であるディープスカイにとって産駒の初重賞制覇でした。
 父であるアグネスタキオンにとって,牡馬の最も優秀な産駒。デビューは2歳10月。なかなか勝ち切れず,翌年の1月に6戦目で初勝利。2勝目は9戦目の毎日杯で,これが重賞初勝利。
 使い込んでいたこともあったでしょうが皐月賞はパスしてNHKマイルカップへ。これも勝って大レース制覇を達成すると返す刀でダービーも制覇。11戦目でのダービー制覇というのは,最近では珍しい記録といえるでしょう。
 秋は神戸新聞杯で復帰して連勝を4に伸ばしました。距離適性を考慮して菊花賞ではなく天皇賞に。上位が大接戦となったレースで3着。敗れはしましたが古馬相手ということを考えれば上々の成績といえるでしょう。ジャパンカップスクリーンヒーローの2着になり,この年のキャンペーンを終えました。JRA賞の最優秀3歳牡馬に。
 期待された翌年は大阪杯で戦列に復帰。クビ差の2着に入って目標とした安田記念に。勝ったと思われたレースでしたが2着。次の宝塚記念で3着に入った後,屈腱炎を発症。アグネスタキオンが直前に死亡していたこともあり,後継種牡馬となるためそのまま引退しました。
 一流馬なのですが,世代限定戦しか勝っていないため,種牡馬としての評価には微妙なところがありました。当初は多くの種付けを行っていましたが,近年は頭数も減少しています。サウンドスカイがもっと活躍するか否かは,この馬の種牡馬生活に影響を与えるかもしれません。

 現在はニューヨークのメトロポリタン美術館に展示されている,フェルメールJohannes Vermeer作の「少女Meisjeskopje」という絵画があります。1667年,すなわち「天文学者De astronoom」が描かれる前年に製作されたものです。サイズは「天文学者」と同じで,マルタンJean-Clet Martinは作品の母型も枠組みも同じであるといっています。
 マルタンは,フェルメールがカメラ・オブスキュラcamera obscuraを使用していたことは,この「少女」という作品から明白であると主張しています。この絵のモデルとなっている少女のおぞましいほどのデフォルメがその証明なのだそうです。マルタンはこの絵に描かれている人物にはプロポーション上の欠陥があるとしています。それはモデルの腕が醜いほど異常に小さく描かれている点であり,もうひとつは顔が丸い小石のようになっていることだそうです。この丸い小石のような顔というのは,この作品に対するマルローAndré Malrauxの評価のようです。
                               
 僕は絵画に対する評価はできません。ただ,『フェルメールとスピノザBréviaire de l'éternité -Entre Vermeer et Spinoza』に掲載されているこの絵を見る限り,これを人物を模写した絵画とするなら,どことなく不自然な点が含まれているようには思えます。この絵画が含んでいる特徴を誇大化していくと,魚眼レンズで人物を覗いてみたときの造形に収斂していくのではないかと思えるのです。
 マルタンがこの作品をフェルメールがカメラ・オブスキュラを使用していたことの根拠にするのが,その不自然さにあります。マルタンははっきりとは書いていませんが,もし肉眼で見て描いたのであれば,完成品がこのような姿になることはあり得ず,作品が不自然な姿になったのは,フェルメールがレンズを通してモデルを見ていたからだというのが,主張の骨子であると僕は解します。そして僕が魚眼レンズを通して見た人物像に喩えたように,この不自然さがレンズに由来するという主張自体は,僕には納得がいくものです。
 もしマルタンの仮説が正しいとするのなら,少なくともこの絵を製作していた時点,それが1667年なのかもう少し前なのかは不明ですが,その時点ではフェルメールは絵画を制作するために,十分に満足できるだけのレンズを有していなかったといえるでしょう。
コメント
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